帰らなければ良かった

jun

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愛おしい

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ブライアン視点


押収品を精査し、使用人達の聞き取りをしている時、医務室から連絡があった。
シシリーが目覚めたと。

一緒にいたミッシェルが、
「早く行ってあげて!」
と言われたと同時に走り出した。

シシリー、シシリー、

その名をずっと頭の中で呼び続け、医務室に飛び込んだ。

「何事だ!」
と先生が走ってきた。

「先生、シシリーが目を覚ましたって!」

「ブライアンか。一時間程前に目覚めた。」

「どうして、すぐに教えてくれなかったんですか!誰も側にいなかったのに!」

「落ち着け!」

「先生!」

「いいから、落ち着け。
シシリーは泣き疲れて眠ってる。」

「え…」

「わしがシシリーが寝ている間に合った事を話した。そして、子供の事を話した。」

「どうして⁉︎どうしてシシリー、一人の時に言ったんですか!俺に連絡してくれたら一人でなんて泣かせなかった!」

「お前がいたらシシリーは泣けないと思ったからだ。」

「なんで…」

「お前がいてもシシリーは泣いたとは思う。だが、お前の悲しむ姿を見たら、きっとシシリーは全部は吐き出さなかっただろう。
だから、お前が来る前に話した。
シシリーは泣いて、怒って、悲しんだ。
そして、お前に会いたいと言って眠った。
一番最後にお前を想って眠った。
だからきっと、シシリーは立ち直れる。
目覚める時、側にいてあげて欲しいが、今はそれどころではないのだろう?
だから今だけ側にいてやりなさい。
もし、目覚めたら、二人で泣きなさい。」

「先生…」

「さあ、行ってあげなさい。」

「はい、ありがとうございました…」


シシリーの眠る部屋に入る。

ベッド横の椅子に座り、シシリーの手を握る。

ホントだ…泣いた後がある…

シシリー、側にいてあげられなくてごめんな…

一人で泣かせてごめん…

でもきっと先生の言う通りだっただろう。

シシリーと一緒にただ泣くだけの俺を見て、シシリーは“自分は大丈夫だから”と、
“気付かなくてごめん”ときっと謝るだろう。

俺もたくさん泣いたよ。
ラルス団長に泣かされたんだ、ラルス団長も子供を亡くしたそうなんだ、その話しをしてくれた、辛い話しなのに。
ミッシェルは泣きすぎて人相変わってたよ。
シックス副団長が俺達の為に泣いてくれたそうだ。
シシリー、だからシシリーもたくさん泣いていいんだからね。
シシリーは何も悪くないから、謝らないでね。

眠るシシリーに話しかけていた。

すると、シシリーの目から涙が溢れていた。

「シシリー?」

「ライ…会いたかった…」

「シシリー、シシリー、シシリー!」
と怪我に触らないように抱きしめた。

「ライ、やっぱり謝っちゃう…ごめんね、赤ちゃん…死なせちゃった…」

「シシリー、違う、シシリーのせいじゃないよ、あんなに近くに居たのに助けられなかったのは俺だよ、だから俺達二人、親のせいって事にしたらいいよね…」

「うん、私達のせいだね…赤ちゃん…の…為に・・泣いて…いい…?」

「うん、いいよ、俺も泣いていい?」

「うん…一緒に・・・泣いて…」


そして二人で抱き合って泣いた。

先生の言う通りだ。
先生が先に話してくれたから、こうしてシシリーと赤ちゃんの為に泣けるのだ。

シシリー…俺の大切で愛しい人。

そしてシシリーのお腹からいなくなってしまった君、いつか二人の愛おしい子として戻っておいで。













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