隠していない隠し部屋

jun

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エルザの心痛

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あの宴会の後からシルビオが全く近寄らなくなった。
朝食も夕食も一緒に食べる事がなくなった。
見かける事もない。
ジョバンニに聞いても何も言わない。
キャルティさんも何か考え込んでいる。

それともやっぱり王太子と私のバトルを見たからだろうか・・・




王太子の2度目の訪問の日の朝、ヒーナス家ではお父様とお義父様、ダニエル様、シルビオが王太子の到着を玄関で待っていた。
もちろん私も。

時間通りやってきた王太子。

あの胡散臭い笑顔で、

「朝早くからみんな、済まないね。」
と悪気なくやってきた。
そして、私を見る。あの笑っていない目で。

「侯爵夫人、朝から申し訳ないね、忙しかっただろう?」

「いえ、前日から準備をしておりましたから。」

「じゃあ、キャルティ嬢に会わせてもらえるかい?」

「その前に私と話しては頂けないでしょうか?」

私の言葉にみんながこっちを見た。
聞いてないよ~って目で。

「それはどうしてだろうか?」

「王太子殿下が、「クリスハート。」」

「・・・私達夫婦の問題でもあるからです。ないとは言わないですよね?だってキャルティさんのお腹の子供が絶対おう・・クリスハート様のお子と決まった訳ではないのですから。」

「長くなりそうだから座って話そうか、侯爵夫人。」

「はい。」

そうして、高位の方を迎える時に使う応接室に案内した。

王太子を上座に座らせ、私、そしてシルビオも引っ張ってきて、王太子の正面に座った。
お父様達は離れたソファに座ってこちらの様子を見ていた。

ジョバンニがキャルティさんを連れてきたが、場の空気を読み、キャルティさんをお父様達の側に座らせ、パールがお茶を持ってきて下がった後、王太子が口を開いた。

「それで夫人からの話しとは?」

「おう…クリスハート様、今から私と腹を割って話して頂きたいのですが、宜しいですか?不敬罪で私、捕まってしまうかもしれませんが、どうしても言っておきたいのです。」

「ほぉ~捕まる覚悟があるの?」

「はい。捕まえて下さって構いません。

私は、とてもクリスハート様が帰ってから、ずっと何かモヤモヤしておりました。

先日、クリスハート様のお話しを聞いてからずっと考えておりました。
何故、クリスハート様の自分勝手な行いに従わなければならないのかと。
何故、女性だけ割りを食わなければならないのか理解出来なかったのです。
それについてクリスハート様のお話をじっくり聞きたいと思いました。
だって、ヒーナス侯爵家の後継者かもしれない子なのですよ?
その子をない者とするのは、おかしいのではないかと。
クリスハート様が孕ませた女性は、本来ならちゃんとした結婚を出来た人達です。
その将来を潰したクリスハート様のお話しをきっちり聞きたいと思うのは間違っている事でしょうか?

ひょっとしてもう不敬罪ですか?」

「この場で話す事に対して、不敬罪にする事はしないよ。」

「では、遠慮なく。

先ず、最初は私達夫婦の問題だったのです。
子供が出来た、なら離婚する。
たったそれだけの話しだったのです。
そこに割って入ってきたのがクリスハート様です。
貴方が・・・・クリスハート様が考え無しにキャルティさんとヤってしまったから、私はこの2人を責める事も出来なくなりました。
濃厚なキスを目撃したのに、逢引きしているのを見たのに、その浮気相手の面倒を見る事にまでなってしまった。
私の傷付いた思いはクリスハート様の出現で表に出せなくなりました。
2人も私にした裏切りへの謝罪を後回しにするしかなかった。
そして、キャルティさんは薬を飲むと決心しました。
でも、2人が私にした裏切りの罰は何処に行ってしまったんでしょう?
子供がいなくなれば元に戻るとでも言うのでしょうか?
クリスハート様は子供さえいなくなれば終わりなんでしょうが、私はそうではありません。2人に責任を取ってもらいたいのです。
浮気をした、不倫をしたと自覚させたいのです。
その行為がどれほど酷い過ちだったのか理解させたいのです。
その行為の結果、大事なものを失くすのだと分からせたい。
怒鳴る事も出来なかった。
泣き喚く事も出来なかった。
罵る事も、引っ叩く事も出来なかった。
貴方が急に出てきたから!
この屋敷にも2度と戻る気なんかなかった。
シルビオの顔も見たくなんかなかった。
だって好きだから!
2度と他の人とキスしてる所も、
あの部屋で抱き合ってる所を想像するのも嫌だったから!

貴方は弟に王位を譲りたかっただけなのかもしれない。
でも貴方は何の関係もない人達を巻き込んだ、最悪な形で!
勝手にやればいいのに、一番酷いやり方で他人を巻き込んだ。
それを誰も咎めない。
それが何より許せない!
私は貴方を許さない!」

一気に話した私はボロボロ涙を流しながら話し終えた。

誰も一言も話さない。

静まる空間に、私の嗚咽だけが響く。

「済まなかった。」

そう言ったのは王太子。

「貴方が言った通りだ。最悪で最低なのは私だ。
どれだけ謝っても許されない事をしたのは私だ。済まなかった。
どうか涙を止めて欲しい。」

私の横にいるシルビオが私の涙を拭いてくれた。
グズグズ、聞こえるからシルビオも泣いてるのだろう。

「夫人が納得いく事はなんだ?」

「シルビオには言いましたが、責任を取ってキャルティさんと結婚しろと言いました。
どんなに私を愛していても、それが2人がした事の責任の取り方だと。」

「そうか…」

それから王太子は、

「申し訳なかった。キャルティ嬢にも謝罪したい。
少しこの事を持ち帰って、よく考えたいと思う。
夫人、本当に申し訳なかった。」

それだけ言って宰相と帰って行った。

お父様が、
「エルザ、一緒に帰るか?」
と聞いてきたから、首を横に振った。

まだ私は侯爵夫人だから。















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