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悪夢
しおりを挟むぐっすり眠って疲れも取れた私とブライアンは細かい物をドンドン片付けていった。
粗方片付いて、遅い朝食をとった。
「あれからどうなったのかな…カールもナタリア様も」
「カールは入院してるだろうし、あの人は…留置されてるだろうな」
「一番隊…私は移動だしカールは戻って来れないし、ヤコブだけでは心許ないなあ」
「そうだな、シシーの移動を待ってもらうしかないんじゃないか。」
「そうだね…団長と相談してみる。」
なんとなく暗くなってしまった。
ブライアンが、
「そういえばウエディングドレスは出来たの?」
と話題を変えてくれた。
「うん、後は微調整するだけ。」
「楽しみだ。綺麗だろうな。」
「ドレスは綺麗だよ。中身が私だからどうだろうね。でも楽しみ!
あ!そういえばライはどうしてあの日休んでたの?」
「あーーーーそれは…シシーが帰ってきたら渡したい物があって…それを取りに行く為に急遽休みをとったんだ…。」
「渡したい物?」
「ちょっと待ってて!」
ブライアンは自分のカバンの中から綺麗にラッピングされた小さな箱を持ってきた。
「驚かせようと思ってたんだけど、こんな状況で忘れてた…ごめんな。
これ、俺の気持ち。」
照れたブライアンが差し出したプレゼントを受け取り、
「開けていい?」
「もちろん」
開けてみると、一粒のダイヤモンドと小さなピンクダイヤが二つ付いているシンプルだけどセンスの良い指輪が入っていた。
「ライ…これは?」
「来月には結婚するけど、婚約指輪。遅くなってごめん。」
「ライ・・・」
嬉しくてブライアンに抱きついた。
「ありがとう!嬉しい!」
「良かった。無駄遣いって怒られると思ったよ。」
色々あったけど、ブライアンとこうしていられる事が嬉しい。
騎士なのでこういった指輪はつけられないから諦めていた。
でもやっぱり羨ましかった。
友人達の指にはめられた婚約指輪を見て、騎士は指輪なんかいらないなんて強がりを言っていたが、一生に一度の婚約指輪をはめてみたかった。
「本当にありがとう…ライ、大好き!」
「そんなに喜んでくれるとは思わなかったよ。買って良かった。」
「あ!待って!」
自分のカバンの中からラッピングされた箱を出す。
「ライ、これ。私も任務が終わったら渡そうと思ってたの。」
箱を開けてみるブライアンが、
「あ!懐中時計だ。よく俺の懐中時計壊れてたの知ってたね。」
「うん、自分のじゃなくて大事なお祖父様の形見の時計を使ってたから自分のは故障したのかと思ったの。裏に名前を入れて貰ったの。開くと蓋の内側に写真も入れられるよ!」
「あ、本当だ!ありがとう、シシー。ここにシシーの写真を入れておけるね。」
「私のは恥ずかしいから子供が出来たら子供の写真を入れられるかなと思ったの。」
「子供・・・じゃあ早速…」
と言って、私を抱えて寝室へ行き、夜まで愛し合った。
お風呂に入り、かなり遅い夕食を食べながら、
「明日からライは出勤でしょ?」
「そうだな、なんだかバタバタしてゆっくり出来なかったけど、ある意味バタバタしてて良かったよ。この三日間をボォーっとしてたら気分が滅入っていたと思うから。」
「そうかもね。このバタバタが気持ちを落ち着かせるのに丁度だったと思う。」
「明日、シシーも一緒に行く?」
「うん、調書取られるだろうし、ライと一緒に出勤しようと思ってた。」
「じゃあ二人で出勤しよう。」
「明日イーグルのラルス団長に挨拶してこようかと思ってるの。迷惑かけちゃったし。」
「そうだな、俺も行こうか?」
「とりあえずは私だけ行ってくる。ラルス団長は好きだけど、シックス副団長の事は苦手なんだよね…なんかいつも睨まれる…。」
「あはは、シシーは知らないのか?あの人、目が悪いんだ。眼鏡は嫌いだってかけないからいつも目を細めてるんだよ。
優しい人だから安心して。」
「えーー、そうなの?目が悪かったからあんなに目付き悪かったんだ!
なーんだ、安心した。毎回睨まれるから怖かったんだよね。」
そんな話しをした後は夕食の片付けをして、
明日は早いからと布団に入り、二人で眠った。
夜中、ブライアンが飛び起きた気配がしたので、私も飛び起きた。
隣りで肩で息をするブライアンに、
「どうしたの?夢見が悪かったの?」
と背中を摩った。
「シシー・・」
とか細い声で抱きついてきた。
「大丈夫?私はここにいるよ、大丈夫、大丈夫だよ」
と背中を摩り続けた。
ブライアンを横にならせ、抱きしめながらずっと背中を摩った。
ようやく眠ったブライアンの背中をしばらく摩り、少し離れようとすると、ギュッと抱きしめられた。
「眠れないの?」
「離れないで、お願い…」
「うん、分かった。」
お互いを抱きしめ合い、しばらくするとブライアンの寝息が聞こえ始めた。
一安心したが、離れるとまた起きそうなのでずっと抱きしめていた。
今までは私が甘えてばかりだったのに、この数日でブライアンは子供のように甘えてくる。
甘えるというより、怯えているんだろうと思う。
ブライアンの背中を優しくトントンと叩いているうちに私もいつの間にか眠っていた。
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