帰らなければ良かった

jun

文字の大きさ
28 / 102

どうして

しおりを挟む


ミッシェル視点

フランシス・イザリスをシックス副団長と連行した後、シシリーの所へ向かった。
ブライアンはおらず、一人でシシリーが眠っている部屋へ入った。

少し顔色は悪いが穏やかに眠っている。
医師の話しでは後少し深く刺されてたら心臓に達し、死んでいただろうという話しを聞いて、怒りが込み上げ、握った拳が震えた。

本当にシシリーは良い人なのだ。
鈍感な所はあるが、弱きものを助け、悪しきものは許さない、騎士らしい考えの女騎士だ。
明るく大食いで甘い物が大好きな私の親友が何故こんなに酷い事をされなければならないのだろう。
美男美女は結婚しちゃいけないんだろうか?
ふざけんな!
この二人は見た目は良いけど、中身はどっちもポンコツだ。
そこらへんにいる恋人達となんら変わらないバカップルだ。
でも誰よりも幸せそうだった。
なのに…。

シシリーの手を握りながら二人の事を考えていたら、涙が出た。
なんでこの二人ばっかりこんな事になるんだろう…。
どうしても許せない。
ナタリアもベルもフランシスも他の令嬢も絶対許さない。
叫び出したい、アイツらにありとあらゆる罵詈雑言を吐きかけたい。
涙が止まらず、一人なのをいいことに、おいおい泣いた。

「ミッシェル…大丈夫か?」

バッと後ろを振り返るとブライアンが心配気に声をかけてきていた。

「ごめん、なんか悔しくて涙が止まらなかった。」

「ありがとう、ミッシェル。」

「あたし、あんた達バカップルが大好きなんだよね。結婚すんの、楽しみにしてたんだよ。カールと余興何やろうかって話してたのに…なのに…。
許せないのよ、アイツらが許せなくて許せなくて、どうしていいのか分からないくらい怒ってるのよ。
今の今まで、バタバタしてたから勢いで動いてたけど、眠ってるシシリー見てたら涙が止まらなくなった…。
少し、スッキリした。
どうぞ、ブライアン、シシリーの近くにきてあげて。」

「ミッシェル…ありがとう…俺達のために泣いてくれてありがとう。
でもミッシェルが泣いたら、俺も泣きそうになるから泣くな!」

「アハハ、なんで私が泣いたらブライアンも泣くのよ。」

「お前はシシリー以外で初めての女友達だからだ。俺達をバカップルなんて言うのはお前だけだし!」

「良かった…私、さっきまであの女達の事、殺そうかと思ってたけどシシリーの寝顔とブライアンの顔見たら落ち着いたわ。助かった。」

「俺もここにいた時は同じ事思ってた。
でも、俺やシシリーの為に団長やラルス団長、お前がアイツらにキレまくってる姿見たら落ち着いた。
今、キャシー・ファンハイドの取調べの録音聞いてきた。
団長…凄かったな…。少し笑えた。
今、ラルス団長がフランシス・イザリスの取調べをしてくれてる。
ラルス団長もキレてるのが分かった。
お前はここでオイオイ泣いてるし、それ見たら俺がやる事は、殺す事なんかじゃなくてこの面倒を早く解決する事だと思った。
だからもう泣くな。」

「ブライアンが優しいーーーーー」

「だから泣くなって!」

「お前ら、何してんの?」

「「団長⁉︎」」

「静かにしなさいよ、シシリー寝てるのに。」

「「ラルス団長!」」

「やっぱりミッシェルは泣いてたな、泣くだろうなぁと思った。」

「団長、私は泣いてません!」

「いやいや、泣いてたでしょ?」

それからはシシリーの周りを囲み、フランシスの取調べの内容を教えてくれた。

最初は惚けていたようだが、ラルス団長がジワジワと嫌味たっぷりにイジメ抜かれ、ブライアンには拒絶、嫌悪、憎悪され、団長には鬼の形相で罵倒され、挙句に自分以外の女がブライアンに媚薬を使って抱かれた話しをされて、すっかり気力がなくなってしまい、尋問に淡々と答えたそうだ。

三段階で落とされたのだ。
それもかなり段差のある一段を一気に三段落とされたのだ、気力も無くなるだろう。

それにしてもラルス団長はどうしてそんなにフランシスにキレたのだろう…
確かにシシリーは来月からイーグルだし、ブライアンとは交流もあっただろう。
でも、ここまでキレる?

ついラルス団長を見つめていたら、

「ミッシェル、お前、なんで俺がキレてるのか分からんのだろう?」

「いや、あーーーそうです。」

「正直でよろしい。フランシスは俺の奥さんの妹なんだ、母親が違うが。ま、色々あって俺は奥さんを苦しめたイザリス家が大嫌いなんだ。
でも、シシリーとブライアンの事でもキレてたぞ、俺は。」

「そうだったんですね、立ち入った事を聞いてしまいました。申し訳ありません。」

「ラルスは優しい顔してえげつない程嫌味たっぷりに相手を攻めていくから、精神にくるんだよ。さっきも“いつもコップを持ち歩いているんですか?最近の淑女の方はそれが普通なのでしょうか?知り合いに教えなきゃ”とか“態とフランシスにブライアンの名前呼ぶようにしたくせに、いちいち言い直しさせるから、最後はイライラしたフランシスが自分で媚薬盛ったって勢いで言っちゃってたしな。」

「あれは上手かったですね、俺もイライラしましたけど。」

「アハハハ、面白かったでしょ。俺、本当にアイツらが大っ嫌いなんだよ~」

こわ…。

この団長二人とブライアンを怒らせないように気をつけようと固く誓った。


「すみません、よろしいですか?」

「はい、何でしょう?」

「先生がお呼びです。」

先生の助手の方が誰を呼ぶともなしに呼んだ。

全員で先生の所へ行くと、

「ブライアンだけかと思って呼んだが、全員来たのか。ブライアンにだけ伝えようと思ったが、逆に団長、ミッシェルは知っていた方が良いかもしれないな…。
でも、これはデリケートな話しだ。
シシリーが起きたらショックを受けるだろうし、ブライアン、お前はおそらく取り乱すだろう。
その時はお前らがなんとかしろよ。



シシリーは妊娠していた。」

















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】最愛から2番目の恋

Mimi
恋愛
 カリスレキアの第2王女ガートルードは、相手有責で婚約を破棄した。  彼女は醜女として有名であったが、それを厭う婚約者のクロスティア王国第1王子ユーシスに男娼を送り込まれて、ハニートラップを仕掛けられたのだった。  以前から婚約者の気持ちを知っていたガートルードが傷付く事は無かったが、周囲は彼女に気を遣う。  そんな折り、中央大陸で唯一の獣人の国、アストリッツァ国から婚姻の打診が届く。  王太子クラシオンとの、婚約ではなく一気に婚姻とは……  彼には最愛の番が居るのだが、その女性の身分が低いために正妃には出来ないらしい。  その事情から、醜女のガートルードをお飾りの妃にするつもりだと激怒する両親や兄姉を諌めて、クラシオンとの婚姻を決めたガートルードだった……  ※ 『きみは、俺のただひとり~神様からのギフト』の番外編となります  ヒロインは本編では名前も出ない『カリスレキアの王女』と呼ばれるだけの設定のみで、本人は登場しておりません  ですが、本編終了後の話ですので、そちらの登場人物達の顔出しネタバレが有ります  

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

【完結】この胸が痛むのは

Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」 彼がそう言ったので。 私は縁組をお受けすることにしました。 そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。 亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。 殿下と出会ったのは私が先でしたのに。 幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです…… 姉が亡くなって7年。 政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが 『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。 亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……  ***** サイドストーリー 『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。 こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。 読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです * 他サイトで公開しています。 どうぞよろしくお願い致します。

月夜に散る白百合は、君を想う

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢であるアメリアは、王太子殿下の護衛騎士を務める若き公爵、レオンハルトとの政略結婚により、幸せな結婚生活を送っていた。 彼は無口で家を空けることも多かったが、共に過ごす時間はアメリアにとってかけがえのないものだった。 しかし、ある日突然、夫に愛人がいるという噂が彼女の耳に入る。偶然街で目にした、夫と親しげに寄り添う女性の姿に、アメリアは絶望する。信じていた愛が偽りだったと思い込み、彼女は家を飛び出すことを決意する。 一方、レオンハルトには、アメリアに言えない秘密があった。彼の不自然な行動には、王国の未来を左右する重大な使命が関わっていたのだ。妻を守るため、愛する者を危険に晒さないため、彼は自らの心を偽り、冷徹な仮面を被り続けていた。 家出したアメリアは、身分を隠してとある街の孤児院で働き始める。そこでの新たな出会いと生活は、彼女の心を少しずつ癒していく。 しかし、運命は二人を再び引き合わせる。アメリアを探し、奔走するレオンハルト。誤解とすれ違いの中で、二人の愛の真実が試される。 偽りの愛人、王宮の陰謀、そして明かされる公爵の秘密。果たして二人は再び心を通わせ、真実の愛を取り戻すことができるのだろうか。

はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」 「……あぁ、君がアグリア、か」 「それで……、離縁はいつになさいます?」  領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。  両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。  帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。  形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。 ★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます! ※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~

塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます! 2.23完結しました! ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。 相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。 ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。 幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。 好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。 そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。 それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……? 妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話 切なめ恋愛ファンタジー

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

処理中です...