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手紙
しおりを挟むカーラが何かおかしかった日の次の日、またカーラがおかしな事を言い始めた。
「あの…わ、私の、こ、恋、恋人、からの、て、手紙を、読んではもらえないでしょうか!」と自分宛の手紙を読めと私にお願いしてきた。
「カーラへの手紙なんでしょ?私が読むのは申し訳ないわ。」と言うと、
「いや、その、何と言うか…その…そう!書かれている事がよく分からないので、お嬢様に教えて頂きたいのです!」と支離滅裂な事をしどろもどろで言っている。
とにかくカーラはその手紙を読んで欲しいらしい。
「読んで構わないのなら読むけど、良いの?」
「もちろん!是非!」と今度は嬉しそうだ。
手紙を受け取り、便箋を取り出し読もうとした時、文字を凝視した。
バッとカーラを見ると、パッと顔を俯かせた。
「わ、私の、恋人は文字が綺麗なので、す…」
あくまで“カーラの恋人”の体を貫くらしい。
あのカードと同じ、綺麗なシリルの文字を見ても震えはしなかった。
文字は私に幸福を運んだものだ、怖くはない。意外と動揺もしていないし、落ち着いてる事を確認し、手紙を読む。
“リジーをまだ愛していて、ごめんなさい。
大好きでごめんなさい。
会いたくて、ごめんなさい。
苦しめてごめんなさい。
たくさん泣かせてごめんなさい。
怖がらせてごめんなさい。
食べる事が大好きなのに食べられなくさせてごめんなさい。
大きくなる為たくさん眠ると言っていたのに眠れなくさせてごめんなさい。
リジーの顔が見たくて…ごめんなさい。”
小さな子供の反省文のような手紙に思わず、プッと笑ってしまった。
「カーラの恋人は子供みたいね。」と言うと、
「そうなんです!前から思っていました!
ですからその手紙はお嬢様が持っていて下さい!多分…また来ると思うので、その時はまた私の代わりに読んでください、私は捨てても良いかなと思ってますけど!」とフンフン鼻息を荒くして言うカーラが可愛い。
「まだ男の人は怖いけど、手紙は怖くないから読めそうよ。」
「お嬢様…良かった…発作が出るのではと、心配で心配で…」とカーラが泣き出した。
「心配かけてしまってごめんね、カーラ。
大丈夫だから安心して。カーラ、お茶が飲みたいわ、淹れてくれる?」と言うと涙を拭き、急いでお茶の準備を始めた。
カーラがお茶を淹れてる間にもう一度手紙を読んだ。
手紙は滅多に貰ったことはないが、数回貰ったことがある。
その時の手紙は貴族らしい手紙だったし、最後の数行に愛してるとか早く会いたいと添えられるだけだった。
机に向かい、便箋を前に何時間も悩んで書いたであろう事が想像出来て、少し笑ってしまった。
大きくなる為たくさん寝るなんて婚約したばかりの頃に一度言ったきりなのに…。
確かに食べる事は好きだけど、このタイミングで言う?と思ったら笑えた。
きっと私の状態を聞いたから、食事の事と眠る事を書いたであろうシリルの気持ちが伝わった。
真面目な手紙では読んでもらえない。
でも心配だし、謝りたい。
だから今シリルが1番優先したのが私に心に負担をかけない事だったんだろう。
それであんな書き方しか出来なくて、子供の反省文になったのがおかしくて何度読んでも笑った。
渡しにも行けないから、きっとエリザ辺りにお願いしたんだろう。
エリザはシリルからの手紙を直接渡したくないからカーラに丸投げしたのかと思う。
2人のやり取りやシリルがエリザに頭を下げている姿を想像するとおかしくて笑える。
そしてカーラ。
どう渡そうか悩みに悩んで、ああ言うと決めたカーラがおかしくてお腹を抱えて笑った。
私が爆笑しているのに驚いたカーラは、
「あまりのショックにおかしくなられてしまったのですか⁉︎どうしましょう、お嬢様、先ずはお茶でも飲んで落ち着いて下さいませ!」
と慌てている。
「違うの。カーラにあの手紙を持ってきたのはエリザでしょ?そしてエリザはシリルからの手紙を渡したくないからカーラに丸投げした、違う?
悩んだカーラは自分の恋人からの手紙を読めってなったのかと思うとおかしくおかしくて…。カーラの動揺ぶりを思い出しても笑ってしまう。」
「へあ⁉︎お嬢様凄いです!どうして分かったのですか⁉︎あ・・・ち、違います、私のこ、恋人からの手紙です!」ともうバラしてしまっていたが、
「そうね、カーラの恋人からの手紙がまた来たら読ませて貰うわ。次は何の反省をするのか楽しみね。」
そう言ってカーラを見ると、急に真剣な顔をした。
「お嬢様、さっき…彼の方の名前を抵抗なく口にしましたのに気付いておられますか?」
と言われた。
そういえばそうだ。普通に名前を出せた。
震える事なく何の発作も出なかった。
でも意識したらダメかもしれない。
「そういえば何気に行ってしまってたわね…もし次の手紙もちゃんと読めたら名前を聞いても大丈夫かもしれないわね。」
「無理はなさらないで下さいね。次の手紙が碌でもないものだったらこのカーラが食べてしまいます!私のお腹の中で消化して差し上げます!」ととんでもない事を言い出したカーラにまた笑った。
久しぶりに私の部屋から笑い声が聞こえて父も母も兄も飛んできた。
もう私の笑い声など聞けないと思っていたと両親と兄が泣いていた。
そして、
「前の時も今もリジーを苦しめたのはあの方だが、リジーを立ち直らせたのもあの方なのだな…リジーが笑ってくれて嬉しいけど、笑わせたのがあの方なのが悔しい…」という父にまた笑った。
その日一つトラウマを克服出来たようだ。
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