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新婚編
ロナルド視点
しおりを挟むイーガー家から帰ってすぐ殿下に手紙を書き、返事を貰ってくるように頼んだ。
リリーと待っていると殿下の許可が出たので明日は二人で殿下に会いに行こう。
その夜は大人しく寝た。
リリーがしっかり枕をバツにしていた。
バツにはしないでって言ったのに…。
朝になり、朝食を取ってからリリーと支度し城へ向かった。
殿下は執務室に居た。
眠っていないのか、眠れないのか、目の下にクマが出来ている。
「おはようございます、殿下。意外と元気なようでなによりです。」
「おはようございます、殿下。
良かった、眠れていないのですね、スッキリした顔だったらどうしてくれようと思っていました。」
「お、おはよう。その様子だと知ってるんだな…俺達の事。」
「昨日知りました。結婚式の時のサイモン殿の様子が気になったので父に何かあったのか尋ねました。」
「どこまで知ってる?」
「ほとんど知ってるかと。
昨日、隠密の所に行きましたから。」
「え?昨日行ったの?・・・俺は屋敷に入れなかったのにな…。」
「入れる訳ないじゃないですか。
貴方何やってるんですか?隠密の事見てなかったんですか?王女に釘付けでしたか?
僕はタニヤの時は気づきませんでした。
ですが、今は見ていたら分かったと思います、友人なので。
なのにあんなに側にいて貴方が気付かないなんて考えられません!何に気を取られていたのですか?王女の事で頭がいっぱいだったのですか?
貴方は最愛を失くすところだったんだぞ!」
「・・・・・・」
「反論は聞きません。
貴方が隠密をどう想ってるのかは分かってますから。
王女なんて爪の先程も想っていない事も分かっています。
今どれだけ落ち込んでるかも分かりますから。
だから、今は貴方がこれからどうするのかを確認しに来ました。
まだ決まっていないなら、僕達も一緒に考えます。その為に来たんです。
僕達は貴方達が別れる未来なんて見たくありませんので。」
「オオオオオーーなんか一気にロイが喋ったからビックリした…」
「・・・・・・心配かけて済まない…」
「こっちは新婚ホヤホヤなんですよ!
まだ結婚休暇中なんですよ!
くっだらない心配かけないで下さい!」
「…はい、ごめんなさい…」
「殿下、物凄く心配しましたよ。
トリーに会えなくて大丈夫かなとか、別れたらどうしようって思って泣きそうになりましたよ。
なのにトリーの話し聞いたら、腹が立って仕方なかったんですが、今ロイが全部言ってくれたので私からは何も言いません。
しかし、殿下って頭良いのに大事な所で抜けてますよね。」
「リリーちゃんのそういう最後に毒を吐くのはアラン殿そっくりだね…一番傷つく…。」
「毒なんて吐いてませんけど?」
「そういうとこね、自分では気付いてない毒…。」
「今日はサイモン殿はいないのですか?
父はサイモン殿がなんとかしてるんじゃないかって言ってました。」
「何でもお見通しだな…。
さっきまでいた。一度帰ると帰った。
サイモンがいなかったらダメになってた…。
冷静には考えられなかったな…助かった。」
「よくサイモン殿が助けてくれましたね、結婚式の様子じゃかなり怒ってた感じでしたが。」
「怒ってた。物凄く怒られた。
けどカトリーヌの為に一緒に考えようって言ってくれた。
未来の義弟と呼んでくれた。」
「…そうですか。ならもう大丈夫ですね、で、これからどうするんですか?」
「まだ考えが纏まらん…広まった噂もなんとかしないとならんし…煮詰まっていた…。
とりあえず期限は無くなったようだけど、カトリーヌの為に早くなんとかしないとと思って焦ってしまう…。」
「まだまだいつもの殿下には程遠いですね。何か変なもの食べたんですか?いつからポンコツになったんですか?」
「まあまあ、ロイ、殿下も昨日から怒られたり泣いたりしたんだから仕方ないよ。」
「まあ、隠密の屋敷の前でどんだけ泣いたんだか知らないけど一日泣いてたんじゃ頭も働きませんね。」
「一日中は泣いてねえよ!」
「それで殿下、そのマルボウズ王女様はまだ帰らないんですか?来てから毎日毎日一緒にいたんでしょ、今日は行かなくても大丈夫なんですか?来るんじゃないですか、そろそろ。」
「あーーリリーちゃんはマルガリータを敵認定したんだね…」
「会った事もないので敵も何も無いですが、明らかにマルボウズ王女はトリーに対して悪意を持って接してますよね?気付かなかったんでしょうけど、殿下は。」
「…はい、すみません。」
「そっちを先になんとかしないとダメなんじゃないですか?
臭い匂いは元から断たなきゃダメなんですから!」
「リリー、段々イライラしてきてるよ、大丈夫?」
「なんか王女様がここにまだ居て、トリーよりも殿下の近くにいる事に腹が立ってきた。」
「なるほど。確かにそうだね。今隠密はここにはこれないんだから、婚約者なのに。」
「分かった、分かった、頼む、勘弁してくれ。俺が悪い。もうホントに辛い。
俺もカトリーヌに会いたい…
顔が見たいんだ…抱きしめてあげたい…。
頑張るから…助けてくれ…。」
「「・・・・・」」
「すみません、殿下、少し苛め過ぎました。」
「ごめんなさい、殿下、私も意地悪でした…。」
「ホントに済まない…正直誰にも泣き言が言えなくてしんどかった…。
二人が来てくれてホッとした…。
協力してくれるか?」
「「もちろん!」」
こうして『カトリーヌ奪還作戦対策本部』が
殿下の執務室の別名になった。
仮の対策室は僕らの別邸になり、この日は解散となった。
帰る直前に言い忘れていた事を思い出した。
「あ!忘れてた。隠密から伝言です。
“ずっと待ってますから。愛しています”
だそうです。」
「早く言えよ、そしてそれはリリーちゃんに言わせろよ!」
「嫌ですよ、なんで殿下にリリーが愛してるなんて言わなきゃならないんですか。」
といつもの調子に戻った殿下に少しホッとした。
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