私の婚約者の苦手なもの 番外編

jun

文字の大きさ
上 下
5 / 143
卒業式編

ルイジェルド視点

しおりを挟む



ルイジェルド視点



明日の卒業式に挨拶をずっと考えている。
原稿は何回も書き直した。

自分でも驚く程、楽しんだ学院生活。
ロイとリリーちゃんとの交流、
薬物混入事件、
リリーちゃん襲撃事件、
カトリーヌとの出会い、
『愛でる会』の活躍、
ロイの怪我、
父上のトラウマ、
そして父上の襲撃事件、捕縛、
この一年だけでも中身が濃すぎて纏められない。


息抜きに甥っ子の顔を見に行った。
乳母といる甥っ子のユージンはまだ産まれてから三ヶ月しか経ってない。
だが最近は笑うようになって可愛い。

カトリーヌとの子を想像し、顔がニヤける。

そこへ兄上がやって来た。

「ルイ、いたのか。」

「明日の挨拶が上手くまとまらない…息抜きにユージンの顔を見に来てた。」

「珍しいな、意外と得意だろ、無難な原稿。」

「無難にしたくない…」

「お前の学年は面白そうなのが集まってたからな。伝えたい事がたくさんあり過ぎるのも問題だな。
ルイらしい言葉でやればいいんじゃないか。お前は俺と違って素直だからな。」

「俺らしくか…ありがとう、兄上!戻ります。」


ユージンの部屋を出て、私室に戻る。


何の思い入れがなければ原稿なんかすぐ書けただろう。
卒業が寂しいと思っている今は、それが出来ない。
あの場所は俺らしくいられた。
だったらあの場所で感じたままに話そう。
原稿はいらない。


スッキリして明日の卒業式の為に早く寝た。


朝、何故か父上も母上も兄上までもソワソワしている。

「どうかしたんですか?何をそんなにソワソワしてるんですか?」

「何をってルイ、お前の卒業式だからだ!」

「は?どうして父上達がソワソワしてるんですか?」

「だって私達、あなたの学院のお話し聞いていたでしょ、そのお話しの中の人達に会えるのよ、ソワソワするわよ。
リリーナちゃんやロナルドは知ってるけど、『愛でる会』の人達に会えるでしょ?
あなたを助けてくれた人達がどんな風にあなたの挨拶を聞くのか、楽しみなの!」

「兄上は来ないんですよね?」

「・・・そうだな…」

「じゃあ、何にソワソワしてるんですか?」

「それは・・・お前が卒業するから…だよ。」

「ふう~ん、そうですか、じゃあ僕はもう行きますから。父上、母上、後ほど。学院で。」

「頑張って、ルイ!」

「ありがとう、母上!」




〈ルイジェルドがいなくなってから〉

「どうしましょ、もう私泣いてしまいそう。」

「そうなのだ、私もだ。」

「ハア~父上も母上も今からそれでどうするんですか?」

「ヘンリーもこっそり来るのだろう?」

「ええ、行きますよ。」

「ルイに見つかったら何か言われるぞ。」

「見つかりませんから!」


      ******



学院に着いて、学院長と卒業式の打ち合わせをし、卒業式が始まるのを待った。


父上達が入場し、卒業式が始まった。

学院長挨拶、在校生挨拶が終わり、俺の番だ。



堅い話し方をここではしたくなかったので、
話し方を変える事を断り、話し始めた。

入学したて頃の自分の思っていた事、
期待もしていなかった事、
友人を作ろうと思っていなかった事を話した時、父上達を見た。
悲しそうな顔が見えた。
その後ろにチラッと兄上が見えて、
嬉しくなった。


ロイと出会った事、
リリーちゃんと仲が良くなった事、
薬物混入の事、
カトリーヌとの出会い、
『愛でる会』の活躍、
カトリーヌへのプロポーズ、
ロイの怪我、
話す度、笑ったり、ニヤけたり、切なくなったり皆んながするのを見ていたら、泣きそうになった。

ここにいる全員が同じ気持ちなのだと分かり嬉しかった…


また、父上達を見たら号泣していた…
何やってんだか…


本当にこの学院に通えて良かったと、
皆の事は忘れないと、
伝えて、挨拶を終えると、

大歓声が上がり、拍手喝采の様子は感動した。

舞台を降りると父上と母上が駆け寄り抱きついた。
国王と王妃が号泣しながら
「大きくなってーーーー」
と泣くのはどうなんだろうと思ったが、
喜んでいるようなので、ホッとした。
兄上は?と探したがもういないようだった。
お忍びで来たんだろう。


カトリーヌの所に行きたいが中々行けない。

やっと行けると思ったら代理が突進してきた。
泣いて酷い顔だ。
でも、コイツは口は悪いが、コイツがいるといつも笑っていた。
お礼を言うと、また泣き出しカトリーヌに助けを求めたら、カトリーヌも酷い有様だった。
近くにいたロイとリリーちゃんに助けを求めたら、ロイが、

「殿下、本当に良い挨拶でした。」
と言われ、堪えきれずに泣いた。


本当に良い学院生活だった。

良い友人も出来た。

最愛の婚約者も出来た。






最後にホールを出る時、

今までありがとうと思い込めて、
頭を下げた。





「ありがとうございました。」













しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

雑多掌編集v2 ~沼米 さくらの徒然なる倉庫~

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:653pt お気に入り:6

オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,740pt お気に入り:621

危険な森で目指せ快適異世界生活!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,215pt お気に入り:4,133

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

BL / 連載中 24h.ポイント:32,084pt お気に入り:2,853

グラティールの公爵令嬢

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:18,690pt お気に入り:3,350

処理中です...