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新婚旅行編
サイモン視点
しおりを挟むクロのお披露目が終わってから、陛下が何か悩んでいるとヘンリーが言っていた。
ちなみに、クロに会いに行ってから、普段は様を付けるなと言われ、誰もいない所では呼び捨てするようにしている。
「父上は退位するつもりなんじゃないだろうかと思っているんだが、サイモンはどう思う?」
「まだ早いかなとは思うがな。ヘンリーはどうなの?」
「父上が決めたならそれを受けいれるが…」
「自信がないのか?」
「自信がないのではない。ただ父上達のように俺の周りには人がいない…。」
「ハア?いっぱいいるでしょうが!殿下も俺もロナルドもトーマスも。ついでにハンスも!何か不満でも?」
ヘンリーはハッとした顔をして、
「そう言われてみればそうだな…。」
と答えた。
「大丈夫ですよ、貴方は貴方のやり方でこれからやれば良いんです。それを支えるのが俺達です。」
「そうだな、少し不安になった、済まない。ありがとう、サイモン。」
「まあ、あの人達は異常な程仲が良いですからね、まあ、陛下の王太子時代は大変だったみたいなので仕方ないですけど。」
「そうなんだよな、今は平和だが、父上は何度も命を狙われていたらしいからな。」
「まあ、それでウチの親は結婚出来たんですけどね。」
「そうらしいな。そういえばサイモンの彼女また父上に呼ばれてたぞ。」
「え?また?」
「ああ、内緒でまた何か描いてもらうようだ」
「あの人達はいつも何を話してるんでしょうか、何を話してシンシアを呼ぶ事になるのか分からない。」
「お前、彼女に後で聞いてみろ、何を描いたのか。」
「聞けば教えてくれるでしょうが、知りたくないような…。」
「分かったら教えろよ!」
「はいはい」
とこんな会話をした後シンシアに会ったら聞きたくなるものだ。
シンシア曰く、
「これは男と男の友情の話しなんです!おいそれとは言えません!陛下の優しさに私は感動し、涙が溢れんばかりでした!」
とよく分からない話しだったが、友情とくればやっぱりあの人達の誰かの姿絵なのだろう。
ロナルドに聞いてみれば、
「父上はいつも誰かの姿絵を見てはニヤニヤしていますよ、僕は見ていませんが。」
と言い、
殿下に聞けば、
「父上は少し前までアラン殿のを持っていたが、今は別のものなのか?」
と言う。
カトリーヌの所に来ていたリリーナちゃんにアラン様の事を聞けば、
「そういえばお母様が、男ってよく分からないわねって言ってたけど、その事関係ある?」
と言っていた。
俺も母に、
「ハロルドは家族の姿絵は持ってるわよ。それを見てたんじゃないのかしら?ヤダ、誰の姿絵を持っているというの!聞いてこなくちゃ!」
と父が帰るのを手ぐすね引いて待っていた。
帰ってきた父に、
「ハロルド、姿絵を見せなさい!一体誰の姿絵を持っているの!」
と詰め寄ってから、
「あ~なるほど、これを後生大事に持ってるわけだ…貴方達の友情ってちょっと特殊だものね…」
と言ってあっさり引いた。
まあ、大体分かった。
おそらく、全員が描かれた姿絵なのだろう。
どんだけ大事なんだか、と思ったが、果たして俺達は姿絵なんか持つだろうか…
持たないな。
でも…ヘンリーやトーマス、殿下、ロナルド、ハンス、そして俺が全員描いてある姿絵…。
ちょっと欲しいかも…。
ヘンリーに誰の姿絵だったのか教えたら、
「少し…ほんの少しだけ…俺らのも欲しいな…」
と言った。
なので、シンシアに頼んでみた。
「何?今流行ってるの?トーマス様にも頼まれたんだけど?」
「へ?トーマス?」
「陛下達が持ってるの知って、自分達のも描いて欲しいって。トーマス様とハンスさんのを先ず描いてからとは言ってるけど。
何?男同士の愛が流行ってる?それはそれで良いけど!」
と言っていた。
トーマスもハンスも欲しくなったのか…。
結局俺達も欲しくなってしまった。
なんだかんだで、陛下達の厚い友情が羨ましかったんだろう。
いつか俺達もああなれたら良いなと思った。
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