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トレルリ神民国~『普通』を体験してみよう~
命大事に、歩くな危険
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ベアイーターは強くって、同ランクの従魔であるミントでも苦戦した。
なんとか倒せて、ピエリスさんは解放されたけど。
巻き付かれて締め上げられた体はグニャグニャと変な方向に曲がってる。
顔色だって、すごく悪い。
――ウソ……
このままでは死んでしまうのだと分かったけれど、信じたくなくて。
地面に横たわる、ピエリスさんの頭のそばに座り込む。
「グラジオラス、フェリシア……」
クリナムさんは、震える手でピエリスさんの口元からこぼれた血を拭い取り、わたし達の名を呼んで――そのまま何度も口を開けたり閉めたり。
――助け、られないんだ。
ペッタリと力なく伏せられた、クリナムさんの三角お耳が『無理だ』と呟く。
「ムリなんだね、クリナムさん」
「~っ! 大丈夫だよね、クリナムっ!?」
にぃにの悲鳴混じりの問いに、首を振るクリナムさんは、とてもとても小さく見える。
「ウソだっ!」
「――君達が無事だったんだ。ピエリスも、満足だろう」
否定の声に首を振った彼の目からボロボロと涙があふれて、地面を濡らす。
クリナムさんは、お薬をつくる人。
でも、そのお薬は基本的に病気の治療や症状緩和が目的だ。キズぐすりだってあるけれど、今のピエリスさんの状態で効果があるとは思えない。
――なら、魔法は?
わたしと一緒に、ピエリスさんを覗き込んでいた治癒の精霊さんに視線を向けると、精霊さんは必死に腕を動かして自分の意志を伝えてこようとしてる。
わたしを指差し、大きくバッテン。
――わたしには治せないってこと?
次に、精霊さんは自分を指差すと、両手で三角を形作る。
――……条件付きなら、可能?
それから、大きく大きく両手を広げてわたしの周りをすごい勢いで回り始めた。
――……?
大きい、わたし?
大きくなっても、わたしは、わたし。
今のわたしに出来ないことが出来るようになってはいるかもしれないけれど、今のわたしに出来ることじゃなきゃ、ピエリスさんは助からない。
――わたしじゃ、なければ?
気付いたら、勝手に口が動いてた。
「……魔神様、魔神様。あなたの寵児が望みます。我が身を仮の器とし、この地に降り立たんことを。我が望みは、情報神様が眷属、諜報神様の愛し子の輪廻の輪への帰還を阻み、現し世への戻すことを望むものなり」
『ちょっ……! フェリシアちゃん、それは力技すぎ……っ!』
魔神様の慌てる声を最後に、頬に触れる風の感触も、体に感じる重さも全てが消え失せわたしはフワリと宙に浮く。
『情報神っ! フェリシアちゃんの確保お願いっ!!』
『ほい、りょーかいっ』
情報神様の声が耳元で聞こえた瞬間、体に重さが戻ってきた。
『寵児ちゃんは、しばらく神界で俺とお勉強しようか』
『え、でも……』
『現し世の問題は、俺の姫さんが解決してくれる』
いつの間にやら情報神様に抱え上げられてて、なんだかイヤとも言いづらい状況だ。
後ろ髪ひかれつつその場を離れて連れて行かれた神界では、技術神様がせっせとナニかを編んでいる。
「いらっしゃい、フェリシアちゃん」
「技術神様っ」
抱きつきたくってワタワタと手を伸ばしたけど、情報神様が離してくれない。意地悪しないでよと見上げてみたら、笑ってない笑顔の情報神様と目が合った。
――なんか、怒ってる……?
そう感じたのは間違いじゃなくて、そのあとこってり絞られた。
情報神様いわく、わたしが口走ったお祈りは、我が身を犠牲に理を外れた存在を滅するために使われるものの変形版らしい。祝詞としては成り立ってないのに、魔神様がしっかり引っ張り出された挙げ句、わたしの魂は体と完全に分離しちゃってて今は戻ることが出来ないと聞かされて青くなる。
「わたし、ソコまで考えてなかった……」
「でしょうねぇ」
いや、だって。
ピエリスさんが助かっても、わたしが死んだらダメでしょう。
結局、にぃにもクリナムさんも号泣だ。
「諜報神の愛し子を助けたかっただけなのは分かるけど、ああいう時は先に念話で聞きゃいいんだよ。アドバイスすっから」
「今、フェリシアちゃんの魂の尾の代用品を編んでるから、コレが終わったら戻れるわよ」
どうやら今現在も、情報神様が抱きかかえてないとどこかに飛んでっちゃう状態だと言われ、慌てて首にしがみつく。まだまだ、いっぱいやりたいことがあるし、そもそも死ぬのには早すぎると思いますっ!
「実際問題、わざと祝詞として成立してない祈りにも応えられるようにしてんだけど……どうしたもんかねぇ、技術神?」
「現状維持でいいでしょ」
「そぉ?」
「ただ、そうねぇ……使っちゃいけない言葉を教えておいたほうがいいかも」
そして教えてくれたのは、さっき使ってしまった中では『我が身を仮の器とし、この地に降り立たんことを』っていう部分。この言葉は、神々を現し世に呼ぶかわりに、自分の体を差し上げますって意味になっちゃうらしい。
言葉回しが違くても、同じような意味に受け取れる言葉もNGだ。
むしろ、その部分を抜かしたらなんの意味もないのでは? と、思ったけれど、案外そうでもないっぽく。必死の思いがこもっていれば、加護を授けた相手の声は神々に聞こえるそうだ。
「んでもって、聞こえた声に応えたものが俗に言う『神託』ってやつね」
「なるほど……」
それから、今いるトレルリ神民国というのが最近できたばっかりの国で、創世神殿から追い出された時に逃げそびれた高ランクの魔獣が、あちこちに仮死状態で眠っているということを教わった。
魔力が飛び抜けて多い高ランクの従魔や人間が近づくと、仮死状態から醒めて襲ってくるらしい。
「街道がある場所ならともかく、フェリシアちゃんみたいな子が森の中をうろつくのは危険よ」
と技術神様に言われて思い出したんだけど、わたし、魔力はSSSになってたっけ……
命大事に、歩くな危険、森の中。
これはもう、地方都市メローニにいる間、わたしは露店で遊んでいるのがイチバンってことだね。
なんとか倒せて、ピエリスさんは解放されたけど。
巻き付かれて締め上げられた体はグニャグニャと変な方向に曲がってる。
顔色だって、すごく悪い。
――ウソ……
このままでは死んでしまうのだと分かったけれど、信じたくなくて。
地面に横たわる、ピエリスさんの頭のそばに座り込む。
「グラジオラス、フェリシア……」
クリナムさんは、震える手でピエリスさんの口元からこぼれた血を拭い取り、わたし達の名を呼んで――そのまま何度も口を開けたり閉めたり。
――助け、られないんだ。
ペッタリと力なく伏せられた、クリナムさんの三角お耳が『無理だ』と呟く。
「ムリなんだね、クリナムさん」
「~っ! 大丈夫だよね、クリナムっ!?」
にぃにの悲鳴混じりの問いに、首を振るクリナムさんは、とてもとても小さく見える。
「ウソだっ!」
「――君達が無事だったんだ。ピエリスも、満足だろう」
否定の声に首を振った彼の目からボロボロと涙があふれて、地面を濡らす。
クリナムさんは、お薬をつくる人。
でも、そのお薬は基本的に病気の治療や症状緩和が目的だ。キズぐすりだってあるけれど、今のピエリスさんの状態で効果があるとは思えない。
――なら、魔法は?
わたしと一緒に、ピエリスさんを覗き込んでいた治癒の精霊さんに視線を向けると、精霊さんは必死に腕を動かして自分の意志を伝えてこようとしてる。
わたしを指差し、大きくバッテン。
――わたしには治せないってこと?
次に、精霊さんは自分を指差すと、両手で三角を形作る。
――……条件付きなら、可能?
それから、大きく大きく両手を広げてわたしの周りをすごい勢いで回り始めた。
――……?
大きい、わたし?
大きくなっても、わたしは、わたし。
今のわたしに出来ないことが出来るようになってはいるかもしれないけれど、今のわたしに出来ることじゃなきゃ、ピエリスさんは助からない。
――わたしじゃ、なければ?
気付いたら、勝手に口が動いてた。
「……魔神様、魔神様。あなたの寵児が望みます。我が身を仮の器とし、この地に降り立たんことを。我が望みは、情報神様が眷属、諜報神様の愛し子の輪廻の輪への帰還を阻み、現し世への戻すことを望むものなり」
『ちょっ……! フェリシアちゃん、それは力技すぎ……っ!』
魔神様の慌てる声を最後に、頬に触れる風の感触も、体に感じる重さも全てが消え失せわたしはフワリと宙に浮く。
『情報神っ! フェリシアちゃんの確保お願いっ!!』
『ほい、りょーかいっ』
情報神様の声が耳元で聞こえた瞬間、体に重さが戻ってきた。
『寵児ちゃんは、しばらく神界で俺とお勉強しようか』
『え、でも……』
『現し世の問題は、俺の姫さんが解決してくれる』
いつの間にやら情報神様に抱え上げられてて、なんだかイヤとも言いづらい状況だ。
後ろ髪ひかれつつその場を離れて連れて行かれた神界では、技術神様がせっせとナニかを編んでいる。
「いらっしゃい、フェリシアちゃん」
「技術神様っ」
抱きつきたくってワタワタと手を伸ばしたけど、情報神様が離してくれない。意地悪しないでよと見上げてみたら、笑ってない笑顔の情報神様と目が合った。
――なんか、怒ってる……?
そう感じたのは間違いじゃなくて、そのあとこってり絞られた。
情報神様いわく、わたしが口走ったお祈りは、我が身を犠牲に理を外れた存在を滅するために使われるものの変形版らしい。祝詞としては成り立ってないのに、魔神様がしっかり引っ張り出された挙げ句、わたしの魂は体と完全に分離しちゃってて今は戻ることが出来ないと聞かされて青くなる。
「わたし、ソコまで考えてなかった……」
「でしょうねぇ」
いや、だって。
ピエリスさんが助かっても、わたしが死んだらダメでしょう。
結局、にぃにもクリナムさんも号泣だ。
「諜報神の愛し子を助けたかっただけなのは分かるけど、ああいう時は先に念話で聞きゃいいんだよ。アドバイスすっから」
「今、フェリシアちゃんの魂の尾の代用品を編んでるから、コレが終わったら戻れるわよ」
どうやら今現在も、情報神様が抱きかかえてないとどこかに飛んでっちゃう状態だと言われ、慌てて首にしがみつく。まだまだ、いっぱいやりたいことがあるし、そもそも死ぬのには早すぎると思いますっ!
「実際問題、わざと祝詞として成立してない祈りにも応えられるようにしてんだけど……どうしたもんかねぇ、技術神?」
「現状維持でいいでしょ」
「そぉ?」
「ただ、そうねぇ……使っちゃいけない言葉を教えておいたほうがいいかも」
そして教えてくれたのは、さっき使ってしまった中では『我が身を仮の器とし、この地に降り立たんことを』っていう部分。この言葉は、神々を現し世に呼ぶかわりに、自分の体を差し上げますって意味になっちゃうらしい。
言葉回しが違くても、同じような意味に受け取れる言葉もNGだ。
むしろ、その部分を抜かしたらなんの意味もないのでは? と、思ったけれど、案外そうでもないっぽく。必死の思いがこもっていれば、加護を授けた相手の声は神々に聞こえるそうだ。
「んでもって、聞こえた声に応えたものが俗に言う『神託』ってやつね」
「なるほど……」
それから、今いるトレルリ神民国というのが最近できたばっかりの国で、創世神殿から追い出された時に逃げそびれた高ランクの魔獣が、あちこちに仮死状態で眠っているということを教わった。
魔力が飛び抜けて多い高ランクの従魔や人間が近づくと、仮死状態から醒めて襲ってくるらしい。
「街道がある場所ならともかく、フェリシアちゃんみたいな子が森の中をうろつくのは危険よ」
と技術神様に言われて思い出したんだけど、わたし、魔力はSSSになってたっけ……
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