王子と従者と私〜邪魔なのは私だった

jun

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カウンセリング

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シリル視点



俺とケネスが余りにも変わった事に父や母、兄が動いた。
3人に呼ばれ、俺とケネスは黙って話しを聞いた。

要はカウンセリングを受けろと言われた。
今の俺達はとても日常生活を送れる精神状態ではないらしい。
それは北の修道院から連絡が来たからだろう。
あの女が死んだと。
俺達が行ってすぐに自害したらしい。
自害など生温い事で死んでほしくはなかったが、この世にあの女が存在しないなら万々歳だ。
こんな事を考えている事が駄目なんだそうだ。
だって女は俺のリジーを苦しめたのだ。
死んでも足りないほどの罪を犯したのだ、何をそんなに騒ぐのか分からない。
ケネスも俺と同じような顔をしていた。

それから毎日、あの学院の医務官が俺達の所に来た。

「ハア~お前ら鏡も見ないのか?そんなみっともない姿であの子に会えんのか?」

何を言ってるのだろう…もう会えるはずもないのに。

「会えるわけないとか思ってんだろ?ホンットに馬鹿だなお前らは。
今は会える訳ねえだろうが!
でもいつか会えるかもしんねえだろうが!
そん時お前らの姿見た時、あの子はどう思うだろうな!あの子はほんの少しずつ回復してる。卒業資格も無事取ったぞ。
なのにお前らは何してんの?
ろくに学院にも来ねえ。
執務もしてねえ。討伐もろくに出来ねえ。
あの子はあんなでも頑張ってんのにな!
相変わらずクソだな、てめえらは!」

リジーが卒業?

「リジーはもう卒業したんですか?」

「まだ卒業はしてねえよ、卒業式まではまだ学院生。
あの子は凄いな…震えながら少しずつでも屋敷の男性使用人に慣れようと、1日1人ずつ挨拶してるんだってさ。
怖くて涙をポロポロ溢しながら、“いつもありがとう”って言ってるんだそうだ…。
今では半分まで挨拶したってさ。
それが終わったら、王宮で助けてくれた騎士の人達にお礼を言うんだと。
何年かかるか分からないけど、最後はお前らに謝りたいんだそうだ、自分のせいで怪我をさせてごめんなさいって。

お前ら、何なの?
何もしないでイライラして、周りに威嚇しまくって、迷惑かけてるって思わねえの?
この話し聞いて何にも感じねえの?」

医務官の話しは初めて聞く話しだった。
今では俺達に話しかける人もいないからリジーの事なんて知らなかった。
卒業資格をとった事も、トラウマを克服する為に頑張ってる事も、何も知らなかった。

「俺は…何をしたら…良いですか…」

「知らねえよ、テメェで考えろよ。
でもお前を心配してる人が近くにいるだろうが、とてつもなく権力持ってる人が3人も。
助けて下さいって頭下げりゃなんぼでも助けてくれるだろうが。
全くお前らはガキだな、ガキはガキらしく大人を頼れ。

しばらく通ってやるから言いたい事があるならいつでも聞いてやる。
先ずは身内を頼れ。ケネス、お前もだ。
陛下や王妃、王太子もお前の身内のようなもんだろ。コイツと一緒に頼ってみろ。何とかしてくれっから。
分かったな?」

と言って帰って行った。

ケネスは泣いていた。
あの人に会いたいと泣いていた。
誰か助けてと泣いていた。
俺も泣いた。
俺も助けてと泣いた。
どうしていいのか分からなくて、何をしていいのか分からなくて、誰にも言えなくて、親にも兄にも言えなくて、苦しくて堪らなかった。

ドアの前にいた護衛が俺達の騒ぎに気付き、兄を呼んだ。
助けてと泣き叫ぶ俺達を見た兄上は、
「大丈夫だから、俺も父上も母上もお前達を助けるから泣くな。もう大丈夫だから。」と俺とケネスを抱きしめた。
それから俺とケネスは父上、母上、兄上に思っている事を話した。

あの時、頭ではリジーがやった事ではないと分かっていた事、熱の処理を怠った事の後悔、思ってもいなかった事を口走った後悔、リジーに手をかけたショックと自分への恐れ、まるでリジーよりケネスを優先したような行為、リジーを男性恐怖症にしてしまった事、喉を潰しかけた事、殺しかけた事、何もかも自分が許せない事、全部話した。

ケネスは、誰にも言うつもりのなかったリジーへの想いを話した。
リジーを好きな事、リジーを傷付けた事、自分の名前を聞くだけで震える事にショックを受けた事、リジーに謝りたい事、会いたい事、思ってる事全て話した。

「シリル、お前が12歳だった時ケネスを従者にした事を後悔してはいない。
だがな、ケネスをつける前にお前に竜力の抑え方をお前に教えるべきだった。
私も竜力は強くない。
教えられないと思っていたが、私の分かる範囲でお前に伝えるべきだった。
ケネスの存在に甘えていた。
申し訳なかった。
ケネスも済まなかった。
お前にシリルを任せっきりにしてしまった。
お前にももっとシリル以外の人間を近くに置けば良かった。
私も後悔ばかりだ…息子の苦しさを一つも分かってやれなかった…済まなかった。」
と父が頭を下げた。

「私も母親として失格ね…叱るばかりで寄り添いもしないで、ケネスにばかり頼ってしまった。婚約してからはブリジットに…。
あの時、いくらでもシリルを落ち着かせる方法はあっただろうに、無策でブリジットを貴方に会わせてしまった…毎日悔やんでるわ…シリルにもブリジットにもケネスにもこんなに苦しませる事もなかったのに…泣いて助けを呼ぶほど苦しんでいたのに…ごめんなさい…シリルごめんなさい…ケネスごめんなさい…」と母が泣いた。

「俺は…先祖返りのお前に嫉妬していた…。
弟のお前の方が王太子に相応しいのではないかとずっと思っていた…。
弟は可愛いが、嫉妬する気持ちは消えなかった。たまに意地悪してはスッキリする事もあった。ケネスを寵愛していた時は軽蔑していた。ブリジットと婚約してからは更に軽蔑した。ブリジットにバレないように学院でも腰を振ってるお前が嫌いだった。
でも、ブリジットのお陰なのかお前もケネスも変わった。
ブリジットに会えないなか、2人とも反省し、努力してブリジットをなんとか慰めようと花を毎日渡す姿に幼かった時の弟の姿を見たような気がして嬉しくなった。
ブリジットと仲直り出来た時は本当に嬉しかった。
だからあの時、ブリジットならお前を落ち着けさせる事が出来るのではないかと思った。
あの時俺はブリジットよりもお前を優先させてしまった…。済まなかった…本当に済まなかった…お前とケネスの大事な人をあんな風にしてしまって…本当に済まなかった…」と兄上も頭を下げて唇を噛んだ。

それから俺達は長い時間話し合った。

先ず俺とケネスは以前のような生活に戻す事。
きちんと食事を食べ、睡眠をしっかり取り、学院にちゃんと登校し、遅れた勉強を取り戻す事、体力も戻す事。
普通言われなくても出来てる事が最近では出来ていなかったので、それを治す事。
そして俺は、竜力の制御の練習をする事に決まった。
父も兄も竜力はあるが俺ほどはないから、熱が溜まる感覚がよく分からなかったそうだ。
でも興奮した時やショックを受けた時は、何か身体が熱くなったりする時があると分かり、そんな時は深呼吸してその熱を一ヶ所にではなく、全身に散らすような感じを無意識にやっていたそうだ。
俺は感情のままにしていたので、その練習をする事になった。
要は精神統一みたいなものだろう。

ケネスも生活改善は同じだが、一番大事なのは、俺の他に友人を作るのが目標になった。
元々明るく素直な性格だ、すぐ友人は出来るだろう。ライアンに手伝ってもらえば大丈夫そうだ。
後、日記を書けと医務官に言われて、俺とケネスは毎日日記を書いた。
何を書いて良いのか分からなかったが、その日あった事とか、リジーの事とか、楽しかった事、辛い事、嬉しかった事、とにかくその日感じた事を書けと言われ、書き始めると意外と気持ちが落ち着くのが分かった。
医務官に提出する分と自分用に書いた。
自分用はリジーの事を書いた。

リジーを思うと胸が苦しくなる。
会いたいし、声が聞きたい。
でも、今でも声が出ていなかったら…首の跡が消えていなかったら…俺の存在を、もうリジーの中から消してしまっていたら…考えれば考えるほど不安で不安でたまらない。
だからその事を日記に書いた。

言葉に出したり文字にすると自分の考えが形になって、いらない考えだった事、しまっておく事、大事な事がだんだん分かってきた。
するとごちゃごちゃしてた頭の中が整理されてきた。
すると優先順位が分かってきて、次にするべき事が自然と分かってきた。
やるべき事をしながら、ある事を同時にやり始めた。
それをいつ活用するかはまだ分からない。



俺はいつ渡せるかも分からない、リジーへの手紙を書き始めた。















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