隠していない隠し部屋

jun

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謝罪と告白

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足の裏の傷が酷かったので、まだ立ち上がる事は出来ないが、他は何ともないので元気だ。
でも自力で移動出来ないから不便極まりない。
それにここぞとばかりにシルビオが抱っこしたがる。
トイレにも連れて行こうとするので、それだけはメイド達の面倒になった。

シルビオは今回の事が余程怖かったのと、自分の不甲斐なさに、お父様と弟のヤーコフに剣の指導を受けている。
学園で男子は剣の授業もあったので基本は出来ているが、卒業以来剣を持つ事もなかったから、体力作りからしているようだ。
ついでにジョバンニも一緒にやっている。
私も体力は落ちている。
動けるようになったら久しぶりにお父様に指導してもらいたい。
体術もちゃんと習わなければ、また何があるか分からないから。

ようやく歩けるようになったのは1カ月後だった。
立つだけならば2週間程だったが、長時間はダメだし痛みも少しあった。
だから暇をみては立つリハビリと、足の筋肉が落ちないように試行錯誤しながら横になったままの運動を続けていた。

歩けるようになってしばらく経った頃、クリスハート様とブライアン王太子殿下が屋敷にやってきた。

馬車を降りた時からお二人は真剣な面持ちで、何事だろうとシルビオと顔を見合わせた。

人払いをした後、クリスハート様が私を攫った黒幕を教えてくれた。

「ベック伯爵が雇っていた傭兵どもが夫人を攫った。
ベック伯爵の娘が街で夫人に絡んだ事でシルビオに罵倒された事を父親に言ったんだ。
ベック伯爵は・・・正妃…レベッカにその事を報告して、レベッカが夫人を攫うよう指示したんだ。
まあ利害の一致というやつでな。
ベック伯爵は処刑された。
伯爵家は取潰しになった。
レベッカは幽閉塔に送られた。そのうち病死として発表されるだろう。
夫人が攫われたのも、大怪我をさせたのも私が原因だ。
本当に申し訳なかった。」

「待って下さい、あの令嬢が私に腹を立てて、父親のベック伯爵に相談し、ベック伯爵が正妃レベッカ様に報告。
何故ベック伯爵がレベッカ様に報告をするのですか?」

「ベック伯爵はあの人の手駒の一つなんだ。
汚れ仕事はベック伯爵に頼む。きっと褒美の代わりになんとかしてもらおうと思ったんだろう。」

「褒美・・・」

「とにかく私のせいでエルザ殿が目を付けられてしまった。

あの人は私を苦しめる事だけが生きがいなんだ…。
私の近くにいる者、親しくしている者、好きな人…それらを傷付け、私が悲しむのを楽しんでいる。
エルビオの事も狙っていた。

幼い時から命だけでなく、大切なものを奪われていった。
ブライアンはそんな俺をずっと守ってくれていた。
だから俺に権力をもたせようと王太子にする為、一歩引いていた…俺よりも優秀なのに…「違う!クリスは俺なんかよりも次期国王にふさわ…「ブライアン!最後まで話させてくれ、頼む。

俺よりもブライアンは優秀なんだ。
そしてブライアンは俺を守る為に実の母親を切り捨てる事になった・・・。
確かに愛情かけて育てられたわけではないだろう。だが、あの人はブライアンを愛していた。だから余計俺を憎んだ。
旦那を俺の母に取られ、我が子を俺に取られ、その怒りをぶつける事が出来る存在は俺しかいなかったからな。

だから俺は王家を抜けようと思った。
俺さえいなければ良いのだと思った。
だが間違っていた。
俺が真っ直ぐあの人とぶつかっていれば、
真っ向勝負を挑んでいたら、ブライアンも父上もあの人も、もう少しマシな終わり方が出来たんだと思う。
逃げた俺は、キャルティの事でヒーナス家やサバーナ家に迷惑をかけ、これまで俺が孕ませた令嬢達には傷を付け、将来を奪っただけの最低な男になった。
それが正しいと思っていた。
でもやってた事はあの人と同じで自分本位な事だった。
それを気付かせたのはエルザ殿、貴方だった。
あの日、泣きながら俺を許さないと言った貴方の姿が目に焼き付いて忘れられなかった。

その時は気付かなかったが、」
クリスハート様がそこまで話した時、急にブライアン様が、
「シルビオ、悪いがクリスと夫人を2人にしてはくれまいか。
クリスが夫人に伝えたい事があるようだ。
王太子としてではなく、弟として兄の望みを叶えてあげたい。
ほんの数分だ。
クリスと夫人の2人にしてやってくれ、頼む。」

「え⁉︎あ、えーと、その…はい、分かりました。」

「夫人、申し訳ない。少し席を外すが、最後にクリスの話しを聞いてやってくれ。」

と言って、急に私とクリスハート様だけになった。

「あの・・・」

「あー、済まない。ブライアンが気を遣ってくれたんだ。俺がエルザ殿に告白すると気付いたんだろう。」

「告白?」

「俺は君のことが好きなんだ。
シルビオと離婚したと思っていたから、告白しても構わないだろうと少し期待してしまった。
でも、君がシルビオを愛していて、エルビオの母親になる事を選んだのだと以前ここに来た時に分かった。
だから、帰りの馬車の中で初めてブライアンに俺の気持ちを伝えた。
告白する前に失恋したと。
それを御者が聞いていて、レベッカに伝えたんだ。それで君が攫われた。
だから俺が原因だと言った。

俺の不用意な言葉であんな目に遭わせてしまった、本当に済まなかった…。」

「えーと…その…まさかクリスハート様が私を好いてくれていたとは…何というか…嫌われてはいても好かれる要素がどこにあったのかは分かりませんが、それで私が狙われたという事は納得しました。
でも、やっぱりクリスハート様のせいではありません。
何らクリスハート様は悪い所はありませんから。
私は先程のお話を聞いて思いましたが、
幼い時から命を狙われ、大事なものを悉く奪われ、身も心も傷付けられながらも、こんなに優しい王子になったクリスハート様に感服しました。
でも、優し過ぎますよ。
殺すつもりで反撃すれば良かったんです。
多分、その役割りをブライアン様がなさっていたのでしょうが、もっとコテンパンにやってやれば良かったのにと思いました。
だから、悪いのは正妃様とベック伯爵。
クリスハート様が悪いと謝るのは、傷付けた令嬢方ですよ。
クリスハート様は私には勿体無い方です。
必ずもっともっと相応しい方が現れます。
それが婚約者の方なのか、別の方なのかは分かりませんが、じっくり今から見つけて下さい。
これからはたくさん大切なものを作って、たくさん幸せになって下さい。
こんな私を好いて下さってありがとうございました。
私はシルビオを愛しております。」

「ありがとう。聞いてくれて、きちんと答えてくれて、ありがとう。
貴方を好きになって良かった。」


そう言って、頭下げて出て行った。


ボォーっとしてしまい、しばらく座ったままでいた。

いつの間にかシルビオがいて、

「帰られた。大丈夫?エルザ。」

「うん、大丈夫。でも、なんていうか驚いた。」

「聞いてはいけないのかもしれないけど、クリスハート様に告白されたの?」

「うん、好きだと言われた。」

「そっか。でもエルザは俺の奥さんだ。」

「うん。」

「誰にも渡さない。」

「うん。」

「何処にもいかないでね…」

「うん、シルビオもね。」



2人でボォーとしてたら、

「いつまでボォーとしてる!働け!」
とジョバンニに怒られ、

「ジョバンニは八百屋のおばさんみたいだよね」
と言ったら頭を叩かれた。

うん、もう全部終わった。ただ本当に彼の方が幸せになってくれたら良いなと思う、心から、そう思った。







 







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