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ニコラス第二王子になってから
弟を泣かせた奴は許さない
しおりを挟むアル視点
「マイク、何があった?ミリアに何かされたのか?」
ミリアの名前を出すと、ハッと顔を上げて俺を見た。
涙を溜めて見つめる弟の手を引き、ソファに触らせて、隣りに座り背中を摩った。
「ミリアに何を言われた?」
「僕は…ミリアに会ってもいないのに…ミリアは…僕に会うといつも“ごめんなさい”って言うんだ…。
なんのこと?って言っても…ごめんなさいしか言わないから…父様にも母様にも叱られる…。
おじさんにも…クリフ兄にも怒られて…。
ぼく…訳が分からなくて…。
アル兄…どうしたら良いの…」
「マイクは何も悪くない。
俺が父上にも母上にも話しておくよ、マイクは何にも心配いらないから、もう泣くな。
おじさんにもおばさんにもクリフにも説明しておく。
大丈夫だ、俺がついてる。」
まだ子供のマイクに何を恐れる事があるっていうんだ!
前世でどれほど言われたのかは分からないが、それは自分のせいだ。
それをいつまでもいつまでも怯えやがって、腹ただしい!
とにかくマイクを落ち着かせて、部屋を出た。
すぐに父上の執務室へ向かうと、
「父上、何故何もしていないマイクを責めるのですか!
部屋に篭ってるミリアにどうやってマイクが会って、意地悪するっていうんですか!
話しも聞かず我が息子を責めるなんて愚の骨頂ですよ!」
「待て待て、私はそんなに強く責めてはいないし、叱ってもいない。何をしたのかを聞いただけだ。」
「マイクはローランおじさんとクリフにも責められてたそうじゃないですか!
そこに父上からも母上からも問い詰められたら、自分が責められてると思ってしまうじゃないですか!
部屋で泣いていますよ、マクス。
マクスの心に深い傷を付けられたんですよ、ウチが向こうに抗議する立場なのに、弟を責めるなんて…。
ミリアは専門医に診てもらうようおじさんに伝えるべきです。
誰彼構わず被害妄想で勝手に悪人のような態度をとられていたら、マイクのように冤罪をかけられ社会的に殺されてしまいますよ。
俺は弟をあんなに傷付けたミリアを絶対許しませんよ!」
「だから待ちなさい、アルトゥール。
お前が弟を大事にしてくれている事は嬉しいが、そんなに興奮するな。
他所の家の事に口出しは出来ないが、親しく付き合わせてもらってるから、それくらいは言えるだろう。
確かにあのミリアって子は怖がりってレベルではないな。
マイクは一人で公爵邸に行く事はないし、行く時もお前と一緒なのに、ミリアがマイクと二人になる事もない。
だが、マイクを見かける度に謝ってくるからな…つい私達の見えない所で何かやってるのかと問い詰めてしまった。
済まない、後でマイクにも謝ろう。」
とりあえず父には伝えたので、執務室を退室すると、母が立っていた。
「なんだかアルトゥールが怒ってエトマンの所に行ったと聞いたから来てみたのよ。
何があったの?」
ポワーンとした雰囲気の母は、身内に害なすものには容赦しない所がある、意外と激情型だったりする。
一応表面的には抑えているが、短気なのは間違いない。
そんな母がマイクを叱ったのは、女の子を泣かせたって事が大きかったんだろう。
でも理由もなくマイクを悪人に仕立てたと分かったら母がどう動くのか想像出来てしまい、話し方に注意しなければならない。
「母上、お騒がせしてすみません。
マイクが父上に叱られて泣いていたので、何故訳も聞かずに叱ったのかを聞いていました。」
「まあ、マイクは泣いていたの?」
「はい。私が帰ると泣きながら抱きついてきました。
何もしていないのに父上と母上に叱られたと。
母上はマイクを叱ったのですか?」
母を立たせたまま話しをさせる訳にもいかないので、家族の団欒室にエスコートしていった。
ソファに座らせると、途中で頼んでいたお茶とお菓子がテーブルに置かれた。
「相変わらずアルのエスコートは完璧ね。
お茶もお菓子もいつ頼んでいたのかしら、気付かなかったわ。」
フフと笑う母は14と10歳の息子がいるようには見えない。
「さて、母上。母上はマイクに何を言って泣くほど叱ったのですか?」
「まあ!叱ってなどいませんよ。ただ女の子を泣かせるような事はしちゃいけないと言っただけなのよ。」
「母上、マイクはミリアに殆ど会った事がないんですよ、なのに泣かせることなんて出来ません。
あの子は対人恐怖症で部屋から出て来ないのですから。
あの子が勝手に妄想して、何もしていないマイクに謝っただけなのに、父上にも母上にも叱られ、エルベールのおじさんとクリフには怒られ、訳の分からないマイクは傷付いて泣いていましたよ。」
「大変!マイクの所に行かないと!」
バタバタとマイクの部屋に向かった母を追いかけ、マイクの自室へ行くと、母は弟を抱きしめ謝っていた。
「ごめんなさい、マイク…。貴方を傷付けてしまったわ。
私は泣いている女の子が可哀想で、何も聞かずにマイクを責めてしまったわ…。
ごめんなさいね、マイク…。
ちゃんと貴方の話しを聞かなかったわ、お母様を許して…マイク、ごめんなさい…」
ギューギュー抱きしめられたマイクは、
「母様、苦しいです…」
「あら、ごめんなさい、マイク。
もう泣いていない?
こんなに目が腫れてしまったわ…可哀想に…。
すぐにタオルを持ってきて!」
と濡らしたタオルでマイクの目を冷やしてあげていた。
「母上、先程父上にも言いましたが、ミリアは被害妄想が酷いです。
一度、おじさんにミリアを専門医に診てもらうよう言ってみてはどうですか?
あのままでは社交など出来ません。」
「そうねぇ…確かにあのままではね…。
あの子は小さい時から人見知りが酷いってイザベルがよく言っていたのよ…。
お医者様にまで怯えるから困っていたわ…。
何もしていないマイクにまで怯えるなんて、ちょっと問題だわ。
エトマンと相談してみるわね。」
マイクを抱っこして、目にタオルを押し付けている母に、マイクはされるままになっている。
とりあえず父と母にミリアはおかしいと分かってもらえたなら今は良しとしよう。
明日、ニコにこの事を話さないと。
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