隠していない隠し部屋

jun

文字の大きさ
20 / 56

エルザの心痛



あの宴会の後からシルビオが全く近寄らなくなった。
朝食も夕食も一緒に食べる事がなくなった。
見かける事もない。
ジョバンニに聞いても何も言わない。
キャルティさんも何か考え込んでいる。

それともやっぱり王太子と私のバトルを見たからだろうか・・・




王太子の2度目の訪問の日の朝、ヒーナス家ではお父様とお義父様、ダニエル様、シルビオが王太子の到着を玄関で待っていた。
もちろん私も。

時間通りやってきた王太子。

あの胡散臭い笑顔で、

「朝早くからみんな、済まないね。」
と悪気なくやってきた。
そして、私を見る。あの笑っていない目で。

「侯爵夫人、朝から申し訳ないね、忙しかっただろう?」

「いえ、前日から準備をしておりましたから。」

「じゃあ、キャルティ嬢に会わせてもらえるかい?」

「その前に私と話しては頂けないでしょうか?」

私の言葉にみんながこっちを見た。
聞いてないよ~って目で。

「それはどうしてだろうか?」

「王太子殿下が、「クリスハート。」」

「・・・私達夫婦の問題でもあるからです。ないとは言わないですよね?だってキャルティさんのお腹の子供が絶対おう・・クリスハート様のお子と決まった訳ではないのですから。」

「長くなりそうだから座って話そうか、侯爵夫人。」

「はい。」

そうして、高位の方を迎える時に使う応接室に案内した。

王太子を上座に座らせ、私、そしてシルビオも引っ張ってきて、王太子の正面に座った。
お父様達は離れたソファに座ってこちらの様子を見ていた。

ジョバンニがキャルティさんを連れてきたが、場の空気を読み、キャルティさんをお父様達の側に座らせ、パールがお茶を持ってきて下がった後、王太子が口を開いた。

「それで夫人からの話しとは?」

「おう…クリスハート様、今から私と腹を割って話して頂きたいのですが、宜しいですか?不敬罪で私、捕まってしまうかもしれませんが、どうしても言っておきたいのです。」

「ほぉ~捕まる覚悟があるの?」

「はい。捕まえて下さって構いません。

私は、とてもクリスハート様が帰ってから、ずっと何かモヤモヤしておりました。

先日、クリスハート様のお話しを聞いてからずっと考えておりました。
何故、クリスハート様の自分勝手な行いに従わなければならないのかと。
何故、女性だけ割りを食わなければならないのか理解出来なかったのです。
それについてクリスハート様のお話をじっくり聞きたいと思いました。
だって、ヒーナス侯爵家の後継者かもしれない子なのですよ?
その子をない者とするのは、おかしいのではないかと。
クリスハート様が孕ませた女性は、本来ならちゃんとした結婚を出来た人達です。
その将来を潰したクリスハート様のお話しをきっちり聞きたいと思うのは間違っている事でしょうか?

ひょっとしてもう不敬罪ですか?」

「この場で話す事に対して、不敬罪にする事はしないよ。」

「では、遠慮なく。

先ず、最初は私達夫婦の問題だったのです。
子供が出来た、なら離婚する。
たったそれだけの話しだったのです。
そこに割って入ってきたのがクリスハート様です。
貴方が・・・・クリスハート様が考え無しにキャルティさんとヤってしまったから、私はこの2人を責める事も出来なくなりました。
濃厚なキスを目撃したのに、逢引きしているのを見たのに、その浮気相手の面倒を見る事にまでなってしまった。
私の傷付いた思いはクリスハート様の出現で表に出せなくなりました。
2人も私にした裏切りへの謝罪を後回しにするしかなかった。
そして、キャルティさんは薬を飲むと決心しました。
でも、2人が私にした裏切りの罰は何処に行ってしまったんでしょう?
子供がいなくなれば元に戻るとでも言うのでしょうか?
クリスハート様は子供さえいなくなれば終わりなんでしょうが、私はそうではありません。2人に責任を取ってもらいたいのです。
浮気をした、不倫をしたと自覚させたいのです。
その行為がどれほど酷い過ちだったのか理解させたいのです。
その行為の結果、大事なものを失くすのだと分からせたい。
怒鳴る事も出来なかった。
泣き喚く事も出来なかった。
罵る事も、引っ叩く事も出来なかった。
貴方が急に出てきたから!
この屋敷にも2度と戻る気なんかなかった。
シルビオの顔も見たくなんかなかった。
だって好きだから!
2度と他の人とキスしてる所も、
あの部屋で抱き合ってる所を想像するのも嫌だったから!

貴方は弟に王位を譲りたかっただけなのかもしれない。
でも貴方は何の関係もない人達を巻き込んだ、最悪な形で!
勝手にやればいいのに、一番酷いやり方で他人を巻き込んだ。
それを誰も咎めない。
それが何より許せない!
私は貴方を許さない!」

一気に話した私はボロボロ涙を流しながら話し終えた。

誰も一言も話さない。

静まる空間に、私の嗚咽だけが響く。

「済まなかった。」

そう言ったのは王太子。

「貴方が言った通りだ。最悪で最低なのは私だ。
どれだけ謝っても許されない事をしたのは私だ。済まなかった。
どうか涙を止めて欲しい。」

私の横にいるシルビオが私の涙を拭いてくれた。
グズグズ、聞こえるからシルビオも泣いてるのだろう。

「夫人が納得いく事はなんだ?」

「シルビオには言いましたが、責任を取ってキャルティさんと結婚しろと言いました。
どんなに私を愛していても、それが2人がした事の責任の取り方だと。」

「そうか…」

それから王太子は、

「申し訳なかった。キャルティ嬢にも謝罪したい。
少しこの事を持ち帰って、よく考えたいと思う。
夫人、本当に申し訳なかった。」

それだけ言って宰相と帰って行った。

お父様が、
「エルザ、一緒に帰るか?」
と聞いてきたから、首を横に振った。

まだ私は侯爵夫人だから。















あなたにおすすめの小説

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

彼の過ちと彼女の選択

浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。 そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。 一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

【完結済】25年目の厄災

恋愛
生まれてこの方、ずっと陽もささない地下牢に繋がれて、魔力を吸い出されている。どうやら生まれながらの罪人らしいが、自分に罪の記憶はない。 だが、明日……25歳の誕生日の朝には斬首されるのだそうだ。もう何もかもに疲れ果てた彼女に届いたのは…… 25周年記念に、サクッと思い付きで書いた短編なので、これまで以上に拙いものですが、お暇潰しにでも読んで頂けたら嬉しいです。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し

有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。 30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。 1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。 だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。 そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。 史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。 世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。 全くのフィクションですので、歴史考察はありません。 *あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。