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新婚旅行編
カイル視点
しおりを挟むイアン達との打ち合わせがひと段落した後、屋敷に戻ってきた。
リリーナ達が心配で一度ワソニック家に顔を出そうと行ってみた。
朝ほどではなくとも、やはり明るい雰囲気ではない。
「大丈夫かい、リリーもマリア殿も。」
「父様、何かお父様の事は分かりましたか?」
「いや、まだ何もない。でも今夜にもワソニックの領地に着いたハロルドの部下が報告に来るかもしれない。遅くても連絡はしてもらえるように言ってあるから、何かあればすぐ知らせるよ。」
「そうか…。」
「ロナルドはまだ?」
「はい、まだ帰ってません。」
「マリア殿の様子は?」
「お母様は…お父様の執務室にいます。」
「…そうか。シェリルは?」
「落ち着いたのでシェリル母様には戻ってもらいました。」
「リリーは何か食べたのかい?マリア殿も食べたんだろうか?」
「あまり…食欲がなくて…」
「ダメだよ、アランが帰ってきた時、リリーがゲッソリしてたら心配してしまうよ、軽い物でも、果物でも口に入れなさい。」
「そうですね、少し食べてみます。」
そこへ、ロナルドが帰ってきた。
「リリー、ただいま、父上、只今帰りました。マリア母様と母上は?」
と聞いてきたので、リリーが説明している。
ほぼ、私と同じく事を聞いている。
「しばらくはリリーはこっちにいるんでしょ?」
「うん、いいかな?お母様一人には出来ないから…」
「いいよ、僕もここから仕事に行くから。
一度戻って、荷物持ってくるね。」
「分かった。私、お母様に食事しようって誘ってくるね。」
「うん、分かったよ」
そう言って、リリーはマリア殿の所へ行った時、ロナルドが、
「ハンスからサイモン殿にドラゴンの鳴き声が聞こえたと報告がありました。陛下から聞いていますか?」
「いや、家に帰ってきていたから、聞いてない。また、鳴いたのか?」
「そうらしいです。まだ、何も向こうの連絡はないですが、ひょっとしたら今夜何か連絡があるかもしれません。」
「分かった。遅くても連絡はくれるように言っているから、何かあれば分かるだろう」
「分かりました。鳴いたという事は何か気に入らない事があったのだろうと言っていました。もしかすると…暴れたのかもしれません…」
「・・・そうかもしれんな…。何かあったのなら今夜必ず連絡がある。
その心算でいよう…何もない事を祈ろう。」
ロナルドは荷物を取りに、戻って行った。
言っておいた方が良いだろうか…。
しかし、何もなかったら、要らぬ心配をかける。
ただ鳴いたのかもしれない…だが…。
そんな事を考えているうちに、二人が側に来ていた。
「カイル父様、ロイは?」
「荷物を取りに行ったよ。さあ、何か食べよう。マリア殿も、何か口に入れよう。」
食堂に連れて行き、二人が食べるのを見ていた。
「カイル父様は食べないのですか?」
「私は二人がちゃんと食べるか見張っていないとね!」
「父様はお仕事をしてきたのです、食べて下さいね。」
「本当よ、カイル様も食べて。見られてたら食べられないわ。」
「そうかい、じゃあ、食べようかな?」
「・・お父様はちゃんと食べてるのかな…」
「アランはドラゴンと木の実でも一緒に探してそうだな。きっと、マリア殿に“ドラゴン飼ってもいい?”って聞いてくるぞ!」
「フフ、言いそうね、アランなら。」
「だろう?アイツは犬でも猫でもなんでも拾おうとするからな。」
「そうよ、何度ダメだって言ったか分からないわ、子供達も一緒になってお願いするように誘導するのよ、アランってば・・・・」
「・・・お母様…」
「良いんだよ、泣くのを我慢するのは身体に悪いよ、泣きたかったら泣いたらいいよ。」
「・・・カイル様…アランは何処にいるのでしょうか?領地にいるなら私も行っては行けませんか?少しでも近くにいたいのです!
呼んだら、ドラゴンも気付いてくれるかもしれない。庭に置いてあった時、子供達と話しかけたりしていました、私の事も覚えてくれているかもしれません!だから、私を領地に行かせて頂けませんか?
カイル様…アランの側に行きたい…」
「マリア殿、卵の世話をしていたの?」
「はい、子供達と卵を拭いたり、話しかけたりしていました。」
「そうなんだね、その時は卵だとは思わなかったんだよね?」
「ええ、ただの石だと思っていました。それが何か?」
「いや、ただの石だと思っていたのに大事にしてたんだなぁと思ったからね。」
「なんだか可愛らしく思ったんですよね、不思議な事に。」
「あ!私も何となくしか覚えてないけど、お兄ちゃんと石と三人で遊んでる感覚だったような気がする!卵の中から話しかけてたのかも。」
「そうかもしれないな、話しも出来るし、ドラゴンはこの家のみんなが好きなのかもしれないな。」
「だったら私が相手するから、お父様返してほしい!お兄ちゃんと交代で相手すれば、お父様返してくれるかもしれない!」
「だったら私も仲間に入れてよ、私も相手くらい出来るわ!子供なのでしょう?私の方が適任よ!」
「だったら交代制にしようよ、朝番、昼番、夜番で。」
「それでいきましょ!」
「いやいや、まだ行けないから、何か報告来てからじゃないと行けないから!」
「でも、領地で暴れてもいないなら行っても大丈夫じゃないの?」
「報告が来てから考えよう、ね?」
「今日、何も来なかったら明日行く準備しましょ!」
「いやいや、イアンに一度確認するから、待って!お願い、先走らないで!」
「父様、じゃあ、陛下に聞いて下さい、お願いします!」
「あーーーー聞くだけね、分かった?イアンがダメって言ったらダメなものはダメだからね!」
「分かった、父様!」
「とりあえずそういう事でね、カイル様。」
「ハアー元気になったのは良いけど、ホントに先走らないでよ!」
と朝とは比べ物にならないほど和やかになった所にロナルドが戻ってきた。
「陛下から、登城の要請がありました。父上、僕、リリー、マリア母様です。」
「「「・・・・・」」」
そうか…何かあったんだな…
「さあ、支度しよう、私はこのまま行けるので、マリア殿とリリーは支度しなさい。」
二人はさっきまでの元気な様は無くなっていた。
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