48 / 125
どうして
しおりを挟むロイ視点
夕食は、母上の体調があまり良くないので、父上、叔父上、僕の三人で食べた。
あの親子は別邸に置いて来たと叔父上が言った。
その言い方が、新婚の感じがせず違和感が残った。
「ロナルド、ごめんな、タニヤが迷惑かけた。」
と叔父上が謝った。
「叔父上はどうしてあの人と結婚したんですか?」
気になって聞いてしまった。
父上と叔父上が顔を見合わせた。
「お前には言っておこう。いいな、レイモンド。」
「ああ、構わない。」
そして父上が、叔父上が結婚するまでを教えてくれた。
話しはこうだ。
叔母上を亡くし、子供も居なかったので再婚する気は全くなかったらしい。
叔母上が亡くなって一年後、知人にロザンナを紹介された。
別に付き合うつもりも、結婚する気もさらさらなかったので、紹介はしてもらったが、それきりだったそうだ。
しばらくして、ある夜会に出席した際、偶然ロザンナに会ったのだそうだ。
挨拶をして少し雑談してから離れようとしたら、何故か頭がクラクラしてきて、立っていられなくなった。
近くにいたロザンナが、
休憩出来る部屋まで送ると肩を貸し、叔父上を部屋まで運んだが、部屋に着いてからは記憶が曖昧でよく覚えていないらしい。
翌日、帰って来ない叔父上を心配して、屋敷の者が探しに来て、叔父上を見つけた。
裸で寝ている叔父上とロザンナを。
それから急いで叔父上を起こし、状況を聞くと、部屋に入ってからは覚えていないと。
目覚めたロザンナは泣きながら、
叔父上がロザンナを襲ったと、
何度も中に精を放ったと言ったという。
その後はとりあえずロザンナを屋敷に連れ帰り、執事と共にロザンナの話しをもう一度聞いた。
医者を呼ぼうと言えば、泣きながらここでは嫌だ怖いと言われてしまえば、無理強いも出来ず、
後日改めてこれからの事を話そうとその日はロザンナを帰した。
意識が無かったとはいえ、無理矢理襲ったとなれば大問題だ。
頭を抱えた叔父上は父上に相談し、話し合いの場に同席してもらう事になった。
父上は冷静だった。
叔父上の意識混濁がまずタイミングが良過ぎる事と、ロザンナと会った直後の出来事という事、それらを鑑み、薬を盛られたであろう事は分かった。
それが睡眠薬か媚薬かは分からない。
しかし、行為をした痕跡が確かにあった為、
荒立てる事も出来ない。
妊娠の可能性もある。
即呼び出したが、体調が悪いと延びに延ばされ三週間経ってようやく話し合いとなった。
女性もいた方がいいだろうとなり、母上も同席した。
やって来たロザンナは、開口一番、
「私、妊娠しました。」
と言ったそうだ。
三人ともやられた!と思ったという。
元々妊娠していたのだろう。
ギリギリ誤魔化せるタイミングまで待っていた、それが今だったのだ。
「こんな事になるなんて・・私これからどうすれば・・・」とホロホロ泣いたという…。
母上はこの時の事を、
「安い演劇を見ているようだったわ、態とらしくて!」(後日談)
ホロホロ泣いたとは涙が出ていないのに、さも泣いているような様子。
と言っていた。(後日談)
初手で間違ってしまった。
泣いても騒いでも医者に見せとけば、おそらくその時には妊娠していた事がハッキリ出来たのだ。
しかし、こうなってしまってはどうしようもなかった。
生まれてこなければ誰の子か分からない。
籍を入れるしかなかった。
仕方がないので、急いで諸々の手続きを済ませ、籍を入れた。
ところが籍を入れてすぐに子供が流れてしまったという。
またしても三人はやられた!と思ったという。
なんか怖‼︎
籍を入れてすぐに離婚は体裁が悪い。
それで今に至るらしいが、
籍を入れてすぐロザンナとタニヤが屋敷に来たが、叔父上は早々に根を上げた。
ロザンナの浪費とタニヤの態度の悪さに。
父上と相談して、籍を入れて一年後まで我慢して離婚し、それまではタニヤの教育と称して別邸に隔離しようと。
それで家に来たわけだ。
それにしても凄いわ、この親子…
何気に聞いた事がこんな長編の話だったとは。
ま、近寄らなければいいだろうと思っていたら、
「ロナルド、悪いが、明日だけでいいからタニヤを学院に連れて行ってもらえないか?」
と叔父上。
「明日だけだ、頑張れ!」
と父上。
「・・・・・・・・・・・分かりました」
翌日、タニヤと登校し、職員室まで連れて行った。
馬車の中では、タニヤが一人で騒いでいたが、ガン無視していた。
急いで教室に戻ると、リリーが登校していた。側に行こうとしたら、先生が来たので自分の席に行ったが、リリーが目を逸らしたような気がした。
授業中も何回かリリーを見ても、ずっと俯き、目が合わない。
授業が終わり、
リリーの所に行こうとしたら、リリーが突然教室から飛び出して行った。
急いで追いかけると、いつの間にか隠密も追いかけて来ていて、隠密が連れて来るというので待つことにした。
おかしい。
どうしてリリーは目を合わせない。
どうして教室を飛び出した。
考えても考えても分からない。
遅いな、と思い歩き出す。
すると、正門に向かって走る、隠密がいた。
それもリリーを抱いて。
急いで正門に向かうとワソニック家の馬車が出た後だった。
隠密、どういう事だ…
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
767
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる