私の婚約者の苦手なもの

jun

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分かったかも

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あれからまた1週間後にキャサリンさんが登校してきた。

2週間ほど休んでいたので心配したが、顔を見る限り大丈夫そうだ。

なんだか雰囲気が変わったキャサリンさんは今までのように男子を侍らすこともなく、ひたすら机に向かい勉強していた。

休んだ分の時間を取り戻すように一心不乱に勉強している。
何があったのかは知らないが、今のキャサリンさんは嫌いではない。

女の子の友達もチラホラ出来ているようで良かった良かった!


そういえばビカビカ虫も最近は見かけない。


あの反省文を放課後二人で書かされた日、職員室に提出しに行ったら偶然アンネリッタさんに会った。

ビカビカ虫の危険性を重視し、早めに駆除することになったそうだ。
でも、発生源も出現条件も分からないので、とりあえず土日の連休中に薬剤を撒いて様子を見るようだ。

一応、香水に引き寄せられてるのではないかと報告してアンネリッタさんと別れた。



それからビカビカ虫を見かけはしていないが、
ロイと他愛ない話でケラケラ笑っていたり、昼休みにロイと昼食を食べている時に、女子生徒が倒れる時があるので、私が見つけてないだけでまだいるのかもしれない。


まだまだ油断は出来ない。



「ロイ、最近ビカビカ虫見た?」

「毎日見かけるよ。」

「へ?毎日?」

「うん、毎日。」

「だって大体一緒にいるのに私は見た事ないよ。教えてよ、見つけたのなら。」

「今もいるよ、ほらあそこ。」

「え?どこ?」

「ほら倒れてる。」

「女の子だよー。
あれ、ビカビカ虫ついてる?噛まれたのかな、大丈夫かな。
ん?あっちにも倒れてる人いるよ、あの子もかな…。」

「危ないから移動しよ。」

とロイに手を取られて移動させられてしまった。



アレ?
ビカビカ虫はいつもロイが近くにいた時に出現する。

ような気がする…。

だって両親とも兄とも友達とも、一緒にいてもビカビカ虫の話題になんてなったことない。
もちろん見たこともない。


ロイの警備に忙しくてよく考えてなかったけど、これって重要な事に気付いたのではないでしょうか!


ひょっとして、
ひょっとしたら、

ロイが原因なのでは…

ロイが…
ロイが…



「・・・・・・・」

「リリー、どうしたの?」

「私、分かったかもしれない…」


「ロイ!今すぐ服脱いで!裸になって!」

「ハァ?裸って…なんで?ここで?どうして?」

「私、分かったの!
ビカビカ虫はいつもロイの近くに出るでしょ?
ひょっとしてロイに寄生してるんじゃない?見えない所に寄生してロイの身体と心を蝕んでるんじゃない?早く確認しないと!脱いで、早く!」

寄生されてる姿を想像したら手の震えが止まらない…。

頭にとまってるのも、肩にとまってるのも、そんなことはどうって事はない。

だが、寄生はダメだ…!

…寄生。

言葉の響き自体もダメだ!

ロイが母体だったら…。

ロイがビカビカ虫の母だったら…。

ロイがお母さん?

お父さん?

ダメだ、気持ち悪い…。


いやいや、ロイを助けなければ!

早く確認して医者に見せなければ!



「…リー、リリー、リリー!
リリー、落ち着いて。大丈夫?深呼吸して。スーハーして。」


「ロイ…」


「戻ってきた?急に裸になれって言ったと思ったら、なんだかブツブツ言いながら動かなくなったんだよ。大丈夫?落ち着いた?」


ポロポロと涙が出た。止まらない。


「ウワーーン、ロイが死んじゃうーーー」


「え?なんで?」


「ヒック…ヒック……ビ、ビカビカ…ビカビカ虫…ビカビカ虫が…産まれるーーウワーーン」


「え?産まれるの?何から?え?リリーが産むの?」


「ちが・・違う…ロイが産む…ヒック…」

「オレ?」


ロイの服をびしょびしょにしながら号泣した。


あまりにも目立つので医務室に連れて行かれて少し休むことにした。


「大丈夫?」


「大丈夫…。ごめんね…服、汚しちゃった。」


「そんな事気にしなくていいよ。それよりどうしたの、急に。話し出来る?」


「うん、ありがとう。
あのね、ビカビカ虫の出現条件の事考えてたら、いつもロイが近くにいる時なのが分かったの。それでね…」


「うん、それで?」


「それでね、ロイが発生源なんじゃないかと思って…ひょっとしたらロイに寄生してロイから産まれてるんじゃないかと思って、身体を確認しようと思ったの。」


「うんうん、それで?」


「それで、寄生されてると思ったら、怖くなって…。
でも、ロイがそれで死んじゃったらと思ったら…ロイがビカビカ虫のお母さんで…でもロイは男だからお父さんかなとか思ったり…そのうちなんだか分からなくなっちゃって…。」


「うん、それから?」


「でも早く医者に連れて行かないとって…そしたらロイの声が聞こえて…涙が止まらなくなった…。」


「そういうことね。リリーは優しいね。
そこまで僕を心配して泣いてくれたんだね。ありがとう。」



ロイが抱きしめてくれた。
服が濡れて冷たいけど、暖かい。



「じゃあ、裸になるけどいい?」



「へ?」










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