帰らなければ良かった

jun

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番外編 奪還と返還〜エドワードの純愛

チャーリーの優しさ

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ミッシェル視点


「よお!ミッシェル、久しぶり!」

振り返ると同期のチャーリーがいた。

「久しぶり。相変わらず元気ね、あんたは。」

「まあね、それが取り柄なんで。今から飯なら一緒に食おうぜ。そしてブライアン先輩のスイーツ食べてる顔をニヤニヤしながら見ようぜ!」

「フフ、そうね、ニヤニヤしよう」

二人で食堂に行き、辺りを見回すとブライアンとシシリーがお昼を食べていた。

二人は向かい合わせで食べていたので、ブライアンの顔が見えるテーブルに並んで座った。

「なんで隣りに座るのよ!あっち行きなさいよ!」

「やだよ、ブライアン先輩の顔が見れないだろ!俺の癒しなのに!」

「きも!そんなんだから未だに婚約者出来ないのよ。」

「それを言うなよ~気にしてんのに…」

チャーリーの元婚約者は、シシリーとブライアンの悪質な噂を流した張本人で今は茶会にも顔を出さず、たまに夜会に出るくらいでおとなしくしている。
そのせいで別れたわけではないが、それ以降チャーリーは誰とも婚約していない。

「そう言うお前はどうなんだよ、良い人いないのか?」

「良い人ね・・・・いないかな…」

「お?意味深だな。」

「いないって言ってるでしょ!」

「おい、ブライアン先輩がケーキ食べ始めたぞ!」

上手くはぐらかされてしまい、それ以上怒る事も出来なかった。

二人でブライアンを見ていたら、ふとブライアンが私達を見た。

「そこの二人、何故俺を見つめている。そして何故隣同士で座ってる。」

と聞いてきた。

ブライアン達と私達の距離は結構ある。

必然的に声も大きくなる。

周りが一斉に私達を見る。

「いや、別に…」

「ブライアン先輩のケーキ食べてる姿を二人で見てたんすよ。先輩、乙女みたいに可愛いから。」

「なにぃーー!チャーリー、お前はいつもいつも俺を見てニヤニヤしてるではないか!」

「だって俺、ブライアン先輩の事、大好きなんで。」

「おま、おまえ、そういう事を大きな声で言うもんじゃない!」

「もう照れちゃって、先輩は可愛いなぁ」

とチャーリーが言うと、食堂にいた全員が吹き出した。

ひやかされると思っていたら、チャーリーのおかげで誰からも何も言われなかった。

シシリーは遠くでニヤニヤしてたけど。

ふと、周りを見ると団長とラルス団長もいた事が分かった。


うわっと思ったが、別に団長に見られたところで、私が気落ちする事もないし、団長が誤解したとしても、それを否定する仲でもない。

キシっと一瞬、胸が痛んだが、もうこの痛みともそろそろお別れしようと思っている。

だからといって、次の相手なんて早々出来ないし、出会いもない。

そんな時、実家からお見合いの話しがあった。
私に絶対合う相手だから一度でいいから会ってみないかと言われた。

私も会うくらいなら良いかと軽い気持ちで承諾した。


指定された日に、指定された場所で相手を待っていると、めかし込んだチャーリーが来た。

「ちょっとチャーリー、私お見合いなんだからどっか行きなさいよ!」

「俺も見合いなんだよ、お前が行けよ!」

「はあ?チャーリーが見合い?お相手はどんな人なの?会わせなさいよ!」

「そう言うお前はここで何してんだよ!」

「私はお見合い相手と待ち合わせよ!」

「「・・・・・・・・・・」」

「あれ?場所間違えたかな?それとも時間?」

「私も同じ事考えた。一応聞くけど、チャーリーのお見合い相手って誰よ…」

「俺の相手は・・・・胸に白い薔薇を付けてる・・・・」

「私の相手は胸に赤い薔薇を・・・・」

「「お前か(かよ)…」」

二人で気まずくて俯いた。

「まあ、なんだせっかくだし、少し歩こうぜ。それともお茶でもするか?何か行きたいとこある?」

「少し歩こうか。天気良いし。」

「だな。行くぞ。」

そう言うとチャーリーが私の手を掴み歩き出した。

「ちょっと、手、離してよ。」

「痛えか?じゃあこっち。」

そして手を繋いだ。

「逸れると面倒だろ。行こうぜ、デートだ。」

「で、デートって!誰かに見られたら…」

「俺は別に良い。ミッシェルはやっぱ嫌か?」

「嫌っていうか…恥ずかしいっていうか…」

「ミッシェルってデートした事ある?」

「そんなのないよ!いつもシシリーかカールと一緒だったし!」

「だよな、じゃあ俺が初めてだ、ラッキー!」

「な、何を喜んでんのよ、あんたついこの間まで婚約者いたでしょ!」

「だってあれは親が決めた相手だったから義務で会ってただけだし。好きな女の子とは初めてだし。」

「・・・・は?」

「だから、好きな女の子とは初めてって言ったの!今日の見合い相手は俺が絶対気にいる子だって言われてたけど、期待してなかった。まさかミッシェルだとは思わなかった。」

「チャーリーって…私の事好きなの?」

「まあね。でも婚約者いたし、お前はエドワード団長一筋だし、諦めてたんだよね。
ミッシェルが見合いしようと思ったって事はエドワード団長の事、諦めたって事でいいのかな?」

「・・・・まあね」

「よし!じゃあ俺、グイグイ行くんで!
覚悟して!」

「ちょっと、勝手に決めないでよ。」

「今しかチャンスないだろ。こんだけ待ったんだ、躊躇してる暇なんかない。」

「少し、少し、落ち着いて話したい…」

「分かった。どっか入る?それともベンチで良いの?」

「あんまり、一目のない所が良い。」

「お!ミッシェル、良いの?そんな人目につかない所に俺と二人きりで。」

「何かしたらぶっとばす!」

「はいはい、じゃあ少しだけ歩いて公園行こう。」


公園の外れの方のベンチに座った。


「ごめんな、ミッシェルには急な話しだよな。少し浮かれた。ごめん。」

「ビックリした…全然気付かなかった…」

「そりゃあ婚約者いたんで。意外と俺、真面目なんで。でも、どうしてもあの子の事好きになれなかった。一応、努力はした。
でも、ダメだった。結婚しても幸せにする事もなる事も出来そうになくて、婚約を解消させてもらった。
ずっと好きな人がいるって言ったら、あんな感じになっちゃって、シシリーとブライアン先輩には申し訳なかった。」

「え?チャーリーっていつから私の事好きだったの?」

「会った時から。」

「え?」

「だーかーらー、会った時から。」

「うそ…。」

「なんで嘘つく必要あんの?」

「だって…そんなそぶり…」

「俺はね、意外と誠実なの。婚約者を裏切る事はしたくなかったの。好きではなかったけど。でもいつも見てた。
そして、ミッシェルが誰を見てるかも見てた。」

「・・・・」

「だから俺もこの気持ちは誰にも、もちろんお前にも伝える気はなかった。
けど、この間、ランチ二人で並んで食べた時、ミッシェルは団長に気付かなかった。
今までなら最初に団長を探してた。
だから、ミッシェルが団長への気持ちが薄れた事が分かった。
前だったら俺が隣りになんか座ったら絶対殴ってた。」

「そう…かな…」

「お前は団長に誤解されないよう、男をカール以外誰も近付かせなかった。」

「無意識だった…」

「だろうな。お前は分かりやすかったから。」

「団長にもバレてた?」

「多分。」

「そっか…とっくに振られてたのかぁ…ちょっと・・・ショック…だな…」

「泣くな。お前に泣かれると辛い。」

そう言って私を抱きしめた。

抱きしめられても嫌じゃなかった。
チャーリーに抱きしめられて、私はいつまでも泣いた。


その後、私達は婚約した。













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