私の婚約者の苦手なもの 番外編

jun

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新婚旅行編

ジュリア視点

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ジュリア視点


剣を持って飛び出したが、トーマスがドラゴンに捕まっていた。
気を失っているようだ。
ハンスも横にいて、トーマスの名前を呼んでいる。

上では、アラン様が必死にトーマスを呼んだ時、ドラゴンが何か音を出した。

アラン様は、それに必死に答えている。

何か喋ってる?

「ハンス、行くぞ」

「は、はい」

二人で、二階の奥の部屋へ急ぐ。


すると、ドラゴンがトーマスを部屋の中へ投げ込んできた。
今だと思い、行くと言えば、
アラン様はダメだと言う。
まだ、子供なんだと言う。

そして、後は頼むと言うとドラゴンが滑空してアラン様を掴み、舞い上がった。


アラン様は気を失ったのかダランとしている。


部屋は風圧で壊されている。
隣りの部屋も同じだろう。

チャールズ様は呆然としている。

とにかく、トーマスをハンスの部屋に運び、チャールズ様も連れて、話しを聞いた。


「明け方、何か声が聞こえて目が覚めた。
アランも同じく聞こえたのだろう、目が覚めていた。
何か聞こえなかったかと言っていた。
耳を澄ますというか…耳に神経を集中させての方が近いかな…
その後、二人で窓を開けて外を見た。
トーマスも開けていたので、聞こえたのだろう。
何か聞こえたかと聞かれたので、アランが聞こえたと答えた。
少しずつ、探したとか、見つけたとか聞こえたと思ったら、もうそこにいた。
アランがトーマスに逃げろと叫んだ時に、
ドラゴンが鳴いたんだ。
一瞬、動けなくなって、次見た時はトーマスが捕まってた…。
アランが必死に叫んだが、トーマスは気を失っていて返事はなかった。
ドラゴンはトーマスを連れて行くと言った。
それで、アランがトーマスを返してくれって、ドラゴンに頼んだら、
少し、悩んだ感じがした。
ドラゴンがトーマスと遊ぶって言ったら、
アランがここでは遊べないって、
自分が一緒に遊ぶからトーマスを返してと言ったら、投げ返した。

そういえば、リリーナの名前も出していた…
そして、アランは連れて行かれた…。
私は止めたんだ、でも、アランは…
トーマスを守る為ならなんでもやるって…。

私の可愛い甥っ子が…連れて行かれてしまった…。
リリーに大丈夫だと言ったのに…
私が二人を見ると言ったのに…
私が…」

「チャールズ様、ドラゴンとは意思疎通が出来ていたのですね?」

「ああ、会話は出来た。」

「私達には言葉とは認識出来ませんでした。」

「そうなのか…」

「おそらく、ドラゴンに選ばれた者しか聞こえないのでしょう。我々には鳴き声が聞こえるまで何も聞こえませんでした。」

「そうか…トーマスは、そうだ、トーマスは大丈夫なのか?トーマス、トーマス!」

「見た限り割れたガラスなどで少し切り傷はありますが、骨も折れている箇所はなさそうです。
飛び上がった風圧に耐えられなかったのでしょう、気を失っているだけです。」

「そうか…アランは攫われ、トーマスまで大怪我を負わせてしまったら私は…。
私が卵など持ち帰ったばかりに…。」

「チャールズ様、落ち着きましょう。ここにいて下さい。
私とハンスが宿屋の主人に話してきますので。」

「分かった…済まない、よろしく頼む。」


部屋を出て、

「ハンス、悪いんだけど急いでハロルドにこの事を知らせて。
私は宿屋に話しをつける。
あの鳴き声は住民全員が聞いただろうから、これから五月蝿くなるかもしれない。
誰か送ってもらって。」

「…はい。」

「ハンス、しっかりしな!私達がしっかりしないとダメよ!」

「すみません…行ってきます。」



ハンスをイーガー家に向かわせ、起きてるだろう主人の所へ向かい、事情を説明する。
ドラゴンとは言わない。

何か大きな生き物が襲ってきたと、説明し、
修復の相談は後ほどするという事、
宿屋はしばらく貸切にしてもらう事にした。


二人の部屋へ戻ろうとすると、上で揉めてる声がする。
急いで上がるとトーマスが暴れていた。

「放せ、父さんを助けに行かなきゃ、父さん、父さん、今行くから、放せ、父さん、父さん、」

バチン!トーマスの頬を叩いた。


「トーマス、落ち着きなさい。」

「ジュリアおばさんがいたのに、どうして、どうして、父さんが…俺が捕まってたのに、何で…おばさん…父さんを…助けて…お願い…お願いします…父さんを…助けて下さい…」

「トーマス、落ち着いてね。
アラン様は必ず助けるわ。
アラン様はドラゴンと話してた。
アラン様は自分が行くからトーマスを返してって、言ったの。
ドラゴンはおそらく言葉が分かるのよ、
だからアラン様に酷いことはしない。
ドラゴンはあなたと遊びたかったらしいの。
まだ、産まれたばかりの赤ちゃんのようなのよ。
アラン様は私にドラゴンは産まれたばかりの子供なのだと仰ったわ。
だから、手を出すなと。

トーマス、大丈夫だから落ち着いて。
身体は大丈夫?痛い所はない?」

「身体は何処も痛くない。上に上がってすぐ気を失ったみたいだ…。
声が、声が聞こえて、探してるって、それで、見つけたって聞こえたら、すぐそこにいた。
父さんが逃げろって叫んでたけど動けなかった…。
俺が気を失わなかったら…俺が…話しをすれば…父さんは…。」

「トーマス、貴方のせいじゃないわ。
アラン様は貴方を守ろうと必死だったわ。
あんな巨大なドラゴンが目の前にいても逃げ出さなかった。
ドラゴンに優しく語りかけてたわ、アラン様らしいわね。
そんな優しいアラン様にドラゴンが酷い事なんてしないわ。
ちゃんと話しも聞いてくれるわ。
だから、トーマスはアラン様を探しに領地に行くのよ。
貴方とチャールズ様しか言葉は通じないのだから。
しっかりしなさい。
でも、さすがというか、誰も悲鳴をあげなかったわね、凄いわ。」

「怖くはなかったんだ…なんでか知らないけど…」

「そうだな、怖いとは思わなかった。」

「そうですか…とりあえず少し休みましょう。部屋はめちゃくちゃなので、新しい部屋を用意させます。
ここは貸切にしますので。」


たまたま、宿泊している人が私達だけなのは良かった。


まだ夜が明けたばかりだ。

これから忙しくなるだろう。

二人を休ませないと。



こんな事になるなんて思っていなかった。

ハロルドにあんな大口叩いて出て来たのに、
この有様…情けない…。

アラン様…どうかご無事で…。
トーマス、リリーナちゃん、マリア様、必ずアラン様を貴方達の元に戻しますから。













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