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第二部 バンドー皇国編 3章
212.かつての『敵』との邂逅
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「申し上げます!間もなくジュリエッタ第二皇女殿下がエツリアからの援軍2000と義勇軍300を率いて到着なされます!」
午前中の戦闘訓練を間もなく終えようとしていたタイミングで伝令兵が駆け込んで来た。
「分かりました。出迎えにいきましょうか。ディアス王太子殿下もおられるのですよね?粗相のないように。」
「は!」
ジュリアが伝令を受け出迎えに準備をするよう伝令に指示を出し、俺達にも出迎えるよう促して来る。
「カズト達も出迎えて頂けますか?」
俺達と『友達』になったジュリアは俺の仲間やソレイユ限定だが高貴な血筋の者が持つ特有のオーラを消し去り年相応の少女のように振舞っていてとても楽しそうだ。しかしそれはあくまで俺達限定。
「お初にお目に掛かります。バンドー皇国第一皇女のジュリアです。ディアス王太子殿下でいらっしゃいますね?この度の参戦、誠に心強く思います。」
と言いながら深く頭を下げるジュリアは凛とした雰囲気を纏い先程の少女の姿は欠片もない。一国を預かる者のオーラを感じる。
「セリカもそうだけど女ってのはオンオフの切り替えが見事すぎて逆に怖いな…」
「こら、カズにぃ!心の声を口に出すな!」
しまった。ジュリアがジト目でこっち見てる。
そんな一幕もあったがジュリアが援軍と義勇兵に感謝と労いの言葉をかけて兵達を休ませる。そして俺はテル達に声を掛けた。テル達、特にユキには話さなきゃならない事があるからな。
「よお、ご苦労さん。いろいろ大変だったみたいだな?」
「あ、カズトさん。リッケンとバッカーから筒抜けですか。」
自分達の情報が俺に筒抜けだった事を知り苦笑するテル。
「いや、リッケンとバッカーが必要だと思って連絡入れてくれたんだろ。確かに危機一髪ってとこだったからな。でも、テルもユキも見事だったぞ?」
ホント、見事なモンだったよ。ユキのアツい想いとかテルのジュリエッタの落としっぷりとか。
「そんな2人に話があるんだがちょっと付き合って貰えるか?」
警戒しているな。いや、俺をじゃない。無言で頷き俺に従う2人。俺は代官屋敷の一室へと2人を導き入れる。
俺はソファに座り、手で2人へ着席を促すが2人は座らない。そしてユキが口を開いた。
「カズト殿?これはどういう趣向なのだ?敵意はないが2人程隠れているようだが。」
「流石。いや、結構前から気付いていただろ。まあ、悪いようにはしないから座ってくれ。」
そこへドアをノックする音がする。
「どうぞ?」
そこへトレーに紅茶と焼き菓子を乗せたカートを押してくるメイド…じゃなくてライムかよ!?
「はい、テル君にユキちゃん。おいしいよ?カズにぃは私をのけ者にしたから無し!」
テルとユキはメイド服姿のライムにポカンとしていた。いや、テルは若干頬を染めているか?無理もない。このライムの姿に萌えない奴は日本男児として失格だ。あ、ユキがテルをつねった。
「悪い悪い、まあ、とにかくライムも座れ。」
「はーい。」
「それでカズトさん、話とは?」
お互いの雰囲気が微妙になったところでテルが本題を切り出した。
「ああ。いいぞ。出て来い。」
俺が何処へともなく声を掛けると天井から人が2人降って来た。そして俺の横に並んで片膝をついて控えている。
そして苦無を握ってユキが立ち上がっていた。
「貴様ら!なぜここにいる!」
ユキの一言で相手が何者か察したテルも立ち上がりナイフを抜く。
「2人とも抑えてくれ。」
俺はかなりの威圧感を放って2人を止める。隣にいるライムも横で控える2人も脂汗を流して耐えている。
「か、カズトさん、済まない。止めてくれないか。話を聞こう…」
テルがどうにか言葉を絞り出して武器を収めた。テルに頭を撫でられユキも苦無を太腿のホルダーに戻して席に着く。そこで威圧を解くと弛緩した空気に一同深く呼吸する。
「悪いな。やり合うのは話を聞いてからでも遅くないだろ?察しの通りこの2人は加藤段蔵と望月千代女。俺が雇った。」
「「!?」」
『敵』を雇った。2人の認識からすればそうだろう。だがこっちの世界に来て『敵』の定義も変わっている筈だ。
そうして爺さんと千代ちゃん、ユキとテルがお互いの今までを話した。
「なるほど…そうであったか。私の現在の主君はこのテルと言ってもいい。お館様はこちらにはおられぬ。私はもう軒猿ではない。もはや争う理由もないか…」
「そういう事じゃな。儂は元々雇われの忍び。儂はこの殿の強さと器に惚れた。じゃから殿に雇われた。元の世界では互いの主君が敵同士じゃったからあの戦闘は致し方ない事じゃったが今は違うからの。こちらに飛ばされて来た時もお嬢の事は気に掛かっておっての。儂が言うのもなんじゃが、無事で良かったわい。」
「アタシも殿に惚れたのさ。爺さんの言う通り、強さと器にね。だからアタシらは殿に忠誠を誓った。その殿のお仲間ならアタシにも争う理由が無いねえ。元々、お嬢に恨みがあって傷つけた訳じゃない。あ、そうそう、アタシは女としても殿にぞっこんだけど殿はなびいてくれる素振りもないしこっちの世界に飛ばされた直後に目に入ったのはこのしなびた爺ぃだ。その点、そんないい男に拾われていい仲になっているアンタが羨ましいねえ。」
爺さんと千代ちゃんの言葉にはユキを傷つけた事に関して謝罪は無かった。戦場で敵と出会えば倒すのみ。それはユキも、傭兵だったテルも十分に承知しているのか気にしている風でもない。そして千代ちゃんの最後の言葉に頬を赤らめて俯くユキが初々しい。
「加藤殿、望月殿、『生ける伝説』とも言えるお二人と共に戦える事、光栄に存ずる。私は『雪』と申す者。未熟者なれど何卒宜しくお願い申し上げる。」
「そんな堅苦しいのはいらんわい。儂の事は『段ちゃん』と呼んで欲しいのう、ユキちゃんや。」
「アタシの事は『千代ちゃん』と呼んどくれ。お雪ちゃん。」
思ってたのと違う!!そう叫びたいのを我慢してるテルとユキに苦笑する俺とライムだった。
午前中の戦闘訓練を間もなく終えようとしていたタイミングで伝令兵が駆け込んで来た。
「分かりました。出迎えにいきましょうか。ディアス王太子殿下もおられるのですよね?粗相のないように。」
「は!」
ジュリアが伝令を受け出迎えに準備をするよう伝令に指示を出し、俺達にも出迎えるよう促して来る。
「カズト達も出迎えて頂けますか?」
俺達と『友達』になったジュリアは俺の仲間やソレイユ限定だが高貴な血筋の者が持つ特有のオーラを消し去り年相応の少女のように振舞っていてとても楽しそうだ。しかしそれはあくまで俺達限定。
「お初にお目に掛かります。バンドー皇国第一皇女のジュリアです。ディアス王太子殿下でいらっしゃいますね?この度の参戦、誠に心強く思います。」
と言いながら深く頭を下げるジュリアは凛とした雰囲気を纏い先程の少女の姿は欠片もない。一国を預かる者のオーラを感じる。
「セリカもそうだけど女ってのはオンオフの切り替えが見事すぎて逆に怖いな…」
「こら、カズにぃ!心の声を口に出すな!」
しまった。ジュリアがジト目でこっち見てる。
そんな一幕もあったがジュリアが援軍と義勇兵に感謝と労いの言葉をかけて兵達を休ませる。そして俺はテル達に声を掛けた。テル達、特にユキには話さなきゃならない事があるからな。
「よお、ご苦労さん。いろいろ大変だったみたいだな?」
「あ、カズトさん。リッケンとバッカーから筒抜けですか。」
自分達の情報が俺に筒抜けだった事を知り苦笑するテル。
「いや、リッケンとバッカーが必要だと思って連絡入れてくれたんだろ。確かに危機一髪ってとこだったからな。でも、テルもユキも見事だったぞ?」
ホント、見事なモンだったよ。ユキのアツい想いとかテルのジュリエッタの落としっぷりとか。
「そんな2人に話があるんだがちょっと付き合って貰えるか?」
警戒しているな。いや、俺をじゃない。無言で頷き俺に従う2人。俺は代官屋敷の一室へと2人を導き入れる。
俺はソファに座り、手で2人へ着席を促すが2人は座らない。そしてユキが口を開いた。
「カズト殿?これはどういう趣向なのだ?敵意はないが2人程隠れているようだが。」
「流石。いや、結構前から気付いていただろ。まあ、悪いようにはしないから座ってくれ。」
そこへドアをノックする音がする。
「どうぞ?」
そこへトレーに紅茶と焼き菓子を乗せたカートを押してくるメイド…じゃなくてライムかよ!?
「はい、テル君にユキちゃん。おいしいよ?カズにぃは私をのけ者にしたから無し!」
テルとユキはメイド服姿のライムにポカンとしていた。いや、テルは若干頬を染めているか?無理もない。このライムの姿に萌えない奴は日本男児として失格だ。あ、ユキがテルをつねった。
「悪い悪い、まあ、とにかくライムも座れ。」
「はーい。」
「それでカズトさん、話とは?」
お互いの雰囲気が微妙になったところでテルが本題を切り出した。
「ああ。いいぞ。出て来い。」
俺が何処へともなく声を掛けると天井から人が2人降って来た。そして俺の横に並んで片膝をついて控えている。
そして苦無を握ってユキが立ち上がっていた。
「貴様ら!なぜここにいる!」
ユキの一言で相手が何者か察したテルも立ち上がりナイフを抜く。
「2人とも抑えてくれ。」
俺はかなりの威圧感を放って2人を止める。隣にいるライムも横で控える2人も脂汗を流して耐えている。
「か、カズトさん、済まない。止めてくれないか。話を聞こう…」
テルがどうにか言葉を絞り出して武器を収めた。テルに頭を撫でられユキも苦無を太腿のホルダーに戻して席に着く。そこで威圧を解くと弛緩した空気に一同深く呼吸する。
「悪いな。やり合うのは話を聞いてからでも遅くないだろ?察しの通りこの2人は加藤段蔵と望月千代女。俺が雇った。」
「「!?」」
『敵』を雇った。2人の認識からすればそうだろう。だがこっちの世界に来て『敵』の定義も変わっている筈だ。
そうして爺さんと千代ちゃん、ユキとテルがお互いの今までを話した。
「なるほど…そうであったか。私の現在の主君はこのテルと言ってもいい。お館様はこちらにはおられぬ。私はもう軒猿ではない。もはや争う理由もないか…」
「そういう事じゃな。儂は元々雇われの忍び。儂はこの殿の強さと器に惚れた。じゃから殿に雇われた。元の世界では互いの主君が敵同士じゃったからあの戦闘は致し方ない事じゃったが今は違うからの。こちらに飛ばされて来た時もお嬢の事は気に掛かっておっての。儂が言うのもなんじゃが、無事で良かったわい。」
「アタシも殿に惚れたのさ。爺さんの言う通り、強さと器にね。だからアタシらは殿に忠誠を誓った。その殿のお仲間ならアタシにも争う理由が無いねえ。元々、お嬢に恨みがあって傷つけた訳じゃない。あ、そうそう、アタシは女としても殿にぞっこんだけど殿はなびいてくれる素振りもないしこっちの世界に飛ばされた直後に目に入ったのはこのしなびた爺ぃだ。その点、そんないい男に拾われていい仲になっているアンタが羨ましいねえ。」
爺さんと千代ちゃんの言葉にはユキを傷つけた事に関して謝罪は無かった。戦場で敵と出会えば倒すのみ。それはユキも、傭兵だったテルも十分に承知しているのか気にしている風でもない。そして千代ちゃんの最後の言葉に頬を赤らめて俯くユキが初々しい。
「加藤殿、望月殿、『生ける伝説』とも言えるお二人と共に戦える事、光栄に存ずる。私は『雪』と申す者。未熟者なれど何卒宜しくお願い申し上げる。」
「そんな堅苦しいのはいらんわい。儂の事は『段ちゃん』と呼んで欲しいのう、ユキちゃんや。」
「アタシの事は『千代ちゃん』と呼んどくれ。お雪ちゃん。」
思ってたのと違う!!そう叫びたいのを我慢してるテルとユキに苦笑する俺とライムだった。
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