婚約者に心変わりされた私は、悪女が巣食う学園から姿を消す事にします──。

Nao*

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 その魔法書が自分一人の物になれば、より多くの魔法を自分だけが使えるようになる。

 でも、ナナリーは元は平民よね……?

 この国では、魔力を持つ平民はまだ発見されては居ない。

 いくらその本が素晴らしくても、魔力無しのナナリーでは宝の持ち腐れになってしまうのでは──?



 そう思い、水晶玉の中のナナリーをじっと見つめれば……何故か、今まで彼女から感じた事の無い恐怖を私は感じた。
 
 と同時に、確かにどこかで感じた魔力の気配を察知したのだが……ナナリーが急にこちらを振り返るような仕草をした事で、私は驚きすぐに水晶玉から手を離した。



 今一瞬だけど、ナナリーの身体から魔力らしきものを感じた。

 しかし、どうしてあの子からそんなものが……?



 でももし彼女に魔力があるなら、ライオス達だけでなく学園長迄虜になってしまうのも理解が出来る。

 そう言えば、彼女に夢中になって居るのは魔力を持って居ないか……私よりも魔力が弱い者達ばかりだ。



 もしやナナリーは隠して居るだけで、私に匹敵するか……もしくはそれ以上の魔力持ち主である可能性がある?

 そんな者があの魔法書を手にしたら、どんな事になるのか想像もつかない──。

 恐ろしい未来を想像し、私はぶるりと身体を震わせた。




 と、その時……身に着けていたネックレスが光り出し、その光の中からよく知った声が聞こえて来た。


『シルビア、聞こえるかい?』
 
「ク、クラウド……聞こえて居るわ。良かった……今、困った事になってて─。でも、私一人じゃどうにも出来ないと思って──。」



 相手は一緒に旅をしたあのクラウドで、私は彼の声を聞きホッと一安心した。

 そして私は、今見た事をそのまま彼に伝えたが……それを聞いた彼は、ある事を提案して来た。



『君は、このまますぐに俺が居るジステニア学園に転入するんだ。宝物庫にある、あの魔法書と共に──』

「そ、それって魔法書を勝手に持ち出すって事!?でも、あそこには結界が張ってあって……私だけの魔力では、どうにも──」

『それは私が何とかします。あなたが魔法書を手にしたら、私の転移魔法でこちらに来て貰いますからね。」

「その声は、エリーゼ様!?」



 エリーゼ様はジステニア学園の学園長であり、クラウドのお母様だが……まさか、エリーゼ様が協力して下さるとは──。



 驚きながらも私はエリーゼ様に指示された通りすぐに宝物庫へ行き、その扉に手を掛けた。

 するとエリーゼ様の魔力を感じた瞬間、百周年祭迄決して開かない筈の扉はいとも簡単に開き……私はケースからあの魔法書を取り出すと、すぐに鞄の中に入れた。


 
 と同時に、私の足元に魔法陣が現れ……移転魔法が展開されたのだと理解した瞬間、私の身体はその中へ吸い込まれて行く。



 だがそんな私の耳に、こちらに駆け寄る足音とナナリーの叫ぶ声が聞こえたが……それに気づいた私は、咄嗟にある事を思い出した。

 そして呪文を唱え終わり消えゆく私に、彼女のその手が届く事は無いのだった──。
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