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お前のものは俺のもの
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まだまだ春の暖かい風が、俺の頬を優しく包み込んでくれる。
こんなに心地の良い風は、いつぶりだろうか…
今、俺の隣には俺のために一生懸命ペダルを漕ぐ山下の姿がある。
小さいくせに、逞しくて大きな背中だ…
俺なんかよりずっとずっと大きい…
ただ、山下は前を向いているからこの時どんな表情をしていたのか、どんなことを考えていたのか…俺には知る由もなかった。
それでも俺の横には、俺が振り向いても何一つ変わらない山下がいる。
なんでだろうな…山下に触れている訳じゃないのに、春の暖かさよりも心が温かい…
俺はお前と友達になりたいよ…
お前に俺の事を知って欲しい…
いや、聞いて欲しいんだ…
そして、お前の気持ちもちゃんと知りたい…
そんな思いの俺は、少し自転車で進んだ頃、山下にアクションを起こした。
「…あっ…」
「山際くん、どうしたの?」
「まだ時間あるのか?」
「うん、この後の予定は何も無いから大丈夫だよ?」
「なら…あそこの河川敷に寄ってくれないか?」
俺は、視界から見て取れる近くの河川敷に寄って欲しいと、山下にお願いしてみたんだ。
ゆっくりとお前と話がしたい…
でも、断られたら…いや、もし断られても仕方ないよな…
俺、ずっとお前に背を向け続けて、悪い事ばかりしてきてたからさ…
そんな思いとは裏腹に、山下は迷う事もなく、俺のお願いを優しく叶えてくれたんだ。
──河川敷に着き、山下は自転車を停めてくれて、俺たちは河川敷の草っぱらにそっと腰を添えた。
春風が俺の身体を包み込み、草の緑々しい香りが気持ちいい程に嗅覚を幸せにさせる。
そんな俺の横には、可愛らしくちょこんと座る山下の姿があって…やっぱり俺は、山下のことを直視出来なくて…
山下と話したいと思っていたのに、どう切り出せばいいんだ…?
はぁ…やっぱり俺はちっちぇえな…
お互い、話を切り出せずに時だけが過ぎていったけれど、そんな時に勇気を出してくれるのが小さくて、大きい山下なんだ。
「山際くん?」
「…なんだ?」
「僕、山下 裕翔!まぁあれだけしつこく声掛けていたから、知ってると思うけどさっ!」
「…ああ、言われなくても知ってる」
お前の名前は知ってるさ…
死んでもぜってぇ忘れないさ…
せっかく話を切り出してくれたのに、素っ気なくしちまったけれど、そのおかげで俺は次の一言を発することが出来たんだよ?
「なぁ、山下?どうしてそこまで俺に、関わろうとしてくれるんだ?」
自分の事を知ってもらった瞬間、何かが壊れてしまう事が怖かった俺は、ちゃんと山下の真意を確かめておきたかった。
だけど…この後、山下から紡がれた真意に、俺の思いが過剰に反応する事になるなんて、思ってもみなかったんだ…
こんなに心地の良い風は、いつぶりだろうか…
今、俺の隣には俺のために一生懸命ペダルを漕ぐ山下の姿がある。
小さいくせに、逞しくて大きな背中だ…
俺なんかよりずっとずっと大きい…
ただ、山下は前を向いているからこの時どんな表情をしていたのか、どんなことを考えていたのか…俺には知る由もなかった。
それでも俺の横には、俺が振り向いても何一つ変わらない山下がいる。
なんでだろうな…山下に触れている訳じゃないのに、春の暖かさよりも心が温かい…
俺はお前と友達になりたいよ…
お前に俺の事を知って欲しい…
いや、聞いて欲しいんだ…
そして、お前の気持ちもちゃんと知りたい…
そんな思いの俺は、少し自転車で進んだ頃、山下にアクションを起こした。
「…あっ…」
「山際くん、どうしたの?」
「まだ時間あるのか?」
「うん、この後の予定は何も無いから大丈夫だよ?」
「なら…あそこの河川敷に寄ってくれないか?」
俺は、視界から見て取れる近くの河川敷に寄って欲しいと、山下にお願いしてみたんだ。
ゆっくりとお前と話がしたい…
でも、断られたら…いや、もし断られても仕方ないよな…
俺、ずっとお前に背を向け続けて、悪い事ばかりしてきてたからさ…
そんな思いとは裏腹に、山下は迷う事もなく、俺のお願いを優しく叶えてくれたんだ。
──河川敷に着き、山下は自転車を停めてくれて、俺たちは河川敷の草っぱらにそっと腰を添えた。
春風が俺の身体を包み込み、草の緑々しい香りが気持ちいい程に嗅覚を幸せにさせる。
そんな俺の横には、可愛らしくちょこんと座る山下の姿があって…やっぱり俺は、山下のことを直視出来なくて…
山下と話したいと思っていたのに、どう切り出せばいいんだ…?
はぁ…やっぱり俺はちっちぇえな…
お互い、話を切り出せずに時だけが過ぎていったけれど、そんな時に勇気を出してくれるのが小さくて、大きい山下なんだ。
「山際くん?」
「…なんだ?」
「僕、山下 裕翔!まぁあれだけしつこく声掛けていたから、知ってると思うけどさっ!」
「…ああ、言われなくても知ってる」
お前の名前は知ってるさ…
死んでもぜってぇ忘れないさ…
せっかく話を切り出してくれたのに、素っ気なくしちまったけれど、そのおかげで俺は次の一言を発することが出来たんだよ?
「なぁ、山下?どうしてそこまで俺に、関わろうとしてくれるんだ?」
自分の事を知ってもらった瞬間、何かが壊れてしまう事が怖かった俺は、ちゃんと山下の真意を確かめておきたかった。
だけど…この後、山下から紡がれた真意に、俺の思いが過剰に反応する事になるなんて、思ってもみなかったんだ…
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