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第六章 君の一つ一つの言葉が
8 大人の二次会
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手に汗を握りながらやって来た、show先生の家。正確にいえば、別邸だそうだ。普段住んでいる家は別にあるらしい。
どんな人なんだろうと不安もあったのだが、show先生は気さくというか、ノリが良いというか、もうパワフルな人だった。
「Hi! しほり~! はじめまして~!」
柄のない白いティーシャツにジーパンというシンプルなファッションで、少し伸びた髭がダンディなおじさまという印象を抱いた。
それにしても腕がもげそう。両手を振り回すように上下に振る。
「は、はじめまして、です……show先生」
テンションの差、いや、元気の差かな。私と差がありすぎて、少し引いてしまった。
「キュートな貴女に会えて、俺は幸せだよ~!」
「え、あ、はい、ありがとうございます」
突然、抱き締められた。予想外の行動で、表情と体が石のように固まる。戸惑うことばかりである。
外国の挨拶のようなやりとりを外でやるのはやめておきませんか、人の目があるので。恥ずかしいので、家の中に早く入りたいのですが……ねえ!
せっかくのご好意を嫌がったら悪い気がして振り解けないでいると、湊くんが無言で引き剥がしてくれた。
そして、次に気がついた時はリビングでお酒を勧められていた。ソファーには、私とshow先生。そして、ダイニングテーブルには湊くんと梶瑛さんがお菓子を食べている。
おかしい。
明らかに記憶が飛んでいる。
緊張して、頭がおかしくなっているのかな。
show先生と酒を飲む私。葡萄ジュースのようなお酒でとても飲みやすい。その美味しさと、先生に勧められたことが後押しになって、酒が進む。
「どう? しほり! この酒、美味いだろ? しほりの演奏が素晴らしかったから、急遽特別に取り寄せてもらったんだ」
「はい、凄く飲みやすいです」
「『君の瞳に乾杯』……なーんちゃって!」
アハハハハハハ!
豪華に笑う、陽気なshow先生。
顔が熱い。きっと赤くなってる。私は酒は嫌いではないが、かなり弱いので、ある程度飲んだら満足する。
そろそろお酒はいらないやと、グラスをテーブルに置くと、show先生がそのグラスに並々と酒を注いだ。
ワンコ蕎麦かなにかと勘違いしているのかな。
「まだまだ飲もうよ~。夜は長いから、さ」
甘い声色。
危険な匂いしかしないな。
「いえ、もう結構です」
愛想笑いをしていると、先生はグラスを私に持たせ、そのまま彼の大きな手が私の手を包み込む。
「そんなこと言わずに。せっかく出会えた縁だ。仲良くしようよ」
そして、不意に先生は呆れ切っている湊くんに目をやる。
「お前ら、コンビニでイカとか菓子とか、なんでもいいからツマミを買ってきて。俺の財布を持って行っていいから。ついでに、お前らも自分の欲しいもんを買ってこいよ」
そう言って、真っ黒な革製の長財布を彼に投げた。
「……」
上手にキャッチすると、湊くんはじっとshow先生を睨みつける。
「湊、行こう。あたし、アイスが食べたい」
お菓子を食べていた手を止め、梶瑛さんは湊くんの手を取った。
湊くんはなにかを言いたそうだったが、彼女はそんな彼を気にすることなく、強引に押していく。「アイス」と連呼しながら、とても嬉しそうに部屋から出ていった。
「あ」
私も行くと言いそびれた。
show先生と二人きりなのは凄く恥ずかしい。一人にしないでよ。とりあえず、この手を離していただきたい。
遠のいていく二人の足音。
虚しさが残る。
「あ、あの」
「はい、お酒、どーぞ」
無理矢理口元にグラスを近づけられ、飲まざるを得ない。どうしよう。これ以上飲むのはよくない。それは自分が一番知ってる。
「ちょ、も、む」
「可愛いよ~可愛いね~」
人の話を聞け。
心の中で額に青筋を立てる。
「こんなに可愛いのに独身か~。実はさ、俺も独身なんだよね。そろそろ身を固めたいし、俺達、結婚前提でお付き合いしない?」
「えー、そー……なんですかぁ?」
あ、ヤバい。酒が回って、頭がだんだん回らなくなってる。
「そうなんです~。もし俺と付き合ってくれるなら、どの楽器も貸すし~。むしろ、あげちゃうよ⭐︎」
楽器がもらえる? ただで? なんて魅惑的な言葉なのだろう。どのメーカーも使いたい放題なんて、まるでスマートフォンの料金プランみたい。
悪くないなぁと思っていると、濃い顔が近づいてきた。
「しほりが望むなら、特別にレッスンもしてあげるよ」
チョコレートよりも甘い声。
頭の芯が痺れるような感覚がした。恋愛漫画とかでよくそんな表現をしてるけど、これが好きという感覚なの?
「特別……? レッスン……?」
「そう。手取り足取り、ちゃあんと指先まで教えてあげる」
彼の太い指が足から上がってくる。焦らすようにゆっくりと。
それは止まることなく腰、腕、肩、顎の輪郭をなぞっていく。大人の触れ方、というのか。
湊くんはこんな触り方をしないだろうなと、ぼんやりとした頭で考えた。
「もっとフルートが上手く、なれましゅか?」
酒で呂律が回らなくなった。
そんな唇に、彼の指が触れる。
「なれるなれる。俺と同じくらいにはなれるよ。責任、持つからさ」
体が熱い。
「あれ? 顔が赤いね。部屋が暑いのかな。服、脱ぐ?」
「う……むぅ、熱い、にゃ」
「え? なになに? 可愛い言葉を使うね! 酔っ払うと子猫ちゃんになるのかな?」
「あつい? じゃあ、ふく、ぬぐ……」
本当に部屋の中が暑いのかよくわからない。でも体が熱いのはわかる。
するりと白緑のレースカーディガンを脱ぐ。
そしてワンピースの背中にあるホックを下ろそうと指で摘むが、なかなか指先に力が入らなくて摘めない。
待ちきれなくなったように、show先生がホックに手を掛けた。
一体、なにをされているのだろう?
「しほり、愛してる」
あいしてる?
どんな意味?
ああ、それを下ろされたら、下着が見えちゃうなぁと、ぼんやりと天井を見ていた。
一体、ここってどこだっけ?
どんな人なんだろうと不安もあったのだが、show先生は気さくというか、ノリが良いというか、もうパワフルな人だった。
「Hi! しほり~! はじめまして~!」
柄のない白いティーシャツにジーパンというシンプルなファッションで、少し伸びた髭がダンディなおじさまという印象を抱いた。
それにしても腕がもげそう。両手を振り回すように上下に振る。
「は、はじめまして、です……show先生」
テンションの差、いや、元気の差かな。私と差がありすぎて、少し引いてしまった。
「キュートな貴女に会えて、俺は幸せだよ~!」
「え、あ、はい、ありがとうございます」
突然、抱き締められた。予想外の行動で、表情と体が石のように固まる。戸惑うことばかりである。
外国の挨拶のようなやりとりを外でやるのはやめておきませんか、人の目があるので。恥ずかしいので、家の中に早く入りたいのですが……ねえ!
せっかくのご好意を嫌がったら悪い気がして振り解けないでいると、湊くんが無言で引き剥がしてくれた。
そして、次に気がついた時はリビングでお酒を勧められていた。ソファーには、私とshow先生。そして、ダイニングテーブルには湊くんと梶瑛さんがお菓子を食べている。
おかしい。
明らかに記憶が飛んでいる。
緊張して、頭がおかしくなっているのかな。
show先生と酒を飲む私。葡萄ジュースのようなお酒でとても飲みやすい。その美味しさと、先生に勧められたことが後押しになって、酒が進む。
「どう? しほり! この酒、美味いだろ? しほりの演奏が素晴らしかったから、急遽特別に取り寄せてもらったんだ」
「はい、凄く飲みやすいです」
「『君の瞳に乾杯』……なーんちゃって!」
アハハハハハハ!
豪華に笑う、陽気なshow先生。
顔が熱い。きっと赤くなってる。私は酒は嫌いではないが、かなり弱いので、ある程度飲んだら満足する。
そろそろお酒はいらないやと、グラスをテーブルに置くと、show先生がそのグラスに並々と酒を注いだ。
ワンコ蕎麦かなにかと勘違いしているのかな。
「まだまだ飲もうよ~。夜は長いから、さ」
甘い声色。
危険な匂いしかしないな。
「いえ、もう結構です」
愛想笑いをしていると、先生はグラスを私に持たせ、そのまま彼の大きな手が私の手を包み込む。
「そんなこと言わずに。せっかく出会えた縁だ。仲良くしようよ」
そして、不意に先生は呆れ切っている湊くんに目をやる。
「お前ら、コンビニでイカとか菓子とか、なんでもいいからツマミを買ってきて。俺の財布を持って行っていいから。ついでに、お前らも自分の欲しいもんを買ってこいよ」
そう言って、真っ黒な革製の長財布を彼に投げた。
「……」
上手にキャッチすると、湊くんはじっとshow先生を睨みつける。
「湊、行こう。あたし、アイスが食べたい」
お菓子を食べていた手を止め、梶瑛さんは湊くんの手を取った。
湊くんはなにかを言いたそうだったが、彼女はそんな彼を気にすることなく、強引に押していく。「アイス」と連呼しながら、とても嬉しそうに部屋から出ていった。
「あ」
私も行くと言いそびれた。
show先生と二人きりなのは凄く恥ずかしい。一人にしないでよ。とりあえず、この手を離していただきたい。
遠のいていく二人の足音。
虚しさが残る。
「あ、あの」
「はい、お酒、どーぞ」
無理矢理口元にグラスを近づけられ、飲まざるを得ない。どうしよう。これ以上飲むのはよくない。それは自分が一番知ってる。
「ちょ、も、む」
「可愛いよ~可愛いね~」
人の話を聞け。
心の中で額に青筋を立てる。
「こんなに可愛いのに独身か~。実はさ、俺も独身なんだよね。そろそろ身を固めたいし、俺達、結婚前提でお付き合いしない?」
「えー、そー……なんですかぁ?」
あ、ヤバい。酒が回って、頭がだんだん回らなくなってる。
「そうなんです~。もし俺と付き合ってくれるなら、どの楽器も貸すし~。むしろ、あげちゃうよ⭐︎」
楽器がもらえる? ただで? なんて魅惑的な言葉なのだろう。どのメーカーも使いたい放題なんて、まるでスマートフォンの料金プランみたい。
悪くないなぁと思っていると、濃い顔が近づいてきた。
「しほりが望むなら、特別にレッスンもしてあげるよ」
チョコレートよりも甘い声。
頭の芯が痺れるような感覚がした。恋愛漫画とかでよくそんな表現をしてるけど、これが好きという感覚なの?
「特別……? レッスン……?」
「そう。手取り足取り、ちゃあんと指先まで教えてあげる」
彼の太い指が足から上がってくる。焦らすようにゆっくりと。
それは止まることなく腰、腕、肩、顎の輪郭をなぞっていく。大人の触れ方、というのか。
湊くんはこんな触り方をしないだろうなと、ぼんやりとした頭で考えた。
「もっとフルートが上手く、なれましゅか?」
酒で呂律が回らなくなった。
そんな唇に、彼の指が触れる。
「なれるなれる。俺と同じくらいにはなれるよ。責任、持つからさ」
体が熱い。
「あれ? 顔が赤いね。部屋が暑いのかな。服、脱ぐ?」
「う……むぅ、熱い、にゃ」
「え? なになに? 可愛い言葉を使うね! 酔っ払うと子猫ちゃんになるのかな?」
「あつい? じゃあ、ふく、ぬぐ……」
本当に部屋の中が暑いのかよくわからない。でも体が熱いのはわかる。
するりと白緑のレースカーディガンを脱ぐ。
そしてワンピースの背中にあるホックを下ろそうと指で摘むが、なかなか指先に力が入らなくて摘めない。
待ちきれなくなったように、show先生がホックに手を掛けた。
一体、なにをされているのだろう?
「しほり、愛してる」
あいしてる?
どんな意味?
ああ、それを下ろされたら、下着が見えちゃうなぁと、ぼんやりと天井を見ていた。
一体、ここってどこだっけ?
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