私の婚約者の苦手なもの 番外編

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新婚編

ルイジェルド視点

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なんて事をしてたんだろう…

サイモンの言う通りだ。
俺は悪いと思っていなかったのだから。

噂も知らなかった。
そんな噂をカトリーヌはいつから聞いていたんだろう…

俺はカトリーヌの前でそんなにマルガリータに好きにさせていたのか…

サイモンは、マルガリータがカトリーヌから俺を奪うつもりだと言っていた。

そうか…マルガリータは俺の事を男として好きだったのか…
それを俺は兄としての好意と勝手に思っていた…
だから俺はマルガリータの好きにさせていた。
城の皆もマルガリータの好意が分かるほど、分かりやすく態度に出していたんだろう…マルガリータは…。
俺だけ気付かず…。


カトリーヌ…泣いているのか…
一人で泣かせていたのか…俺は…。


ダメだ、泣く暇なんて俺にはない。
泣く資格もない。
時間もない。

サイモンは今日を含めて後三日と言っていた。
もう二日と少ししかない。
考えなくては。
カトリーヌを絶対失わせない。
考えろ。


先ず原因の排除だ。

マルガリータには今後一切関わらない。
すべてが終わった時に最後にハッキリ告げよう。それまでは決して二人では会わない。


次だ。
信頼…どうする?
今は全く信頼なんてないだろう…。


頭を下げるくらいでは納得しない。

王位を捨てる…これもダメだ。
捨てたらカトリーヌと結婚出来ない。

手紙を送る…だからなんだとなるだろう…

皆を集めてマルガリータにハッキリ言うか…
それではダメだ、カトリーヌに恥をかかせるし、また傷付ける…

タニヤの時みんなは何をした?
タニヤを懲らしめる為にたくさんの人が手伝ってくれて問題を解決してくれた…
あの後、カトリーヌは告白した俺に頷いてくれた。
それは俺がタニヤに一切靡いていないとカトリーヌが思ってくれたからだ。

今は?
カトリーヌは俺もマルガリータを好きだと思っているんだろう…
だったら何を言っても信じない。
口だけだと思うだろう。

逆に考えて俺だったらどうされたら信頼する…
謝ったって許さない。

手紙を貰っても…読まないな、俺だったら。

何を言っても時間が経って冷静になってからじゃないと話しも聞かないだろう…


どうすればいい…時間が足りない。

どうやったって間に合わない。
そんな簡単に信頼なんか回復しない。



だったら今やる事は一つしかない。


サイモンが淹れてくれた冷めた紅茶を一気に飲んでからサイモンに言った。



「付いてきてくれるだけでいい。イーガー家に行く。」




サイモンは黙って付いてきてくれた。


馬車の中でも話さない。


俺もこれからの行動が正しいか分からない。
余計怒らせる事になるかもしれない。

でも今俺に出来るのはコレしかない。
これしか思いつかない。
これを認めてもらえなければ先に進めない。



そしてイーガー家の門の前に馬車が着いた。



門の前で馬車を降り、門番に告げる。

「ルイジェルド・マクドリアだ。イーガー侯爵は御在宅だろうか。先触れも出さず申し訳ないが至急お目通り願いたい。」

「はい…あの…」

と言って、後ろのサイモンを見ているが何も話さないので、急いで屋敷の中へ行った。

出ては来ないだろう…


中から執事が出てきた。

「ルイジェルド殿下、ご挨拶申し上げます。わたくしはこの屋敷で執事をしております、ギルバートと申します。
恐れながら主人は只今外出しております。
後日改めてのご訪問をお願い致します。」


「急だったので気にしないでくれ。申し訳ないが、至急イーガー侯爵に伝えなければならない事がある。帰ってくるまで此処で待っていてもいいだろうか。邪魔にはならないよう馬車は帰す故、いいだろうか?」


「主人がいない為お嬢様しかおりません。
お嬢様は今、体調を崩されている為殿下のお相手も出来ません。
屋敷の中へご案内も出来ません事、屋敷を代表して謝罪致します。
殿下がそれで宜しいのであれば、どうぞお待ちになって下さい。」

「済まない、ありがとう。」


門から離れ、屋敷を見上げた。

カトリーヌは何処にいるのだろう…

何をしているんだろう…


こんなに近くにいるのに会う事も出来なくしたのだな、俺は…。

ハロルドは中にいるだろう。

サイモンもそれは分かっていて側にいる。

俺がどうするか見極めているんだろう。


見上げた屋敷の窓に人影が映る。
アレは…

・・・カトリーヌ…


気付いたんだろう…窓からすぐ離れた。

カーテンがひかれた。

あそこにいるのだな…
もっと顔を見たいなぁ…
会いたいな…
いつから顔を見ていない…結婚式から二日しか経っていないのに、もうずっと会っていない感覚だ。

会いたいな…
もう一度顔を見せてくれ、カトリーヌ…


ずっとそんな事ばかり考えていた。


どれくらい時間が経ったのか分からない程待っていた。

もう外は暗い。
屋敷に灯りが灯っている。


カトリーヌの部屋のカーテンは閉じられたままだ。


食事はしているのだろうか…

ちゃんと眠っているのだろうか…

俺の事を想ってくれているだろうか…

もう会いたくないと思っているのだろうか…

開かないかな、カーテン…



すると影が映った。
開けはしない。
でも、カーテンの向こうにカトリーヌがいる。
カーテンを握って立っている。

迷わせる程傷付けたのだな…俺は…


ごめん、ごめん、ごめんな…カトリーヌ…


泣いているのだろう…微かにカーテンが揺れている…

あんなに泣かせてごめん…


涙が溢れた…泣く資格もないのに…

最愛と言いながら、あんなに傷付けて、
泣かせて、婚約破棄されても仕方ないのかもしれない。
でも、カトリーヌごめん、俺は諦めないよ。

絶対諦めないから、待っていてくれ、頼む…


カトリーヌはカーテンから離れた…


あー会いたいなぁ、抱きしめてあげたいなぁ…


その時、門が開いた。

見ると、カトリーヌがいた。


「動かないで!そこに居てください。
話しを聞きます。」


「…カトリーヌ。今まで済まなかった。
こんな事言っても納得いかないだろう。
だから、必ずカトリーヌとイーガー家に信じて貰えるよう考える。
必ず、またカトリーヌの隣りに立てるよう、どうやったらまた、信じてもらえるようになれるか絶対に考えるから、俺に時間をくれ。下さい。お願いします。
今は何を言っても、何をしても許してはくれないだろう。
例えカトリーヌが許しても、侯爵やサイモンは許さないだろう。
だから必ず、信頼してもらえるように考え行動するから。
それまでの時間を貰えないだろうか。
俺は必ずカトリーヌと結婚する。
その為に頑張るから、頼む、もう少し時間を下さい。」

「・・・分かりました。父と相談してお返事致します。今日はもうお帰り下さい。お願いします。」

「・・・・・分かった。
…ちゃんと食事はしてるか?眠れているか?

ごめん…ごめん…カトリーヌ…ごめん…。
待っていてくれ、必ず迎えに来るから!」


カトリーヌも俺もボロボロ泣いていた。


「ルイ様もお身体に気をつけて。おやすみなさいませ。」

「もう会えないみたいに言わないでくれ、またって言ってくれ、カトリーヌ!」

「ルイ様・・・・待っていますから…」


カトリーヌは走って行ってしまった。


「必ず…迎えに来るから…」とカトリーヌの背中に言ったつもりだが、声が出なかった…



サイモンが
「馬を連れてきますか、馬車で帰りますか?」


「馬を借りれるか…」


「分かりました、少々お待ちを。」
と言ってサイモンが門番に馬を用意させている。



「殿下、カッコ悪いですね。
でも、ギリギリ日にちは延ばせたでしょう。
まだこれからですよ!」

と言って笑っていた。


少し何か伝わったんだろうか…だったら良いなと思いながら城まで二人、馬を走らせた。






















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