私の婚約者の苦手なもの 番外編

jun

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結婚式編

ロナルドの父 カイル視点

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最近毎日のようにアランが我が家にやって来る。
こっちはこっちで結婚の準備で忙しいというのに。
シェリルが率先して動いてはいるが、キース様の邪魔が入り、なかなか進まないらしい。


アランは来る度ロイを捕まえて、
「ロイ君、家に住まない?別邸建てるから!」
と唆している。

ロナルドはリリーちゃんが喜ぶなら即座に向こうに行ってしまいそうだから、
「アラン!ロナルドがその気になったらどうする!こいつは本気にしそうで怖いから!」

と毎回繰り返している。


アランはリリーちゃんの “嫁ぐ娘から父親への挨拶” から必死に逃げている。
泣いてしまうからだそうだ。
泣いて終わらせればいいものを、いつまでも逃げている。

我が家は息子なので、娘を持つ父親の気持ちは分からないが、確かに愛する我が子から
“今まで育ててくれてありがとう”なんて言われたら泣く、絶対泣く。

娘いなくて良かった~

なので、アランの訪問を許している。

「アラン、もう諦めたら?」

「嫌だ!リリーがいなくなるって実感するのが嫌だ!」

「そんな事言ったって、もうすぐだろ!」

「そうだけど…」

「そういや、結局大聖堂になったんだな、結婚式。」

「そうなんだよ、父上が勝手に陛下の許可取って決めたんだよ!マリアは怒るし、あの人何なの?バカなの?」

「お前の父親だろうが。陛下も出るんだろ?」

「そう!二人で盛り上がってそうなったらしい。マリアにもリリーにも言ってない…。」

「当日のお楽しみかぁ~後でマリア殿に怒られるな。」

「だな…怒るかな?」

「怒るだろ。イアンだぞ、結婚式に何言うか不安だわ!」

「イアン、国王なのに僕らと関わると何故かお馬鹿さんになるからなぁ」

「でも良かったよな、イアンのトラウマ治って。」

「だな。そうじゃなかったら結婚式出たいなんて言わなかったな。」

「ハロルドんとこは家族全員にしたんだな。息子はなんでだ、ロナルドと親しかったか?」

「温泉で仲良くなったらしい。」

「どんどん増えるな。ウチに入りきるかな。」

「お前のとこの夜会用のホール使えば大丈夫だろ。」

「最初は内輪でって話しだったのに…。卒業生全員呼ぶ勢いだぞ。」

「何とかなるだろ。」

「ハア~、お前もう帰れ、やる事山積みなんだから。」



アランが帰った後、結婚式の後のパーティーの見直しをしながら、息子の事を考えた。

ロナルドは見た目が良いから女の子には人気があった。だが一切興味はない。
男の子も寄っては来てくれるが、ロナルドが相手にしない。
リリーちゃんに近寄らせたくないから。
だから同性の友人がいなかった。

本人は全く気にしていなかったが、親としてはやっぱり心配だった。

学院に入学してもそれは変わらなかったが、
殿下と親しくなってから徐々に友人が出来てホッとしたものだ。

ハロルドの息子のサイモンとも親しくなっていたとは。
それにリリーちゃん以外の異性の友人なんて出来ないと思っていたら、ハロルドの娘のカトリーヌ嬢とアルバート殿の娘のシンシア嬢と友人になっていたのは驚いた。

三歳でリリーちゃんを見初め、五歳でプロポーズしたロナルドは、ひたすら彼女だけを見つめ想い続けた。
我が息子ながら少し怖い。
一途というか、執着が半端ない。

ついこの間まで、ロナルドのねっとりした愛情にリリーちゃんは気付いていなかった。
リリーちゃんにとってロナルドは仲の良い幼馴染みだった。
学院での事やタニヤの事がなかったら未だに、好意はあっても愛情にはなかなか進まなかっただろう。

本当に結婚しても子供なんか作れるのかと心配したが、我らの後押しで二人は大人になったようだが。

リリーちゃんはアランに似て何をしても憎めないのだ。
なんとなく許してしまう。
アランもそうだ。
肝心なとこは鈍いのに、たまに鋭い。
なので誤魔化せない事が多い。
誰かと揉めた時、適当に誤魔化そうとすると、透き通った瞳をキラキラさせて、
「そうなの?どうして?」
と聞かれれば、
「ハアーだから…」と説明させられる。
「だったらこうすればいいんだよ。やってくる!」と走り出す。
それをこっちが止めると、
「だって、こうした方が早いよ!」
と言って結局解決してしまうのだ。
相手もあのキラキラにやられてるに違いない。

そしてそれを受け継いでいるのが、リリーちゃんだ。
全く同じ行動をする。

ロナルドが、
「待て待て」
とリリーちゃんに言ってるのをよく聞く。
私もアランに
「待て待て!」とよく言っている。

あの小悪魔コンビは侮れない。


あ…ヤバい…考え事し過ぎた。

早く仕事片付けないと。
明日もアランは来るだろうから。









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