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お前のものは俺のもの
友達になる条件-1
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『ありがとう』
この言葉を山下に伝えられた俺は、やっと伝えることの出来た安堵感の他に、自分の気持ちに絡まっていたものがスっと解け、本当の気持ちが溢れ出していた。
俺…本当は、山下と友達になりたいんだ…
こんな俺の事を振り向かせたいと頑張って声をかけ続けては、周りの目なんか気にもせず、ずっとずっと…俺に寄り添おうとしてくれた。
ただ、俺はαなのにβと偽り続ける必要もある…それは山下も同じなんだろう…
Ωなのにβと偽っているわけだ。
そう、お互い何かしらの悩みを抱えながら生きている…
そして、Ωの山下と友達になるには、山下がΩだとバレず、俺もαだと気付かれないようにする必要がある。
なのに、俺が山下のフェロモンに反応してしまえば全てが終わっちまう…
山下の可愛さとフェロモンを俺は、どうすれば耐えられるのだろう…?
どうしたらいい…どこをどう打破出来れば、俺は山下と友達になれる…?
そんな事を考えながらも『あっ…』といい案が思いついた俺は、その日の下校時間、山下が毎日乗っている自転車の近くで、山下のことを待ち続けていたんだ。
◇ ◇
──朝、誰よりも早く学校に着いていた俺は、教室の窓から山下の姿を何度も目に焼き付けていた。
だからアイツがどんな自転車に乗っていたのかも俺は知っていたんだ。
山下が来るまで俺は変わらず天を仰ぎ、空に浮かぶ雲を眺め続けていた。
可愛いとか、好きとか…
そんな事より先にやる事がある。
友達…そうだ、俺は山下と友達になりたい…
そのためには、俺の事を知っておいて欲しいと心がそう叫んでいた。
失う怖さを知っているから…
一人程、寂しいことは無かったから…
本当の友達なんて…一人もいなかったから…
その時だった…雲を眺め、色んな感情が湧き溢れる俺の耳と背中を優しくて、温かい声が包み込んでくれたんだ。
「山際くん!」
待ってたよ…お前の事…
いや、待たせてごめんな…裕翔…
俺の背中に向かって、今になっても俺を振り向かせようと必死に声を掛けてくれる山下。
白旗を上げた俺は、どんな顔をしていいのかも分からずにゆっくりと…山下へ振り返って見せたんだ。
「…遅いぞ…」
「…ふぇっ?!!」
黒縁眼鏡を掛け、透き通った瞳が可愛い山下…
俺がやっと振り返ったことに呆気に取られているのも見てすぐに分かった。
それでも、お互い隠したい事がバレてはいけない…なら、俺は平然を装うだけ…ペースを崩さないように俺も俺で必死だったんだ。
「…待った罰だ…」
「な、なな、なんですかぁ…?」
「…お前の自転車の荷台に俺を乗せろ…」
山下を直視しているのは、正直辛い…
αの俺が俺ではなくなってしまう…
でも、ちゃんと話がしたい…
なら、顔を見ないようにすればいい。
荷台に乗せてもらって、どこか静かなところに連れて行って欲しい。
そこで、お前にだけ俺の秘密を知って欲しかったから…
山下も山下で俺が振り向いた事に驚きが隠せないのか、アワアワと言葉が繋がらない様子だ。
「…ほら、早く」
「わ、分かった…ちょっと待って…!」
山下は慌てながらも自転車を乗れるところまで運んでいってくれて、山下がサドルに跨った事を確認した俺は、そっと荷台へ横向きに座り込んだんだ。
横向きなら、山下の顔も見ずに景色を眺められるから…
「…こ、漕いでいい…?」
「…ああ」
俺の掛け声と共に、山下は小さな身体でペダルを必死に漕ぎ始めてくれたんだ。
この言葉を山下に伝えられた俺は、やっと伝えることの出来た安堵感の他に、自分の気持ちに絡まっていたものがスっと解け、本当の気持ちが溢れ出していた。
俺…本当は、山下と友達になりたいんだ…
こんな俺の事を振り向かせたいと頑張って声をかけ続けては、周りの目なんか気にもせず、ずっとずっと…俺に寄り添おうとしてくれた。
ただ、俺はαなのにβと偽り続ける必要もある…それは山下も同じなんだろう…
Ωなのにβと偽っているわけだ。
そう、お互い何かしらの悩みを抱えながら生きている…
そして、Ωの山下と友達になるには、山下がΩだとバレず、俺もαだと気付かれないようにする必要がある。
なのに、俺が山下のフェロモンに反応してしまえば全てが終わっちまう…
山下の可愛さとフェロモンを俺は、どうすれば耐えられるのだろう…?
どうしたらいい…どこをどう打破出来れば、俺は山下と友達になれる…?
そんな事を考えながらも『あっ…』といい案が思いついた俺は、その日の下校時間、山下が毎日乗っている自転車の近くで、山下のことを待ち続けていたんだ。
◇ ◇
──朝、誰よりも早く学校に着いていた俺は、教室の窓から山下の姿を何度も目に焼き付けていた。
だからアイツがどんな自転車に乗っていたのかも俺は知っていたんだ。
山下が来るまで俺は変わらず天を仰ぎ、空に浮かぶ雲を眺め続けていた。
可愛いとか、好きとか…
そんな事より先にやる事がある。
友達…そうだ、俺は山下と友達になりたい…
そのためには、俺の事を知っておいて欲しいと心がそう叫んでいた。
失う怖さを知っているから…
一人程、寂しいことは無かったから…
本当の友達なんて…一人もいなかったから…
その時だった…雲を眺め、色んな感情が湧き溢れる俺の耳と背中を優しくて、温かい声が包み込んでくれたんだ。
「山際くん!」
待ってたよ…お前の事…
いや、待たせてごめんな…裕翔…
俺の背中に向かって、今になっても俺を振り向かせようと必死に声を掛けてくれる山下。
白旗を上げた俺は、どんな顔をしていいのかも分からずにゆっくりと…山下へ振り返って見せたんだ。
「…遅いぞ…」
「…ふぇっ?!!」
黒縁眼鏡を掛け、透き通った瞳が可愛い山下…
俺がやっと振り返ったことに呆気に取られているのも見てすぐに分かった。
それでも、お互い隠したい事がバレてはいけない…なら、俺は平然を装うだけ…ペースを崩さないように俺も俺で必死だったんだ。
「…待った罰だ…」
「な、なな、なんですかぁ…?」
「…お前の自転車の荷台に俺を乗せろ…」
山下を直視しているのは、正直辛い…
αの俺が俺ではなくなってしまう…
でも、ちゃんと話がしたい…
なら、顔を見ないようにすればいい。
荷台に乗せてもらって、どこか静かなところに連れて行って欲しい。
そこで、お前にだけ俺の秘密を知って欲しかったから…
山下も山下で俺が振り向いた事に驚きが隠せないのか、アワアワと言葉が繋がらない様子だ。
「…ほら、早く」
「わ、分かった…ちょっと待って…!」
山下は慌てながらも自転車を乗れるところまで運んでいってくれて、山下がサドルに跨った事を確認した俺は、そっと荷台へ横向きに座り込んだんだ。
横向きなら、山下の顔も見ずに景色を眺められるから…
「…こ、漕いでいい…?」
「…ああ」
俺の掛け声と共に、山下は小さな身体でペダルを必死に漕ぎ始めてくれたんだ。
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