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素直な気持ちは夢の中で…

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 ──キャンプ場には既に何棟もテントが張り巡らされていて、各自三人一組で寝泊まりする事になっていたんだ。

 もちろん、男女別々…そこに関しては、駿も少し残念がっていた。

 当たり前だけど彼女との一夜は、お預けになるようだね…?

 それでも三人一組ならば僕と大和、そして駿の三人だ。もうこの組み合わせだけは、誰にも譲れない。

 僕たちは、寝泊まりするテントに荷物を置いて、みんなで食べる夜ご飯の準備へ取り掛かる事にしたんだ。
  
 ◇ ◇

 みんなで作る夜ご飯は【具沢山のカレーライス】だ。

 カレールーを作る担当や火を起こす担当、飯盒はんごうを使用して大量のご飯を炊く担当。

 それぞれのクラスで役割分担をし、僕たち三人はカレールーを作る担当を選んでいたんだ。

 数十人分のカレーを作るとなると、それなりの労力も必要だ。

 よしっやるぞっ!と意気込む僕の後ろで、ソワソワしている大和と駿。

 あれ…もしや…?と思った僕の考えはこの後、見事に的中することになったんだ。

 ──僕たち三人は野菜を切る役割を与えられ、色んな食材の下ごしらえに取り掛かった。

「僕どんどん切っていくから、駿~!そこのピーラー使って人参の皮、剥いてくれる?」

「ぴ、ぴーらぁー…?」

 スポーツ一筋の駿にとって、料理は無縁中の無縁だったらしい。

 あたふたしながら「おっ!これかっ!」とピーラーを手に取り、何とも危なっかしい動きで人参の皮を剥いていく…

 頼むから、自分の手を剥かないでね…?

「大和は、駿が剥いてくれた人参を乱切りにしてね?」

「…ら、乱切り………ああっ!乱切りなっ!」

 分かったように僕へ返した大和だけれど…ねぇ、大和…それは輪切りだよ…?

 何でも出来そうに見える大和でも、出来ないことがあった…そう、その一つが料理らしい。

 そんな二人に挟まれながら手取り足取り教えつつ、僕は手際よく下ごしらえを進めていく。

 トントントントン…っ!

「へぇ…裕翔、お前料理上手なんだな」

「えへへっ!一人暮らしで自炊してるから、自然に身についちゃったのかも?」

 大和は僕の包丁捌きを見て、素直に褒めてくれたんだ。

 どんな時でも褒められることはやっぱり嬉しいものだ。それが僕の好きな人から褒められたなら尚更にね…?

「だから、裕翔が作ってくれた焼きそばパンもあんなに美味しかったんだなっ!」

「なぁにっ!?焼きそばパンだと!?」

 食べ物の話になると途端に駿の耳が立ち上がり、僕たちの顔をまじまじと見つめてきたんだ。

「ちょ!大和っ!」

「ははっ、めちゃくちゃ美味かった~」

「裕翔、なんだよ!なんで俺の分はねぇんだよっ!!」

 もう…大和のバカぁ…
「今度はちゃんと駿の分も作ってくるからね?」と僕はどこか慌てながらも駿を宥めていると…

「ははっ!料理が上手なヤツを貰えた大和は幸せもんだなぁッ!!」

 なんて、僕たちをいつものように茶化してくる駿。

「だから!バカ言うなっ!」

 そして、これだけハモれる僕と大和って…

 いつも通りゲラゲラと駿は笑っているけど、僕たちって本当はお似合い…なのかな?

 これからも好きだなんて…
 大和に伝えられないだろうに…

 そんな事を思いながら、僕はその後も二人へ手取り足取り教えながら、下ごしらえの準備を続けていったんだ。
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