238 / 240
大陸の闇編
自由に生きろって言われたから。
しおりを挟む
「それではセリカ殿、カズト様とライム殿、その眷属様方はそのまま旅に出たと?」
「はい。『後は任せた』と言って西へ向かってしまいました。ですので、私が代理で神王討伐の完了をご報告に参上致した次第です」
カズトの代わりに私が帝へ報告に赴いています。本当はカズトと共に行きたかったのですが私には女王としての務めがあります。私もカズトのように自由に生きられたらと思いますが、これも私の選んだ道、しかもカズトの助力を得て成し遂げた事です。我儘は言えませんね。
「……自由な御仁ですね。羨ましく思います。あのお方を繋ぎ止めておく事は出来そうにありませんね」
「ええ。きっと今頃は大陸の世直し旅の真っ最中でしょう」
まったく、ボーラ様の言う通りです。きっと旅の途中でも自由に振る舞い、結果多くの人を救うのでしょうね。
◇◇◇
俺とライムはそれぞれランとチェロの背に揺られて、のんびりと西へ向かっていた。傍らには蘭丸とエスプリ。後ろには竜車を牽くスタリオン。御者はビートが務め竜車の中には実体化したサンタナ、アクア、スプライト、イオタが乗っている。
「思ったより混乱はしてないみたいだね。もっと大騒ぎになってるかと思ってたけど」
神王マーキュリーの討伐というボーラからの依頼を達成した俺とライムはヘイアンへは戻らず、そのまま大陸を西へ向かって旅をする事にした。わずか数年で大陸を制覇したのだから、急に神王を失っては色々と歪みもあるだろう。様子を見るくらいの事はしてやろうと思ったんだ。ライムとの旅行のついでに。大事な事だからもう一度言う。旅行のついでだ。
だがライムの言う通り思いの外平穏というか、混乱は見られない。
「良くも悪くも制圧した地域の政治にはノータッチだったらしいからな。一般人のレベルじゃあ生活はそんなに変わらないのかも知れないな」
かと言って、神王が死んだ事による変化がない事が良い事だとは言えないけどな。神王が政治に不干渉だったって事はその地域の為政者が名君か暗君かで庶民の暮らしは天と地の差だろう。神王がいなくなっても為政者が変わらなければ暮らし向きも変わらない。
『でもおにいちゃんは積極的に介入する気はないんだろう?』
「ああ」
蘭丸の問いに短く答える。目の前で困ってる人がいれば助けてやるのも吝かではないが、この広い大陸のどこかの地域に暴君がいたからと言ってわざわざ討伐に出向くつもりもないからな。それはそこに住む人たちの問題で、自分達で何とかすべき事だろう。まあ、俺は冒険者だから依頼をされれば動くかも知れないが。
「うふふふ。カズト様は、たまたま悪い領主がいる地域を狙って旅をするんですの?」
「あははは!そうそう!本当にたまたま、かずとの向かう所に悪代官ありってね?」
ビートとライムがめっちゃニヤニヤして言ってくる。
「ライム、ビート、ご主人様をあまりからかうものではありませんよ?奥ゆかしくていいではありませんか」
「そうじゃな。マスターは照れ屋さんなのじゃ。みなまで言うてやるな」
「あるじー、照れ屋さんー?ねえねえ?照れ屋さんなのだー?」
「主って……つんでれさん?」
精霊王たちが勝手な事をやいやい言ってるが、お前ら後で覚えてろよ?
「殿」「御館様」
おっと、いきなり段蔵爺さんと千代ちゃんが現れた。
「よ、ご苦労さん。次の目的地は?」
「これより南、大河を渡った向こう側からさらに西…」
「そうか。みんな!次は南へ観光、それから西だ!ついでに悪者退治があるかもな?」
俺はみんなの生温かい視線を浴びながら南へと進路を取った。
この世界に召喚された時、女神は俺に言ったんだ。自由に生きて構いませんってな。だからこれからも俺は自由にやらせて貰う。こいつらと一緒に。
ー完ー
読者の皆様、ここまでお付き合い頂き本当に有難う御座いました。連載を始めて一年と少し、当初構想の数倍のボリュームの物語となりました。これにてこの物語は完結とさせて頂きます。ここまで書ききれたのも応援して下さった皆様のおかげです。この感謝の気持ちを忘れずに、次回作も頑張りたいと思います。
次回作でまた会えましたら、その時はまたよろしくお願い致します。
「はい。『後は任せた』と言って西へ向かってしまいました。ですので、私が代理で神王討伐の完了をご報告に参上致した次第です」
カズトの代わりに私が帝へ報告に赴いています。本当はカズトと共に行きたかったのですが私には女王としての務めがあります。私もカズトのように自由に生きられたらと思いますが、これも私の選んだ道、しかもカズトの助力を得て成し遂げた事です。我儘は言えませんね。
「……自由な御仁ですね。羨ましく思います。あのお方を繋ぎ止めておく事は出来そうにありませんね」
「ええ。きっと今頃は大陸の世直し旅の真っ最中でしょう」
まったく、ボーラ様の言う通りです。きっと旅の途中でも自由に振る舞い、結果多くの人を救うのでしょうね。
◇◇◇
俺とライムはそれぞれランとチェロの背に揺られて、のんびりと西へ向かっていた。傍らには蘭丸とエスプリ。後ろには竜車を牽くスタリオン。御者はビートが務め竜車の中には実体化したサンタナ、アクア、スプライト、イオタが乗っている。
「思ったより混乱はしてないみたいだね。もっと大騒ぎになってるかと思ってたけど」
神王マーキュリーの討伐というボーラからの依頼を達成した俺とライムはヘイアンへは戻らず、そのまま大陸を西へ向かって旅をする事にした。わずか数年で大陸を制覇したのだから、急に神王を失っては色々と歪みもあるだろう。様子を見るくらいの事はしてやろうと思ったんだ。ライムとの旅行のついでに。大事な事だからもう一度言う。旅行のついでだ。
だがライムの言う通り思いの外平穏というか、混乱は見られない。
「良くも悪くも制圧した地域の政治にはノータッチだったらしいからな。一般人のレベルじゃあ生活はそんなに変わらないのかも知れないな」
かと言って、神王が死んだ事による変化がない事が良い事だとは言えないけどな。神王が政治に不干渉だったって事はその地域の為政者が名君か暗君かで庶民の暮らしは天と地の差だろう。神王がいなくなっても為政者が変わらなければ暮らし向きも変わらない。
『でもおにいちゃんは積極的に介入する気はないんだろう?』
「ああ」
蘭丸の問いに短く答える。目の前で困ってる人がいれば助けてやるのも吝かではないが、この広い大陸のどこかの地域に暴君がいたからと言ってわざわざ討伐に出向くつもりもないからな。それはそこに住む人たちの問題で、自分達で何とかすべき事だろう。まあ、俺は冒険者だから依頼をされれば動くかも知れないが。
「うふふふ。カズト様は、たまたま悪い領主がいる地域を狙って旅をするんですの?」
「あははは!そうそう!本当にたまたま、かずとの向かう所に悪代官ありってね?」
ビートとライムがめっちゃニヤニヤして言ってくる。
「ライム、ビート、ご主人様をあまりからかうものではありませんよ?奥ゆかしくていいではありませんか」
「そうじゃな。マスターは照れ屋さんなのじゃ。みなまで言うてやるな」
「あるじー、照れ屋さんー?ねえねえ?照れ屋さんなのだー?」
「主って……つんでれさん?」
精霊王たちが勝手な事をやいやい言ってるが、お前ら後で覚えてろよ?
「殿」「御館様」
おっと、いきなり段蔵爺さんと千代ちゃんが現れた。
「よ、ご苦労さん。次の目的地は?」
「これより南、大河を渡った向こう側からさらに西…」
「そうか。みんな!次は南へ観光、それから西だ!ついでに悪者退治があるかもな?」
俺はみんなの生温かい視線を浴びながら南へと進路を取った。
この世界に召喚された時、女神は俺に言ったんだ。自由に生きて構いませんってな。だからこれからも俺は自由にやらせて貰う。こいつらと一緒に。
ー完ー
読者の皆様、ここまでお付き合い頂き本当に有難う御座いました。連載を始めて一年と少し、当初構想の数倍のボリュームの物語となりました。これにてこの物語は完結とさせて頂きます。ここまで書ききれたのも応援して下さった皆様のおかげです。この感謝の気持ちを忘れずに、次回作も頑張りたいと思います。
次回作でまた会えましたら、その時はまたよろしくお願い致します。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。