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西国編
開幕
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サンタナの風とアクアの潮流。そしてイセカイ号の動力機関によってゲンの軍船はどんどん距離を離されていく。苦し紛れに矢を放って来たが船全体を覆っているサンタナの風の障壁が全て跳ね返していた。
「おーおー、必死に漕いでんな。これでも諦めないとか結構根性あるじゃん。」
「かずと。上陸してからはどうするの?」
「あー、さっさと船をライムの収納に片付けちまって知らんぷりしようかと思ったんだけどさ…あいつら、攻撃して来たからな。売られた喧嘩はきっちり買ってやろう。」
「うわぁ…カズト殿、悪い笑顔だな。連中が些か気の毒だな。」
「ふっ。ユキさんや。この国にはおっそろしい守護神がいるって事を思い知らせてやらんとな。」
「殿、何か考えがおありのようじゃな?」
「おお。少しだけからかって殺る。」
「お館様。字が違ってないかえ?」
「いんや。文字通りさ。いいか、みんな。作戦はこうだ。なに、ちょっとしたお遊びみたいなもんだよ。俺達にとっては、な。」
そうしてみんなに作戦を伝えたんだが、殆どのメンバーは苦笑を浮かべた。何故だ。対して、スプライトは目を爛々と輝かせ鼻息を荒くしていた。
「さて、上陸するぞ~。」
船着き場に船を着け、ライムが収納からスタリオンでも大丈夫な階段を出す。みんな行儀よくぞろぞろと船を降りて沖に目をやると、必死にこっちに向かって来るゲンの軍船が見える。もう暫く時間が掛かりそうだ。今の内に仕込んでおくか。
「なあ、スプライト。この辺から一番近い村まで石畳で道作ってくれるか?スタリオン達が走りやすいようなの。」
「うむっ!おまかせなのだー!」
スプライトが手を翳すと地面から土が盛り上がり宙に浮きあがる。その土が煉瓦のように固まりズバババっと整然と地面に並んで道となって行く。
「「「「おお~!」」」」
俺、ライム、テル、ユキが思わず歓声を上げる。爺ちゃんと千代ちゃんは村の偵察に行ったよ。
「スプライト!すげえな!」
「えへへへ~、造作もないのだぁ~もごっ!?」
「偉そうな態度がなかなか可愛らしかったのでご褒美の飴ちゃんだ。それでスプライト。この道を挟んで両サイドにサンドゴーレムとロックゴーレムを合わせて50体くらい伏せといてくれるか?」
「もごもご!」
多分任せろって言ってるんだろう。うっすい胸をバアンと叩いて踏ん反り返ってる。
「ライム、竜車出してくれ。スタリオン、ラン、チェロ、ムスタングも準備しといてくれな。アクア、あのシャチに聞いといてくれ。チンゼイの周囲にいるゲンの軍船の数を教えてくれって。」
「うむ。承知なのじゃ。」
待つ事数十分、精根尽き果てた顔のゲン軍が上陸してくる。おっ、真っ先にイセカイ号に乗り込んで行くか。近くの林の中で見物している俺達は今タイミングを計っている。奴らは恐らくイセカイ号を拿捕する部隊と俺達を捜索する部隊に別れるだろう。拿捕する部隊が全てイセカイ号に乗り込んだ時が劇場の開幕だ。
「よし。ライム、イセカイ号を収納。」
「はいよ!」
ライムの空間収納は生物は弾かれる。細菌とかそういうのはどうなのかって?それは知らん。異世界基準じゃ目に見えない生き物なんてそんなもん認識されてないんだから深く考えても仕方ないだろ。それでだ。人が乗り込んだ状態の船を収納したらどうなるか。
《う、うわあああ!?》
《船が消えたぞ!?》
《どわああああ!!!》
船に乗り込んでいた連中は船だけが消え去り、人はその場に取り残される。当然、足場である船を失ったゲンの兵達は海にドッポンだよな。しかもあいつら重そうな甲冑着込んでるから浮かんで来ねえかも。
「次、ライム、奴らの船に雷撃落として沈めちまえ。」
「らじゃ!」
ライムの魔法が雷雲を呼び出し、稲光とほぼ同時に地響きがするような爆音をたてて幾条もの稲妻がゲンの軍船を直撃する。火柱を上げバチバチと延焼しながら海の藻屑となって行くゲンの軍船。この僅かな時間、ゲンの兵達は身じろぎ一つ出来ずにいた。ちなみに船から落ちた奴らは感電死だろうな。
「次、スタリオン、ビート、スプライト。出番だ。ビートの竜車がポイントを通り過ぎたら伏せていたゴーレムを出して奴らの進路を塞げ。奴らの退路は俺達が塞ぐ。」
《じゃあ、いくよー!》
スタリオンが久しぶりの全力疾走でスプライトの整備した道を竜車を牽いて駆けて行く。御者はビート。竜車の中にはスプライトがいる。おお~、速い速い。
《連中が馬車で逃げたぞー!追えっ!追えーーっ!》
およそ400程の兵が竜車に釣られて駆けていく。人間の脚で追い付ける訳ねえだろうに。
「よし、じゃあ俺達も出るか。」
ランもチェロも『限定解除』で本来の姿になっている。俺がランに。ライムがチェロに。テルとユキはムスタングに。サンタナは妖狐蘭丸の背に乗りアクアはエスプリの背に乗っている。
「どうせあいつ等ゴーレムに驚いて逃げて来るんだ。俺達はゆっくり追いかけて行こう。」
スプライト謹製舗装道路の道幅いっぱいに広がった俺達はゆっくりとゲン兵の後を追う。因みに天罰用のロックオンは300程終わっている。残りの100は向こうの出方次第だな。
「おーおー、必死に漕いでんな。これでも諦めないとか結構根性あるじゃん。」
「かずと。上陸してからはどうするの?」
「あー、さっさと船をライムの収納に片付けちまって知らんぷりしようかと思ったんだけどさ…あいつら、攻撃して来たからな。売られた喧嘩はきっちり買ってやろう。」
「うわぁ…カズト殿、悪い笑顔だな。連中が些か気の毒だな。」
「ふっ。ユキさんや。この国にはおっそろしい守護神がいるって事を思い知らせてやらんとな。」
「殿、何か考えがおありのようじゃな?」
「おお。少しだけからかって殺る。」
「お館様。字が違ってないかえ?」
「いんや。文字通りさ。いいか、みんな。作戦はこうだ。なに、ちょっとしたお遊びみたいなもんだよ。俺達にとっては、な。」
そうしてみんなに作戦を伝えたんだが、殆どのメンバーは苦笑を浮かべた。何故だ。対して、スプライトは目を爛々と輝かせ鼻息を荒くしていた。
「さて、上陸するぞ~。」
船着き場に船を着け、ライムが収納からスタリオンでも大丈夫な階段を出す。みんな行儀よくぞろぞろと船を降りて沖に目をやると、必死にこっちに向かって来るゲンの軍船が見える。もう暫く時間が掛かりそうだ。今の内に仕込んでおくか。
「なあ、スプライト。この辺から一番近い村まで石畳で道作ってくれるか?スタリオン達が走りやすいようなの。」
「うむっ!おまかせなのだー!」
スプライトが手を翳すと地面から土が盛り上がり宙に浮きあがる。その土が煉瓦のように固まりズバババっと整然と地面に並んで道となって行く。
「「「「おお~!」」」」
俺、ライム、テル、ユキが思わず歓声を上げる。爺ちゃんと千代ちゃんは村の偵察に行ったよ。
「スプライト!すげえな!」
「えへへへ~、造作もないのだぁ~もごっ!?」
「偉そうな態度がなかなか可愛らしかったのでご褒美の飴ちゃんだ。それでスプライト。この道を挟んで両サイドにサンドゴーレムとロックゴーレムを合わせて50体くらい伏せといてくれるか?」
「もごもご!」
多分任せろって言ってるんだろう。うっすい胸をバアンと叩いて踏ん反り返ってる。
「ライム、竜車出してくれ。スタリオン、ラン、チェロ、ムスタングも準備しといてくれな。アクア、あのシャチに聞いといてくれ。チンゼイの周囲にいるゲンの軍船の数を教えてくれって。」
「うむ。承知なのじゃ。」
待つ事数十分、精根尽き果てた顔のゲン軍が上陸してくる。おっ、真っ先にイセカイ号に乗り込んで行くか。近くの林の中で見物している俺達は今タイミングを計っている。奴らは恐らくイセカイ号を拿捕する部隊と俺達を捜索する部隊に別れるだろう。拿捕する部隊が全てイセカイ号に乗り込んだ時が劇場の開幕だ。
「よし。ライム、イセカイ号を収納。」
「はいよ!」
ライムの空間収納は生物は弾かれる。細菌とかそういうのはどうなのかって?それは知らん。異世界基準じゃ目に見えない生き物なんてそんなもん認識されてないんだから深く考えても仕方ないだろ。それでだ。人が乗り込んだ状態の船を収納したらどうなるか。
《う、うわあああ!?》
《船が消えたぞ!?》
《どわああああ!!!》
船に乗り込んでいた連中は船だけが消え去り、人はその場に取り残される。当然、足場である船を失ったゲンの兵達は海にドッポンだよな。しかもあいつら重そうな甲冑着込んでるから浮かんで来ねえかも。
「次、ライム、奴らの船に雷撃落として沈めちまえ。」
「らじゃ!」
ライムの魔法が雷雲を呼び出し、稲光とほぼ同時に地響きがするような爆音をたてて幾条もの稲妻がゲンの軍船を直撃する。火柱を上げバチバチと延焼しながら海の藻屑となって行くゲンの軍船。この僅かな時間、ゲンの兵達は身じろぎ一つ出来ずにいた。ちなみに船から落ちた奴らは感電死だろうな。
「次、スタリオン、ビート、スプライト。出番だ。ビートの竜車がポイントを通り過ぎたら伏せていたゴーレムを出して奴らの進路を塞げ。奴らの退路は俺達が塞ぐ。」
《じゃあ、いくよー!》
スタリオンが久しぶりの全力疾走でスプライトの整備した道を竜車を牽いて駆けて行く。御者はビート。竜車の中にはスプライトがいる。おお~、速い速い。
《連中が馬車で逃げたぞー!追えっ!追えーーっ!》
およそ400程の兵が竜車に釣られて駆けていく。人間の脚で追い付ける訳ねえだろうに。
「よし、じゃあ俺達も出るか。」
ランもチェロも『限定解除』で本来の姿になっている。俺がランに。ライムがチェロに。テルとユキはムスタングに。サンタナは妖狐蘭丸の背に乗りアクアはエスプリの背に乗っている。
「どうせあいつ等ゴーレムに驚いて逃げて来るんだ。俺達はゆっくり追いかけて行こう。」
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