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傷だらけのエルザ
しおりを挟むエルザが見つかったと連絡が来たのは、いなくなった次の日の昼だった。
すぐにユージン様が屋敷にエルザを運び込み、医師も連れてきてくれていた。
部屋に運び、治療してもらったが、手首の切り傷と裸足だったため、足の裏がボロボロなのと、あちこちの擦り傷くらいで大きな傷はなかった。
念の為、暴行の跡がないかも確認したが、それらしい跡はないとの事だった。
エルザは、ユージン様が指示し、捜索していた街外れの森の中にある狩猟小屋から大分離れた場所で倒れていたそうだ。
狩猟小屋の前で2人の男が弓矢で背中を射られていた。命に別状はない。
小屋から離れた場所で男が1人短剣で刺されて瀕死の状態で見つかった。
そこからかなり行った場所でエルザは血だらけで倒れていたそうだ。
「だいぶ頑張ったようだ。起きたら謝ったりしないで褒めてやって、頑張ったねって。」
と言ってユージン様は報告があるからと帰って行った。
エルザが運び込まれた時、エルザは毛布に包まれていたが、毛布から覗く足や顔の傷と血のついた顔を見た全員が真っ青になった。
でも、無事見つかったことに安心し使用人達は抱き合って泣いていた。
モリスとジョバンニも抱き合っていた。
俺は傷だらけで血まみれのエルザに釘付けになって動けなかった。
エルザの治療が終わり、メイド達が泣きながら髪や顔に付いた血を拭いていた。
俺もエルザの足や腕を拭いた。
こんなに細い腕で、男3人と戦ったエルザ。
どんなに怖かっただろう。
どんなに痛かっただろう。
強くても人を殺す覚悟で訓練なんかしてこなかっただろうに、どんなに怖かっただろうと思うと、涙が止まらなかった。
ボロボロになるまで裸足で戦い、歩き続けたんだろう…。
「エルザ…エルザ…」とひたすら名前を呼んだ。
拭き終わり、メイド達が出て行くと俺だけになった。
エルザの手を握り、頭を撫でた。
拭いたけど、まだ髪は血で固まっている。
それでもずっと撫でていた。
「シル・・ビオ・・・」
「エルザ!」
掠れた声で俺を呼んだエルザにすぐ水を飲ませた。
「ごめんね…心配、かけたね…」
「エルザ、いっぱい心配した・・・良かった・・無事で良かった・・・」
「パールは?」
「パールは眠らせられただけ。もう起きたらしいけど、まだ警備隊で休んでる。」
「良かった・・・」
「今、医者を呼んでくるから、待ってて。」
そう言って部屋を出てエルザが目を覚ました事を皆に告げた。
歓声があがり、またみんなが泣いた。
サバーナ家と騎士隊にいるパールに連絡を頼み、診察してもらっているエルザの元に戻った。
「シルビオ、酷い顔よ。大丈夫?」
「・・・・・大丈夫じゃない…みんな心配で眠れなかった…エルザが・・・死んじゃうと思った・・・」
「こっちおいで、シルビオ。」
エルザの側まで行き、椅子に座った。
「そこじゃないよ、こっち。」
「でも、エルザが休めない。」
「一緒に眠ろう。」
と言って布団をめくった。
エルザの隣りに滑り込んで抱きついた。
「痛いから強くは抱きしめないでね。」
「うん。頑張ったんだね、やっぱりエルザは凄い、大好き。」
「めちゃめちゃ頑張ったよ。シルビオ、心配してるから早く帰らないとって頑張った。」
「頑張った・・・頑張ったね・・怖かっただろうに…痛かっただろうに…」
「怖かったよ、震えた。でもやらなきゃ帰れないから頑張った。シルビオ、助けてって何回も思った。」
「助けに行けなくてごめん…ごめんね…俺も剣習う…」
「そういえば短剣刺した男が、これで終わりだと思うなって言ってた。どういう事だろう、誰が狙うんだろう、私の事なんか。」
「え⁉︎これで終わりじゃないって言ったの⁉︎」
「うん、でも逃げるのでいっぱいだったから何にも聞き出せなかった。そういえばあの人どうなったんだろう…」
「生きてるよ、瀕死だったけど。他の奴らも生きてるよ。これから取調べされると思う。」
「そっか・・・シルビオ・・眠く、なった・・・」
そういうとエルザは眠ってしまった。
これで終わらないとはどういう事だ。
なんでエルザが⁉︎
ユージン様に報告しなくちゃ…
でも、もう少しだけエルザを抱きしめていたい。
もう少しだけ・・・
そのまま2人で眠ってしまった。
起きた時、エルザも起きていた。
「シルビオ、お腹空いた。」
慌てて食事の準備をしてもらい、その間に俺は軽くシャワーを浴び、サッパリしてからエルビオに会いに行った。
エルビオはずっと泣いていたそうだ。
俺もエルザも顔を出していなかったから、ぐずっていたそうだ。
エルビオを抱っこして、エルザの所に連れて行った。
「かあ!」と呼び、「エルビオ、おいで」と言ってエルザが抱くとデザートに出していたオレンジを舐めさせていた。
もうこんな姿を見れなくなるかもしれなかったと思うと、ゾッとした。
俺も軽く食べていると、モリスとジョバンニも来た。
「エルザ!」
「義姉さん!」
と2人で抱きつきそうになるのを止めた。
「義姉さん、マジで良かった…」
そう言ってモリスが泣いた。
「ごめんね、心配かけたね。ジョバンニも、ごめんね。」
「マジで心配した…」
と唇を噛んだジョバンニは必死に泣くのを堪えていた。
エルビオをモリスが抱き、エルビオに『モ、モ』と呼ばれ、
「嘘⁉︎モって俺の事?うおー、エルビオ、もう一回、もう一回呼んで?」
ようやく皆んなが笑顔になった。
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