割と稼ぐガサツな女と隣に住む訳ありゲーマー

メトロノーム

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「…はあ」
「君何センチ?高身長だけど180はあるよね?」 
「……まあありますけどってこれいらないんですか」

「……いります」

彼の右手につかまれた黒いブラをいちはやく受け取ると自分のポケットの中に突っ込んだ。

「それにしてもなんで私のブラが?」
「さあ、お姉さんが落としたんじゃないんですか?」

いくら酔っていたとはいえわざわざ服の下からホックを外してブラを落とすなんてことするかな?
いやなんだかんだ年を取るにつれ素行が怪しくなってきている自覚はあるけど、、、。

「あの、ありがとうございましたお兄さん。お恥ずかしい醜態を晒してしまい」

「今度から気を付けてくださいね。今度落ちてたら隣の俺が怪しまれるんで」

「はい…ってお兄さんお隣住みですか?え?こんなイケメンが?私の隣に?」

「セクハラは辞めてくださいね」

「え、セクハラ気を付けますところでお兄さんLINE交換しません?」

「辞めてって言ったばっかですけどね」




なんということでしょう。
26歳目前にして、好機が訪れたようです。
もう何年もまともな恋愛をしていない私に、イケメン兄さんが隣に引っ越ししてきたのですから。

「お兄さん挨拶代わりに家入ります?何もしませんから」

「女性の貴方に言われて悲しいですよ俺は」



そんなこんなで家には入ってくれませんでしたが、まあお隣さんでこれからも仲良くしましょうと握手を交わした次第です。
お母さま、私はこれからの人生もう少し期待を持って過ごしてみてもいいんじゃないかと神様に言われた気がします。

頑張って生きますね。娘より。





「いやこんな卑猥な手紙母親に送るんですか?」
「あ!ちょっと勝手に見ないでよ!って何勝手に人のドリップコーヒー使ってんだこら」


時刻は朝の8時。
お腹が空いたので朝マッ〇を買いに戻ると、リビングでコーヒーを飲みながら私の手紙を読んでいた池ちゃん。
「昨日かなり酔われていたので朝起こしに来たのですが、多田先生いなかったので」
「ふふん。実は今日少し早めに起きてウー○ーせずに片道15分かかるマッ〇まで買いに行ったのだよ」

「多田先生にしては上出来ですね」

「まあね、、、。ところで池ちゃん。昨日の話が本当なら彼女いるのに他の女の家来ちゃダメじゃない」

コーヒー豆の香ばしい匂いが鼻腔をくすぐった。

「まあ、多田先生ですし。寝坊されでもしたらこちらが困りますしね」

「え~、、ありがたいけどさあ。私君の彼女に殺されたくないのよね」

池ちゃんは家に上がると、必ず身の回りの物を整理してくれる。
先ほども朝ご飯を買いに家を出た後、昨日から溜めていた食器類が綺麗に洗ってあったのだ。

とてもありがたい。ありがたいけども。

「先生これからはちゃんと自立するからさ、彼女を悲しませない程度にね」

ふわふわな池ちゃんの髪の上に手を置くと、ポンポンと頭を撫でた。

「辞めてください子供じゃないんですから」

「私から見たら未成年は子供だよ」


そう実は池ちゃんこと池田くん。こう見えてまだ19歳。
まだ若造だし、もっと今の男の子のように羽目を外して遊んでもいい年ごろだと思う。
それでも彼は従順に仕事をこなしてくれるから、私も彼に甘えているところがある。


「先生ベランダで吸ってくるからちょっと待っててね」

外から眺める景色は素晴らしい。

火をつけ煙を肺に入れると、大好きなニコチンが体全体を支配して気分が高揚した。

大きなため息と同時に煙を吐き出すと「うわ」という不満らしい声が聞こえてきた。

「え」

「あ」


左を向くと、コーヒーカップを持って片方の手で煙を払うあのイケメン兄さんがいた。

「うわ!?でた昨日のイケメン!」

「朝から大きい声出すのやめてくださいあと煙」

「ご、ごめんね。今までずっと隣空き部屋だったから吸ってるの習慣になってて」

私はすぐに煙草を下に落とすと、足でその煙のもとを消した。


「…そうですか」

イケメンくんはそういうと、すぐに前を向いて外の景色を眺めながらカップを口にする。

朝の8時、寒くも暑くもない、でもちょっと涼しいそんな朝。
私はこの時間が好きだ。

「俺、もう終わるんで続き吸ってください」
「え、あ…ありがとう」

チラッと下を覗くと、足で踏まれたへなちょこのタバコが無惨にも灰を広げて転がっている。

タバコやめようかなあ…

らしくもない感情が浮かび上がったのも束の間、また直ぐにタバコを一本口にした。
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