帰らなければ良かった

jun

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失敗した尋問



ヤコブ視点


ラルス団長の尋問を見せてもらえる事になり、団長とラルス団長、そして俺が取調室に入ると、興奮した様子のイザリス公爵夫人が目を真っ赤にして、フーフー唸っていた。

こぇー・・・。

獣のような様子に驚いた。

「ヤコブ、録音スタートさせて。」
と小さな声で俺に告げた。

「あ、はい」

録音装置をスタートさせた。


「猿轡、とってあげて。」

そして猿轡が取られた夫人は、

「ラルス!あんたの事は絶対許さないわよ!あたしが美人じゃないって言ったわね!
薬でしか籠絡出来ないって言ったわね!
確かに私は美人じゃないわ!
それでも最初に手を出したのはあの人よ!
一度きりだったけど、確かに最初はあの人からよ!申し訳ないって謝って無かった事にされそうだったから、薬を使ったのよ!
悪いのはあの人よ!
私を抱いた後、毎回毎回、あの人は後悔しては“二度とこんな事はしたくない”ってグジグジグジグジ泣くのよ!
だからほんの少し私が飲んでる安定剤を飲ませたの!強めの安定剤だから最初はほんの少しだけ。麻薬じゃないわ!それからは安定剤や睡眠薬、媚薬を使っただけよ!
フランシスに使うわけないじゃない!
自分の娘よ!大事な愛する娘に使うわけないじゃない!
あの子が騎士団の副団長が好きなら一緒にさせてあげたいと思うのは、親心というものでしょ!だから邪魔者は消そうと思って何が悪いのよ!」

と一気に捲し立てた夫人は肩で息をしている。

なんか情報量が多くて整理が追いつかない。

「それで?」とラルス団長。

「はあ?あなた聞いてなかったの?だから私は麻薬なんか使ってないって言ってるの!」

「俺を許さないんじゃなかったの?俺をどうするの?」

「あんたなんか公爵家の力でどうとでもしてやるわ!」

「えーー⁉︎そんな事出来るの?ビックリ!」

「なっ!なんなの、いつもいつも私を小馬鹿にして!」

「あんたの方こそ、なんでそんな態度とれるのか分かんないな。ここになんで連れて来られたかも分かんないの?」

「私は・・・」

「あ、ようやく気付いた?あんたは男爵夫人誘拐の容疑でここに連れてこられたの。
なのにファルコン一番隊リーダーの殺害未遂の事も自白してもらっちゃって、助かっちゃったよ。」

「私は殺してないわ。」

「まあまあ、順番に行こうか。
男爵家に押し入って、男爵夫人を誘拐させたのはあなたでしょ?」

「知らないわ!」

「じゃあ使用人が勝手にやったの?」

「そうなるわね。」

「なんで?」

「知らないわよ!」

「だって人一人公爵邸に運ぶんだよ、主が知らない事ないでしょ?」

「主人が命令したんじゃない?」

「なんで?」

「娘の為かしら?」

「あんたは何も知らないと?」

「ええ。」

「じゃあどうやってリーダーを殺そうとしたの?」

「私は殺そうと思っただけ。何もしてないわ。」

「じゃあ、スーザンに脅迫状を出したのは誰?」

「さあ、知らないわ。」

「イザリス家の家紋が入った便箋と封筒が使われてたけど。」

「執事が盗んで使ったんじゃないの?」

「ふぅーん、そう。
エド、尋問は使用人の話しを全て聞いてから再開しよう。とりあえず、聞きたい言葉は聞けた。
どこを崩せばいいかは分かった。」

「負け惜しみね。待ってるわ、ラルス。」

「ああ、またすぐ来るよ、楽しみにしてて。多分、次はブルブル震えてチビっちゃうほど怯えると思うよ、俺も楽しみだ。」

ラルス団長は、ジュリアーナをまた拘束し、猿轡をさせて地下に行かせた。

「クソッ、失敗した。一気に行く予定だったのに。」

「あの女がシシリーを殺そうとしたのは分かったんだ。あの自白だけでも十分いける。」

「いや、あの女だけは許せない。とことん堕とす。」

「分かった。使用人の調書を先に取ろう。」

途中までは順調だったのに、夫人が冷静になった途端、決め手がなく引くしかなかった。

ラルス団長のあんな怒った顔を今まで見た事がなかった。

取調べもにこやかにやってるようで、笑ってはいない。
ある意味怖い。

緊張した。

団長二人の威圧感と夫人の異様さに足が震えそうだった。

やっぱり団長達は凄い。
俺ってまだまだだな。


さっき、シックス副団長とパブロフ商会に行ってきた。

結局、シックス副団長が上手く誘導してくれて、何の薬を買っていたのか聞き出し、最後は購入記録を手に入れられた。

なんか落ち込む…。


「ヤコブ、どうした?」

と団長が声をかけてきた。

「なんか俺はまだまだだなと実感しました。」

「え?なんで?俺、見せてやるよとか言って、失敗しちゃったけど?」

「いえ、ラルス団長は失敗なんかしてません。百歩譲って引き分けです。
俺は団長達の威圧感にも負けそうだったし、シックス副団長のように上手く誘導も出来ませんでした…。」

「ヤコブ、お前、俺達の殺気感じなかったのか?」

「え?威圧感くらいしか…。」

「アハハ、お前は大物になるよ。あんだけの殺気の中、威圧感なんて言えるのは大したもんだよ。」

「殺気を放ってました?俺に向けられたものではなかったから気付きませんでした。」

「ヤコブ、それはとっても凄い事だよ。大丈夫、これから経験すればお前は次の団長になれるよ。」

「え?まさか~!」

「とにかくお前はそのままでいろ。」



二人の団長に褒められたのか、笑われたのか、よく分からないけど、とにかく頑張ろうと思った。













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