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霧ちゃん→霧聖羅

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再出発

ピエリスとクリナム

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「いんやぁ~! ほんっと、助かったわ~っ」


 兎耳兄さんとにぃに・・・、それからミントの活躍であっという間に魔獣の群れは片付いた。十二頭はほとんど無傷で捕獲して、十八頭を仕留めることに成功したんだから大したもんだ。
捕獲したのは全部ミントで、仕留めたのは兎耳兄さんとミントが六頭ずつに、にぃに・・・と猫耳兄さんが各三頭。
わたしは、な~んにも、していませんっ(ドヤッ)。
……にぃに・・・に、手を出すなと言われたので。

 嬉々として切り込んでいた兎耳兄さんは、結構な怪我もしていたのにニコニコ笑顔でご機嫌なご様子。――というのも、彼らを襲っていたフォレチェルは飼いならせば騎獣として優秀だから。
どうやら十二頭も捕まえてれば、しばらく遊んで暮らせるらしい。
捕まえたフォレチェルに関しては、兎耳兄さんに四頭、自分の騎獣を欲しがってたにぃに・・・に一頭。残りの七頭をわたしがもらうことにした。
猫耳兄さんは従魔スキルを持ってなくて、そのかわりに習得している騎乗スキルだと騎獣を一頭しか使役できない。なんか、何もしてないわたしだけが得してる感じでちょっぴり後ろめたいかも。
 とはいえこれで、人里についたときの活動資金が手に入るから、わたしもとってもご機嫌だ。なんせ、生け捕り分を渡すかわりに、十八頭分のお肉も手に入ったしっ!
今夜は、鹿ステーキだっ!!

 そんなわけで、只今、水の精霊さんにお願いして、大絶賛フォレチェルの血抜き中。


「そうそう、じこしょーかいしないとな。俺はピエリス。旅の道中で魔獣を手懐けて売り払って日銭を稼いでる」

「……もしかして、戦闘中に従属させてた?」


 ちょっと、尖った声でにぃに・・・が尋ねると、兎耳――ピエリスさんはご機嫌笑顔で頷いた。


「うん。頭数を減らすのは大事っしょっ」


 どうやら彼は、戦いながら相手を従属させていたらしい。

――たしかに、頭数は減らしときたかったよね。

 なにせ、フォレチェルの群れは三十頭近い大所帯だったのだ。全部を相手になんて、普通ならとても無理だろう。ミントが半数以上を相手にしてくれたにしても、十二頭を三人だけで仕留められたというのがむしろ不思議なくらいだし。

――そもそも、戦闘中に従属させるのは難しいよね。

 戦闘中に従属させるには、魔獣に対して力を示して見せる必要がある。
その場合に必要なのは『戦闘技術』。わたしには、とてもじゃないが無理な芸当だ。精霊さんに頼めば殺すのだけは可能だけど、死んだら従属させらんない。


「そりゃ、頭数が減れば楽になるけど――狙いを定めてた相手が消えて、何度もびっくりさせられたこっちの身にもなってよ」


 内心、ピエリスさんの力量に舌を巻くわたしと違って、にぃに・・・はご不満顔。きっと、戦闘中に従属させることの凄さが理解できないから――いや、違うな。自分の獲物を横取りされた気分なだけだ、きっと。


「ま、ソレはソレとして、こっちの無愛想なのがクリナムな」

「クリナムだ。薬師をしている」


 兎耳兄さんこと、ピエリスさんはニコニコしてて愛想がいいけど、わたし達と猫耳同族のクリナムさんは無愛想なタイプらしい。あんまり人当たりがよいとはいえないから、薬師さんと言っても薬を作るだけの人なのかも。それなら、対人能力が低くても問題ないだろうし。


「……グラジオラス」

「フェリシアです」


 名乗られたからには仕方がないと言わんばかりの表情で名前だけを口にしたにぃに・・・に続いて、わたしも名乗る。仕事にはまだ就いていないから、言う必要はないよね……?


「俺らはちょうどさ、母国に帰るとこだったんだよねっ」


 なんか、やたらとクリナムさんがわたし達を熱心に見つめているのが気になって、良い子でお座りしているミントの影のそっと隠れる。こう――害意がある感じじゃないんだけど、じっと見られるのはなんとも落ち着かない。
にぃに・・・や魔神様達以外との接触がなかったから、余計かも。


「ほら、国同士をつなぐ道にはさ、小神殿のある宿場があちこちに点在してるっしょ?」

「はぁ……」


――そうなんだ?

 こういうことは情報神様が詳しそうだけど、神々は人の営みに関連することを口にしたがらない。だから、わたし達が知っているのは、村に居た大人たちや行商のおじさんから聞けた話だけだ。
狭い世界のことしか知らないし、ソレでなんの問題もなかったんだけど――からこんな話も聞いたことがなかった。にぃに・・・はどうでも良さそうな顔をしているけれど、コレって、結構大事な情報だよね?
旅をしている人間だったら、当然知ってるはずの常識なんじゃない?


「ホントなら、このあたりは好戦的な魔獣が出づらいはずってことで休憩しようと道をちょっぴり外れて森の中に入ったとたん、こいつらと鉢合わせしちゃったってわけなんだけどさっ」

「なるほど?」


 言われて、彼が指差す方向に視線を向けてみると、確かに道らしきものの姿が見える。
情報神様が描いてくれた地図を見て、国境が山脈に挟まれた場所で周囲に生えてる木が少なそうだと思ってはいたけど、道が通っているだなんてことに思い至らなかった。
考えてみれば、南に向かうにはここを通るか川を下るかしかない。道がない方が不自然だ。

――コレは、なんとかしないとマズいかも。

 無意識に胸元のペンダント簡易神殿を握りしめると、『彼らに弟子入してみるのも一つの手だね』という、魔神様のちょっぴり疲れた声が頭に響いた。
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