帰らなければ良かった

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ブライアンが私をエスコートして、中庭に二人で行くと、

「「「「「キャーーーーー」」」」」

と歓声があがった。

二人で固まっていると、

「本日はブライアン様、シシリー様にお越しいただけて光栄でごさいます。
わたくし、サンディー・ヒンギスでございます。いつも主人がお世話になっております。」

「こちらこそ、シックス副団長にはお世話になっております。
本日はお招きに預かり、ありがとうございます。」

「私もシックス副団長にはとてもお世話になっております。」

とシックス副団長の奥様に挨拶をしていると、

「お二人とも素敵ね~、噂なんてやっぱり嘘だったのね~こんなにお似合いですもの~」

「絵画のようにお二人はお美しいわ~。誰があんな噂を流したのかしら?」

「もうすぐご結婚なされるのでしょう?ハワード副団長が浮気したなどと、なんて失礼な事を言う人がいるのかしら。」


聞こえてくる話しから、どうやら私達のなんらかの噂が流れているらしい。

「シシリー様、ごめんなさいね、皆さん、お二人のあまりの美しさに驚いてしまって…。気を悪くしないで下さいませ。」

「いえ、気になりませんから。」

「どうぞ、こちらへ。」

席を案内され、ブライアンが私エスコートしてくれた。


「さあさあ、シシリー様、ブライアン様、私がオススメの紅茶を召し上がって下さいな。」

その時ブライアンが、

「シシリー、髪が乱れてしまったよ」
と言って、解れた髪を耳にかけてくれた。

「「「「「キャーーーー」」」」」


「ありがとう、ブライアン。」

「良いよ、これくらい。」

また周りで、

「お優しいのね、ブライアン様は。シシリー様をあんなに優しい眼差しで見つめて。」

「本当にブライアン様はシシリー様を大切になさっているのね~あら、シシリー様の首元…アレって…まあ!愛されているのね~。」

「羨ましいわ~あんなに優しくして下さるなんて。よっぽどシシリー様を愛しているのね~」

私達の仲の良さを褒め称えている。


一方で、


「わざとらしいわぁ、あんな狡い事をするなんて!」

「どんだけブライアン様に執着してるんだか!」


という声も聞こえてきた。

すると、

「シシリー、気分が悪い。帰ろう。」

「え?どうしたの?」

「あそこにいる女性達が俺の最愛なるシシリーを貶している。こんな所にいたらシシリーが汚されてしまう!」

「待って、ダメよ、ブライアン。私は大丈夫だから落ち着いて!」

「嫌だ。俺の大事なシシリーを侮辱するような奴と同じ空気を吸うのも嫌だ!
でも、あの女性達が正当な理由があってこのような事を言っているのなら、ここに留まるよ。
そこの黄色の人、どうしてシシリーの事を悪く言うのか教えてもらえるか?
答えによっては俺は、お前を許すことはないが。」

「え?私?」

「そうだ、黄色のドレスを着た貴様だ!」

「き、貴様⁉︎」

「俺にとってはシシリー以外、何も興味はない。ほら、早く言ってみろ。」

「わ、わたしは…噂を聞いて…」

「貴様名前はなんだ?」

「わ、私はライラ・イシュリンです…。」

「で?」

「ですから、噂を聞いて、ブライアン様「貴様に名前を呼ぶ許可は与えていない!」」

「あの、ですから、ハワード副団長様がシシリー「シシリーの名前を勝手に呼ぶな!」」

「あの…私は…お二人はもうすぐ別れると聞いたので、そう言っただけです!」

「目の前の私達を見ても、そう言うと?」

「・・・ハワード副団長様が嫌々やっているのかと…」

「こんなにシシリーを溺愛しているのに、そう見えると?」

「…はい」

「まあまあ、なんて事を!わたくし、主人から毎日のように聞いておりますのよ、お二人の仲睦まじいご様子を!
騎士団では有名なお話しなのに、またそのような事を言う方がいらっしゃったなんて驚いてしまいましたわ!
毎日手を繋いで帰り、朝も二人で出勤し、お昼も一緒に食べ、そんなお二人を仲違いさせるような事を言う方を招待してしまうなんて・・・。申し訳ございません、ブライアン様、シシリー様。
わたくし、あのガランド辺境伯様が娘のように可愛がっておられるシシリー様にこんな悪態をつく方を招待してしまって、ガランド辺境伯様に顔向け出来ませんわ!
こんなに恥ずかしい事ございません…」

「私は…別にそんな…」

「シシリー、ブライアン、ここにいたのか。」

突然、伯父様が現れた。

「伯父様⁉︎どうしてここに?」

「エドワードに今日は二人がこちらのお茶会にいると聞いて、連れて来てもらったのだ。突然、押しかけて申し訳ない。」
さもお茶会の事を今さっき聞かされたかのように言う伯父様。

「いいえ、ガランド辺境伯様が来ていただけただけで、光栄にございます。」

「して、そちらの方、ウチの娘に何か問題があると?父親代わりをしてきた身としては、是非問題があるのなら教えていただきたい、なあ、エドワード。
問題があるのならな!」

「はい、私の部下が何か問題を起こしたのだろうか?
シシリーもブライアンもとても優秀な上に、人望厚い二人に問題があるのなら、上司であり、兄でもある私にも責任がある。
ファルコン、イーグル騎士団からあなた方から詳しく話しを聞かせて頂きたいのだが、構わないだろうか?」

「あの、私達は…」

「ここでは皆さんの邪魔をしてしまうな。
シシリー、ブライアン、また後で。
サンディ、邪魔をして済まなかった。」

「サンディ殿、こちらの方々を騎士団までお連れする事になるが、大丈夫だろうか?」

「ガランド辺境伯様、エドワード様、こちらはなんら問題ございません。」

「では、失礼する。さあ、ご令嬢方、行きましょう。」

「あ、あの…」

何が何だか分からない令嬢達は団長に連れられ、行ってしまった。


「一体なんだったの?」

「シシリー、あの女達を騎士団に穏便に連れて行く為のお茶会だ。」

「どうして?」

「さっき言っていただろう、俺とシシリーの噂の事。その噂を流していたのが、あの二人だった。
シシリーには聞かせられないような話しだったんだ。
だからみんなシシリーに気付かれないように誰が噂を流したのか探ってくれていた。
俺も最初は知らなかったんだ。」

「そんな噂、気にしないのに…」

「色々あったから団長は、心配だったんだと思う。
あ、サンディ夫人も色々手伝ってくれたそうだ。」

「え?そうなの?全部知ってたの?奥様。」

「そう、今日は俺達の仲の良さを見せつける為と、あの令嬢達を騎士団に連れて行ってお灸を据えることが目的のお茶会。
だから馬車で喧嘩になりそうになって、焦ったよ。これからイチャイチャしなくちゃならないのに。」

「だから、急にあんな事言ったんだ~!」

「ま、本心だけど。」


その後、サンディ様に改めてお礼を言い、他の皆さんと楽しくお茶会を楽しんだ。



そういえば、噂ってどんな話しだったの?とブライアンに聞いても教えてもらえなかったので、ミッシェルに教えてもらった。

なんじゃそりゃ⁉︎と思ったが、想像力の豊かさに何だか笑ってしまった。


こんな噂を流した理由は、自分は婚約を解消されて、不幸のどん底なのに、たまたま見かけた私とブライアンが小憎らしくなってしまったんだとか。
そして婚約していたのが、イーグルの一番隊リーダーのチャーリーだった事が分かった。
チャーリーは平謝りしていたが、チャーリーは何もしていないので、食堂のスイーツの奢りでチャラとなった。
ちなみにチャーリーは私と同期だ。


チャーリーの事が大好きだったライラは、マメに差し入れを持ってきていたらしい。
その時私達を見たのだとか。
それで、聞き齧った話しを適当に繋げて、チャーリーと別れた後、噂を流したんだそうだ。

本当に想像力が豊かだ。

彼女達は、伯父様と団長に凄まれ、泣いて謝ったそうだ。
彼女達の父親達は自分も睨まれたら大変だと、伯父様に土下座する勢いで謝罪をしたが、

「今回は大目に見るが、次、お前も娘も何かすれば、その時は俺も俺の騎士団も容赦しない。悪い事はしない事だな。」

と伯父様に言われ、それからのイシュリン伯爵、グリア伯爵は真面目になったらしい。



私の知らないうちに、ほとんどが終わった噂騒動はこうして終わった。













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