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第二部 バンドー皇国編 3章
209.テルの生い立ちは破壊力がありすぎる。
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「「「おおお~!!!」
実況を聞いていた俺達は歓声を上げた。
「ジュリエッタがデレました!」
「テル君、やるね!」
「それにしても、サーブ王は随分テルに高評価だな。しかも伯爵待遇でヘッドハンティングとか抜け目ねえな、あのおっさん。」
「カズト様、さすがに一国の王をおっさん呼ばわりは…」
「一国の皇女のジュリアをジュリアって呼んでる時点で今更だよ?ね、ジュリア?」
「うふふ、そうでした。」
◇◇◇
「ジュリエッタ様、レックス様、場所を改めませんか?ディアス殿下もよろしいですね?」
「…ああ。」
テルの提案に乗りその場にいた主要人物がとある一室に移動する。
皆が席に着き落ち着いたところでジュリエッタが口を開く。
「サーブ陛下の書状。ディアス殿下は従う意思があるのでしょうか?」
「うむ。私はどうなっても構わない。だがせめて兵達は有効に使って頂きたい。」
ジュリエッタは頷き、テルへと視線を向ける。指揮権を委任されたのはあなたですよ、とばかりに。それを受けてテルはバリバリと頭を掻きながら立ち上がり宣言した。
「現時刻をもってエツリア軍2000は俺の指揮下に入るものとする。」
ディアスの護衛が悔し気に顔を歪ませる。しかしテルは構わず続けた。
「更に、義勇軍300を加えた総勢2300の総大将をジュリエッタ皇女殿下に据え、エツリア軍2000は現時刻を持ってディアス王太子殿下に指揮権を移譲する。俺とユキは義勇軍の指揮、並びに全軍の参謀として従軍する。以上だ。」
テルの発言に一同静まり返った。しかし反応はそれぞれ違う。ユキは腕を組みうんうんと頷いている。『流石は私のテルだな』と言わんがばかりに。しかし口はもぐもぐと茶菓子を食べている。こんな時でもお菓子大好きなユキだ。
ジュリエッタは感心していた。『それなら上手く収まりますね!テル様流石です!』と輝く瞳が訴えかけている。テル株ストップ高だ。
鳩が豆鉄砲を食らったような顔でポカンとしているのがディアスだった。自分には何等かの処罰が下されると思っていた。最悪は死罪すら有り得ると。父の書状はそんな事態も容認する内容に取れたからだ。たまらずディアスが口を開く。
「いや、しかしそれでは…」
それに対してテルはすまし顔で答えた。
「制裁なら先程一発入れましたが?足りませんか?」
「い、いや、寛大な処置、感謝する。」
「正直な所、俺が指揮を執ってもエツリアの兵が言う事を聞くとも思えませんので。指揮権は王太子殿下が持っていた方がいいでしょう。それに、俺に突っかかって来たのはサーブ陛下の書状が原因でしょう?その内容は俺でも承服しかねると思いますよ。だから拳一発で済ませました。でも、それなら直接俺に来るべきだ。ジュリエッタ様に無礼を働くのは筋が違う。ん?思い出したら腹が立って来ましたね。もう一発いきますか?」
「いや、勘弁してくれ…」
(悔しいが、父上が従えと言うのも分かる。私とは器が違うようだ。認めねばなるまいな。)
「ではこの話はこれで宜しいですね?ディアス殿下。宜しくお願い致します!」
バアン!とテーブルを叩いて立ち上がったジュリエッタが強引に話を締めた。そして続ける。
「それで!テル様!貴方は一体何者なのです!?」
これまで耳に入って来た情報から何となく察しは付く。だが本人の口から確かめたい。そんな所だろうか。しかし、それに待ったを掛ける人物がいた。
「ジュリエッタ皇女。その問いはテルの傷を深く抉るものだ。興味本位で聞きたいと言うなら皇女と言えども私が許さん。」
今まではあまり口出しをせずテルに黙って従っている大人しい少女、そんな印象だったユキが殺気を剥き出しにしてジュリエッタを睨みつける。
「えっ!? あ、あの…」
豹変したユキに狼狽するジュリエッタとユキの放つ濃密な殺気に会議に参加していた者は動く事も出来なかった。
そんなユキの頭にポン、と手が乗せられ優しく撫でられる。
「ユキ、押さえてくれ。俺なら大丈夫だよ。ありがとな。」
瞬間、ユキの殺気が霧散し一同は深く深く呼吸した。
「どうやらサーブ陛下にも素性は割れている様なので隠す意味も無いですかね。」
こうしてテルは己の素性を話し始めた。辺境伯の跡取りとして幸せだった10歳までの日々。魔法適性が無い事が明らかになった10歳の誕生日。その日を境に家族は家族ではなくなった事。わずか10歳にして生きる為に死地へと飛び込み魔物と実戦を重ねた事。何度も死にかけた事。ひたすら孤独だった事。15の誕生日、家を出る際に父親が差し向けた刺客が待ち構えていた事。刺客諸共家族を殺して脱出した事。ウフロンに流れ着き、そこで冒険者として身を立てた事。宿の親子が家族同様接してくれた事。そしてユキと出会った事。ウフロン防衛戦に関わる活躍。
「そして俺とユキ、宿の親子は本物以上の家族になりました。」
この場にいる全員が号泣していた。レックスや奥方、侍女のみならずディアスや護衛の騎士までも。
「済まない、テル殿。我が国の魔法至上主義がここまで人を不幸に追い落とす政策だったとは…父に成り代わり謝罪させて頂く。」
「うっ、うっ、テル様…ごめんなさい…うう…ごめ、…さぃ…」
「謝罪は受け入れます。では、俺はこれで。」
ディアスとジュリエッタの謝罪に居たたまれなくなったテルはユキと2人、退室していった。
(湿っぽくなるから話したくないんだよな。これで前世の話までしたらどうなる事やら。)
傍らで心配そうに見つめるユキを見ながらテルはきっぱり言い切った。
「今の俺はユキ、ストラト、それにおやっさんがいる。だから幸せだよ。」
ユキはそれを聞き、無言で寄り添った。
実況を聞いていた俺達は歓声を上げた。
「ジュリエッタがデレました!」
「テル君、やるね!」
「それにしても、サーブ王は随分テルに高評価だな。しかも伯爵待遇でヘッドハンティングとか抜け目ねえな、あのおっさん。」
「カズト様、さすがに一国の王をおっさん呼ばわりは…」
「一国の皇女のジュリアをジュリアって呼んでる時点で今更だよ?ね、ジュリア?」
「うふふ、そうでした。」
◇◇◇
「ジュリエッタ様、レックス様、場所を改めませんか?ディアス殿下もよろしいですね?」
「…ああ。」
テルの提案に乗りその場にいた主要人物がとある一室に移動する。
皆が席に着き落ち着いたところでジュリエッタが口を開く。
「サーブ陛下の書状。ディアス殿下は従う意思があるのでしょうか?」
「うむ。私はどうなっても構わない。だがせめて兵達は有効に使って頂きたい。」
ジュリエッタは頷き、テルへと視線を向ける。指揮権を委任されたのはあなたですよ、とばかりに。それを受けてテルはバリバリと頭を掻きながら立ち上がり宣言した。
「現時刻をもってエツリア軍2000は俺の指揮下に入るものとする。」
ディアスの護衛が悔し気に顔を歪ませる。しかしテルは構わず続けた。
「更に、義勇軍300を加えた総勢2300の総大将をジュリエッタ皇女殿下に据え、エツリア軍2000は現時刻を持ってディアス王太子殿下に指揮権を移譲する。俺とユキは義勇軍の指揮、並びに全軍の参謀として従軍する。以上だ。」
テルの発言に一同静まり返った。しかし反応はそれぞれ違う。ユキは腕を組みうんうんと頷いている。『流石は私のテルだな』と言わんがばかりに。しかし口はもぐもぐと茶菓子を食べている。こんな時でもお菓子大好きなユキだ。
ジュリエッタは感心していた。『それなら上手く収まりますね!テル様流石です!』と輝く瞳が訴えかけている。テル株ストップ高だ。
鳩が豆鉄砲を食らったような顔でポカンとしているのがディアスだった。自分には何等かの処罰が下されると思っていた。最悪は死罪すら有り得ると。父の書状はそんな事態も容認する内容に取れたからだ。たまらずディアスが口を開く。
「いや、しかしそれでは…」
それに対してテルはすまし顔で答えた。
「制裁なら先程一発入れましたが?足りませんか?」
「い、いや、寛大な処置、感謝する。」
「正直な所、俺が指揮を執ってもエツリアの兵が言う事を聞くとも思えませんので。指揮権は王太子殿下が持っていた方がいいでしょう。それに、俺に突っかかって来たのはサーブ陛下の書状が原因でしょう?その内容は俺でも承服しかねると思いますよ。だから拳一発で済ませました。でも、それなら直接俺に来るべきだ。ジュリエッタ様に無礼を働くのは筋が違う。ん?思い出したら腹が立って来ましたね。もう一発いきますか?」
「いや、勘弁してくれ…」
(悔しいが、父上が従えと言うのも分かる。私とは器が違うようだ。認めねばなるまいな。)
「ではこの話はこれで宜しいですね?ディアス殿下。宜しくお願い致します!」
バアン!とテーブルを叩いて立ち上がったジュリエッタが強引に話を締めた。そして続ける。
「それで!テル様!貴方は一体何者なのです!?」
これまで耳に入って来た情報から何となく察しは付く。だが本人の口から確かめたい。そんな所だろうか。しかし、それに待ったを掛ける人物がいた。
「ジュリエッタ皇女。その問いはテルの傷を深く抉るものだ。興味本位で聞きたいと言うなら皇女と言えども私が許さん。」
今まではあまり口出しをせずテルに黙って従っている大人しい少女、そんな印象だったユキが殺気を剥き出しにしてジュリエッタを睨みつける。
「えっ!? あ、あの…」
豹変したユキに狼狽するジュリエッタとユキの放つ濃密な殺気に会議に参加していた者は動く事も出来なかった。
そんなユキの頭にポン、と手が乗せられ優しく撫でられる。
「ユキ、押さえてくれ。俺なら大丈夫だよ。ありがとな。」
瞬間、ユキの殺気が霧散し一同は深く深く呼吸した。
「どうやらサーブ陛下にも素性は割れている様なので隠す意味も無いですかね。」
こうしてテルは己の素性を話し始めた。辺境伯の跡取りとして幸せだった10歳までの日々。魔法適性が無い事が明らかになった10歳の誕生日。その日を境に家族は家族ではなくなった事。わずか10歳にして生きる為に死地へと飛び込み魔物と実戦を重ねた事。何度も死にかけた事。ひたすら孤独だった事。15の誕生日、家を出る際に父親が差し向けた刺客が待ち構えていた事。刺客諸共家族を殺して脱出した事。ウフロンに流れ着き、そこで冒険者として身を立てた事。宿の親子が家族同様接してくれた事。そしてユキと出会った事。ウフロン防衛戦に関わる活躍。
「そして俺とユキ、宿の親子は本物以上の家族になりました。」
この場にいる全員が号泣していた。レックスや奥方、侍女のみならずディアスや護衛の騎士までも。
「済まない、テル殿。我が国の魔法至上主義がここまで人を不幸に追い落とす政策だったとは…父に成り代わり謝罪させて頂く。」
「うっ、うっ、テル様…ごめんなさい…うう…ごめ、…さぃ…」
「謝罪は受け入れます。では、俺はこれで。」
ディアスとジュリエッタの謝罪に居たたまれなくなったテルはユキと2人、退室していった。
(湿っぽくなるから話したくないんだよな。これで前世の話までしたらどうなる事やら。)
傍らで心配そうに見つめるユキを見ながらテルはきっぱり言い切った。
「今の俺はユキ、ストラト、それにおやっさんがいる。だから幸せだよ。」
ユキはそれを聞き、無言で寄り添った。
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