帰らなければ良かった

jun

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仇を



エドワード視点


ラルスの様子がおかしい。
いつも飄々と周りを軽くいなしながら、尋問も聞き取りも熟すのに、イザリス公爵夫人に対しては少し余裕がない、とにかく直ぐにでも結果を出さないとと焦っているように見えた。
ラルスの奥方の事は聞いている。
酷い話で、ラルスがイザリス公爵家を憎んでいるのも知っている。
だが、このままラルスが暴走して倒れるのを放って置けない。

同期で、互いに切磋琢磨し、団長になったのもほぼ同時期だ。

俺が行き詰まった時はいつでもラルスが助けてくれた。
ラルスは頭の回転も早く、解決策を最短で見つける天才だ。

今、ラルスはイザリス公爵夫人を追い詰める為の最短の道を見つけ、全速力で走っている最中なのだろう。
だが、そのままではゴールに辿り着けない。
俺が並走して、ペースを落としてやらないと。

今は陛下に謁見を申し出、謁見室で陛下を待っている。
ラルスは、イザリス公爵の離婚を正式なものにする事しか頭にないだろう。
そんな時は、焦る余り口が悪くなる。
なので俺が横にいてフォローしないと陛下にまで暴言を吐きそうだ。

そして、陛下が謁見室に到着した事を、ファンハイド卿が告げた。


「エドワード、ラルス、頭を上げよ、挨拶もよい。
この数日、騎士団は忙しそうだが、団長二人が揃ってどうしたのだ?
家宅捜査はどうなった?」

「陛下、報告が遅くなり、申し訳ございません。家宅捜査を遂行し、無事、男爵夫人を救出致しました。
その際、イザリス公爵夫人により、あらゆる薬を長年与えられ続けた公爵を保護致しました。
先程公爵本人に面会し、夫人との離婚を希望した為、命に関わる事象、事案による強制離婚申請書に公爵自身がサインをしました。
陛下に許可を頂きたく、罷り越しました次第です。」

「急ぐ理由は?」

「イザリス公爵夫人は誘拐容疑、ファルコン騎士団一番隊リーダー、シシリー・フォードの殺人幇助容疑、禁止薬物使用、違法薬物取引容疑がかかっております。
ですが、夫人を恐れ、使用人達からの証言が取れない状態です。
それをいい事に、夫人は使用人に罪を擦りつけております。
これを打開するには夫人という立場を無くしてしまいたいのです。
幸い、公爵が離婚を考えていたので急ぎ陛下の許可を得たく、こうしてファルコン騎士団団長と参りました。」

「それほどの犯罪行為を夫人はしていたのか?」

「後、義理の娘への十年以上の虐待容疑もかかっております。」

「なんと!ユリアンの娘をか⁉︎」

「はい。今は私の妻となっております。」

「そうか、そうだったのだな…。分かった。この離婚は私が認めよう。
ラルス、エドワード、その者をさっさと捕まえよ!」

「「畏まりました。」」



謁見室を出て、

「お前が陛下の前で暴走するかもって思って付いてきたが、大丈夫だったな。」

「いやいや、横にお前が居たから、落ち着けた。ありがとね、エド。」

「だったら良いが、途中、俺要らねえなって思ってたから。」

「いやあ、久しぶりにこんなに畏まった話し方したわ。いつもお前が言ってくれてたからさ。」

「だな。俺も心配だった。」

「エド、これで何の心配もいらず聞き取り調査が出来る。これから一気に行く。」

「ああ、陛下が言った通り、一気に片付けよう。」

急いで団員らに公爵と夫人の離婚が成立した事を報告し、使用人の聞き取りを再開させた。

ふと、ブライアンがいない事に気付き、ミッシェルにブライアンの行方を聞いた。

「あ、団長!シシリーが目を覚ましました!ブライアンは医務室です!」

「目が覚めたのか!良かった…」

ラルスも、

「シシリー、目覚めたのか!良かったな~!」

「しかし…あの事をシシリーが知ったら…。」

「あー、そうだな…」

「ブライアンとシシリーが心配だ。様子を見てくる。」


急いで医務室へ向かった。


「シシリーとブライアンは大丈夫か⁉︎」

焦ってバーンとドアを開けると、

「エドワードーー!患者が寝てたらどうするんじゃ!」

「あ…すみません…」

「シシリーとブライアンは向こうにおる。」

「二人の様子は?シシリーは大丈夫ですか?」

「大丈夫だ。シシリーにはブライアンが来る前に話して思う存分泣いたから大丈夫だ。
今、二人は子供の為に泣いておる。」

「そうですか…。色々ありがとうございました。」

「私にも娘も孫もおる。娘が、孫が、と思ったら、放って置けんわ。」

「シシリーは早くに両親を亡くしています。先生がシシリーの側にいてくれて良かったです。上司としてお礼申し上げます。」

「当たり前の事をしただけだ。」

「では、二人をしばらくお願いします。」

「分かった。」


先生に二人をお願いし、再びラルス達の元へ戻った。

「シシリーは?ブライアンはどうした?」

「団長、シシリーは大丈夫だったんですか?」

ラルスとミッシェルが聞いてきた。

「あの二人は大丈夫だ。シシリーも先生がきちんとケアしてくれていた。
今、二人は子供の為に泣いている。
落ち着いたらブライアンは来るだろう。」

「「良かった…」」

「そうか…泣けたんだな、きちんと。」

「あの二人の子供の仇を取ろう。
証拠を揃え、ジュリアーナを今度こそ奈落の底に落としてやろう。」

今度こそあの女が泣いて、助けてと縋る様を上から見下ろしてやる。

そして、あの女が一番キツい言葉を投げつけてやる、ラルスが。

俺は「クソアマ」くらいしか出てこないが、ラルスなら、言い過ぎだろって思うような言葉を投げつけるに違いない。


少し楽しくなってきた。

「いやらしい、エド、思い出し笑いしてるよ。」

「いや、お前の事を思っていた。」

「え?やめて、気持ち悪い!」

「ほら、さっさと終わらせるぞ。」




その後、やる気を出した俺達は、必要な証言、証拠を揃えた。


明日、ジュリアーナの二度目の尋問する。













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