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どういうこと?
しおりを挟む「私からは以上だ。何か質問はあるか?」
お父様もお母様も、誠実なクォーツ伯爵にこれ以上の罰を与える事など出来ないのだろう。
「ワソニック伯爵はクォーツ伯爵に何か言う事はないのか?」
と殿下。
「言いたい事はたくさんありましたが、クォーツ伯爵は誠心誠意謝罪して下さいましたので、私達からは何もございません。」
「ありがとうございます、ワソニック伯爵。
それからリリーナ嬢、女性の、それも首になど傷つけた事、娘の変わりに謝罪させて下さい。
本当に申し訳ございませんでした。
傷が残らない事だけが心配ですが、こちらからは慰謝料等を払わせて頂きたいと思っております。
今後、お会いすることもないかと思いますが、リリーナ嬢がこの先幸多きことお祈りいたします。」
と優しい笑顔で言ってくれたクォーツ伯爵。
「ありがとうございます。謝罪を受け取ります。」
と言うことしか出来なかった…。
クォーツ家には、我が家に慰謝料を払うだけで、その他のお咎めはなかった。
その後、クォーツ伯爵は、イレーネさんと面会する為、護衛と共に静かに出て行った。
誰もしばらく、口を開かなかった。
ただ、殿下が一言、
「キース殿が居なくて良かった…。」
と言った。
本当にそう思う。
そして、私達も退室した。
馬車に向かってる途中、お父様が、
「なんだか、同じく娘を持つ父親としていた堪れなくなった…私も甘いな…。」
と苦笑した。
お母様も、
「私も、大事なお子さんの名前をあんな風に言ってしまって…悪い母親ね…。」
と反省していた。
こっちが悪い事をしたような気分になっていた時、後ろからロイが追いかけてきた。
「ワソニック伯爵、夫人、少しリリーナ嬢と話しをさせて頂いても宜しいでしょうか?」
「いいわよ、ちょっと気分が沈んでいた所だから、ロイ君が元気付けてあげて。アラン、いいわよね?」
「ああ、ロイ君ならいいよ、帰りは送ってくれるんだろ?」
「もちろんです。」
「ところで、ロイ君、いつまで他人行儀な呼び方するの?いつもみたいに呼んでよ、気持ち悪いわ。」
「一応殿下の側近としてあの場にいたので。分かりましたよ、マリア母様」
「うんうん、それそれ!小さい時のロイ君が、『マリア母ちゃま』って呼ぶのが堪らなかったのよ~」
「確かに可愛かったよな~『アラン父ちゃま』って足に抱きつかれた日には泣いたなぁ~」
「やめてくださいよ、早く帰って休んで下さい!」
と言ってロイが二人の背中を押していた。
さっきまでの沈んでいた気持ちがなくなったのか二人とも元気に帰っていった。
「ロイ、どうしたの?もう帰れるの?」
「まだ分からない、リリーに会いたかったから追いかけてきた。」
ボッと音が出そうな勢いで顔が赤くなったのが分かった…。
「リリー、顔真っ赤。可愛い。」
「ロイ、恥ずかしいよ…。」
最近自分の気持ちに気付いたからかロイの甘さが辛い、顔が真っ赤になるし、ドキドキが止まらなくなる…。
「少し歩こう」
と手を繋ぐ。
無言が耐えられず、
「ビカビカ虫はカミキリムシだったんだね…。
今まであんなに見えない虫と戦ってきたのに、こんなにあっさりビカビカ虫が駆除出来るなんて…。
私の十数年を返してって感じだね。
ところで、ロイはどうしてビカビカ虫がここまで怖かったの?」
と何気に聞いてみた。
「怖くないよ」
「え?」
「だから怖くはないよ」
「克服したの?」
「虫は別に好きでも嫌いでもないよ」
「だって、いつも怖いって走ってきてたよね?」
「うん、怖かったから。」
「ん?ん?どういうこと?」
「言っても怒らない?」
「そう言った時は、大概怒られる内容の時だよね?」
「中庭にあるベンチに座って話そ。」
と言って中庭に連れて行かれた。
途中、昨日のお礼を言ってなかった事を思い出し、
「そういえば昨日送ってくれてありがとう!
眠っちゃってたから重かったでしょ?
汗もめっちゃかいたみたい。
そこらへんベタベタだったでしょ?」
「あーーーーーーっと、どうだったかな~気にならなかったし、リリーの汗なら舐めれるよ!」
「ヤダ!絶対舐めさせない!」
そんな会話をしながら中庭に向かった。
二人で舐める、舐めさせないと言い合っているうちに中庭のベンチに着き腰掛けた。
「ロイ、本当は虫が怖くはないの?」
「怖くないけど、別の虫が怖かったんだ。」
「別の虫ってビカビカ虫の他にいるの?」
「あのね、虫って、リリー以外の女の子のことなんだよね…。」
「え⁉︎どうして女の子が虫なの?女の子から逃げてたってこと?」
「リリーを騙すつもりはなかったんだよ。
追いかけ回す女の子が怖くて、リリーの所まで逃げてたのは本当だからね。」
「じゃあ、殺虫剤も虫たたきも意味なかったの?
私は意味なく殺虫剤片手に虫の気配を探しながら騎士のようにロイを守ってたって事?
酷い!こんな恥ずかしいことない!」
「リリー、最初はみんなに引かれてたよ、怖がられてたし、見てて面白かった。」
「笑い事じゃない!
最初にそう言ってくれたら良かったのに!
虫じゃなくて女の子だったとしても、ちゃんと守ったのに!」
「そうなんだけど、可愛かったから言えなかった!」
「じゃあ入学してからずっと、女の子に追いかけ回されてた?」
「うん、だからいつもリリーにくっついてた。リリーにくっついてると誰も寄ってこないからね!」
「私は虫除けだったのか…そっか…そうだよね、私なんて虫除け程度だよね・・・」
「ん?リリー?」
「もう帰る…。」
「待って待って、ちゃんと真面目に話すから、待って!」
「・・・・・」
「ごめんね、騙してた事が気まずくてふざけてしまった。本当にごめん。
リリー、最初から説明するから聞いて。
リリー、初めて会った時から大好きだった。
3歳の時には誰にも渡さないと決めたんだ。
5歳の誕生日の日に、両親にリリーと婚約したいとお願いした。
リリーが良いと言えば良いと言われて、リリーにお嫁さんになってって言ったんだ、覚えてる?
リリーは、良いよって言ってくれたから婚約出来た。
それからはリリー以外の女の子は気持ち悪くて嫌だった。
でも、嫌なのに寄ってくるし、触ってくるし、香水臭いし、ギラギラアクセサリー付けてて、虫みたいって思ったんだ。
それで、リリーのところに逃げて、
“虫、怖い”って言っちゃったんだ。
それからは、リリーのところに行けば、リリーが必死に僕を守ってくれるし、リリーを抱きしめられるから、いつもリリーのところに走って行ってた…。
ごめん、リリー、
でも、リリーが大好きなのは昔からだよ!」
私は虫除けのためだったんだと思ったら悲しくなって、帰ろうと思った。
そしたらロイが一気に小さい時からの私への想いを語り出した。
ビックリしたけど、恥ずかしいやら嬉しいやらで動けなくなってしまった。
「リリー、聞いてる?大丈夫?」
「だ、大丈夫。ロイの気持ちが嬉しいのと、恥ずかしいのとで動けない…。」
「嬉しい?リリー、嬉しいの?」
「うん、嬉しいよ、だって私も大好きだもの!」
「リリーーーーーーーー‼︎」
ロイが抱きついて来た。
私もロイの背中に手を回した。
さっきまでの悲しい気持ちは無くなった。
ふと、視界に動くものが入った。
遠ーーくの廊下をルイジェルド殿下が疾走していた。
殿下はいつでも忙しそうだ。
この後は二人で手を繋いで帰ったけど、ロイは帰って大丈夫だったんだろうか?
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