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しおりを挟むルイジェルド視点
ロイが事故に遭ったと知らせが来たのは、オレと別れてすぐだった。
カトリーヌにも知らせ、少数の護衛を連れて二人で病院へ行った。
グランディ公爵に事故と怪我の状況を聞く。
馬車の前に子供が飛び出してきたのを避けようとしたら横倒しになったようだ。
リリーちゃんの所に向かっている途中での事だ。
ついさっきまでロイの子供の話をしていた。
いつものくだらない話をしていた。
ロイは今日リリーちゃんに会っていないから急がせたのかもしれない。
オレがもっと早く帰らせれば…。
後悔しても遅い。
気持ちを切り替えて、回りを見ればリリーちゃんがいる。
泣いているかと思えばじっとしている。
ただ黙って立っていた。
カトリーヌが駆け寄り声をかけるが反応がない。
アラン殿もマリア夫人も声をかけるが何も答えない。
誰が声を掛けてもただ立っている。
代理も来たらしく、リリーちゃんに駆け寄る。
やっぱり反応はない…
カトリーヌに今日はリリーちゃんにロイは会っていないから急いだのかもしれないと告げた。
もっと早く帰らせていればと拳を握りしめた。
カトリーヌと代理は抱き合って泣いていた。
リリーちゃんを見ていられない。
なんて声をかけていいか分からない…
治療が終わり、医師からの説明を侯爵が聞いている。
頭を強く打ち、意識が戻らないと分からないと言う。
出血もかなりあったようだ。
カトリーヌがリリーちゃんに語りかけていた。
大丈夫だと、必ず目覚めると…
グランディ侯爵夫妻も憔悴している。
ワソニックの方もリリーちゃんに付きっきりだ。
いつも明るく笑っているリリーちゃんが真っ白な顔で黙ったまま立っている姿は、
居た堪れない。
アラン殿が動かないリリーちゃんを抱いて帰って行く。
カトリーヌと代理はまだ抱き合って泣いている。
グランディ侯爵夫妻もレイモンド殿も誰も動かない。
ロイ、頼む、起きてくれ。
オレのくだらない話しを突っ込んでくれるのはお前だけだぞ。
リリーちゃんをあんな風にしてどうする。
早く起きろ…起きてくれ…頼む、ロイ…
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