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どうして
しおりを挟むミッシェル視点
フランシス・イザリスをシックス副団長と連行した後、シシリーの所へ向かった。
ブライアンはおらず、一人でシシリーが眠っている部屋へ入った。
少し顔色は悪いが穏やかに眠っている。
医師の話しでは後少し深く刺されてたら心臓に達し、死んでいただろうという話しを聞いて、怒りが込み上げ、握った拳が震えた。
本当にシシリーは良い人なのだ。
鈍感な所はあるが、弱きものを助け、悪しきものは許さない、騎士らしい考えの女騎士だ。
明るく大食いで甘い物が大好きな私の親友が何故こんなに酷い事をされなければならないのだろう。
美男美女は結婚しちゃいけないんだろうか?
ふざけんな!
この二人は見た目は良いけど、中身はどっちもポンコツだ。
そこらへんにいる恋人達となんら変わらないバカップルだ。
でも誰よりも幸せそうだった。
なのに…。
シシリーの手を握りながら二人の事を考えていたら、涙が出た。
なんでこの二人ばっかりこんな事になるんだろう…。
どうしても許せない。
ナタリアもベルもフランシスも他の令嬢も絶対許さない。
叫び出したい、アイツらにありとあらゆる罵詈雑言を吐きかけたい。
涙が止まらず、一人なのをいいことに、おいおい泣いた。
「ミッシェル…大丈夫か?」
バッと後ろを振り返るとブライアンが心配気に声をかけてきていた。
「ごめん、なんか悔しくて涙が止まらなかった。」
「ありがとう、ミッシェル。」
「あたし、あんた達バカップルが大好きなんだよね。結婚すんの、楽しみにしてたんだよ。カールと余興何やろうかって話してたのに…なのに…。
許せないのよ、アイツらが許せなくて許せなくて、どうしていいのか分からないくらい怒ってるのよ。
今の今まで、バタバタしてたから勢いで動いてたけど、眠ってるシシリー見てたら涙が止まらなくなった…。
少し、スッキリした。
どうぞ、ブライアン、シシリーの近くにきてあげて。」
「ミッシェル…ありがとう…俺達のために泣いてくれてありがとう。
でもミッシェルが泣いたら、俺も泣きそうになるから泣くな!」
「アハハ、なんで私が泣いたらブライアンも泣くのよ。」
「お前はシシリー以外で初めての女友達だからだ。俺達をバカップルなんて言うのはお前だけだし!」
「良かった…私、さっきまであの女達の事、殺そうかと思ってたけどシシリーの寝顔とブライアンの顔見たら落ち着いたわ。助かった。」
「俺もここにいた時は同じ事思ってた。
でも、俺やシシリーの為に団長やラルス団長、お前がアイツらにキレまくってる姿見たら落ち着いた。
今、キャシー・ファンハイドの取調べの録音聞いてきた。
団長…凄かったな…。少し笑えた。
今、ラルス団長がフランシス・イザリスの取調べをしてくれてる。
ラルス団長もキレてるのが分かった。
お前はここでオイオイ泣いてるし、それ見たら俺がやる事は、殺す事なんかじゃなくてこの面倒を早く解決する事だと思った。
だからもう泣くな。」
「ブライアンが優しいーーーーー」
「だから泣くなって!」
「お前ら、何してんの?」
「「団長⁉︎」」
「静かにしなさいよ、シシリー寝てるのに。」
「「ラルス団長!」」
「やっぱりミッシェルは泣いてたな、泣くだろうなぁと思った。」
「団長、私は泣いてません!」
「いやいや、泣いてたでしょ?」
それからはシシリーの周りを囲み、フランシスの取調べの内容を教えてくれた。
最初は惚けていたようだが、ラルス団長がジワジワと嫌味たっぷりにイジメ抜かれ、ブライアンには拒絶、嫌悪、憎悪され、団長には鬼の形相で罵倒され、挙句に自分以外の女がブライアンに媚薬を使って抱かれた話しをされて、すっかり気力がなくなってしまい、尋問に淡々と答えたそうだ。
三段階で落とされたのだ。
それもかなり段差のある一段を一気に三段落とされたのだ、気力も無くなるだろう。
それにしてもラルス団長はどうしてそんなにフランシスにキレたのだろう…
確かにシシリーは来月からイーグルだし、ブライアンとは交流もあっただろう。
でも、ここまでキレる?
ついラルス団長を見つめていたら、
「ミッシェル、お前、なんで俺がキレてるのか分からんのだろう?」
「いや、あーーーそうです。」
「正直でよろしい。フランシスは俺の奥さんの妹なんだ、母親が違うが。ま、色々あって俺は奥さんを苦しめたイザリス家が大嫌いなんだ。
でも、シシリーとブライアンの事でもキレてたぞ、俺は。」
「そうだったんですね、立ち入った事を聞いてしまいました。申し訳ありません。」
「ラルスは優しい顔してえげつない程嫌味たっぷりに相手を攻めていくから、精神にくるんだよ。さっきも“いつもコップを持ち歩いているんですか?最近の淑女の方はそれが普通なのでしょうか?知り合いに教えなきゃ”とか“態とフランシスにブライアンの名前呼ぶようにしたくせに、いちいち言い直しさせるから、最後はイライラしたフランシスが自分で媚薬盛ったって勢いで言っちゃってたしな。」
「あれは上手かったですね、俺もイライラしましたけど。」
「アハハハ、面白かったでしょ。俺、本当にアイツらが大っ嫌いなんだよ~」
こわ…。
この団長二人とブライアンを怒らせないように気をつけようと固く誓った。
「すみません、よろしいですか?」
「はい、何でしょう?」
「先生がお呼びです。」
先生の助手の方が誰を呼ぶともなしに呼んだ。
全員で先生の所へ行くと、
「ブライアンだけかと思って呼んだが、全員来たのか。ブライアンにだけ伝えようと思ったが、逆に団長、ミッシェルは知っていた方が良いかもしれないな…。
でも、これはデリケートな話しだ。
シシリーが起きたらショックを受けるだろうし、ブライアン、お前はおそらく取り乱すだろう。
その時はお前らがなんとかしろよ。
シシリーは妊娠していた。」
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