山村貞子と、終わってる男の愛のライフプラン ――

優心

文字の大きさ
15 / 33

第十五章:受肉の叫びと誤解

しおりを挟む
 健一の「連打(ピストン)」が、ついに臨界点を超えた。 彼の放つあまりにも身勝手で強烈な生命エネルギーが、貞子の霊体の深淵をかき乱し、ついにその喉から、数十年の沈黙を破る「生きた声」を搾り出した。

「この……好き勝手に、してッ……!!!」

 それは地を這うような呪詛ではなく、屈辱と快感に震える、紛れもない「19歳の少女」の怒声だった。

「え!! しゃべった!!!」

 健一は驚きのあまり、腰の動きをピタリと止めた。顔を近づけて、黒髪の間から覗く貞子の、怒りで血走った(しかし潤んでいる)瞳を凝視する。

「うおー、すげえ! 最近のAIラブドールは罵倒機能まで付いてんのかよ! しかもこれ、合成音声じゃなくて、生身の声にしか聞こえないぞ。オプション費用いくらだよ、これ……」

 健一は怖がるどころか、最新技術への感動に目を輝かせた。

 女性怨霊協会:実況席の崩壊
 モニターを見ていた怨霊たちは、貞子の「叫び」と健一の「解釈」のあまりの乖離に、一斉に椅子から転げ落ちてズッコケた。

「ギャハハハハ! 貞子が喋ったのに! 命懸けで怒鳴ったのに! 『オプション費用いくら』って何なのよコイツ!!」 口裂け女が涙を流してひっくり返り麻雀牌の散らばった床をバンバン叩く。

「……もう、見てられませんわ」 メリーさんがこめかみを押さえて溜息をつく。 「貞子さんのプライドは、もう微塵も残っていませんわね。渾身の抗議を『最新の罵倒機能』で片付けられるなんて。わたくしなら、今すぐ呪殺して、その魂を磨り潰してやりたい気分ですわ。」

「ポポポ……(でも、あんなにハッキリ喋れるなんて。貞子さん、完全に『受肉』が完了したんじゃないでしょうか)」 八尺様が驚きを露わにする。

「……そうね。怒りの感情は、生きている証拠。健一の『生』が、彼女の死の属性を完全に上書きしたのよ。もう今の彼女は、怨霊というよりは、『ものすごく呪術才能がある全裸の家出少女』ね」 花子さんがズームした貞子の顔を写メりながら冷静に分析する。

 マンションの一室:終わらない勘違い

 貞子は、健一の「AI感嘆」を目の当たりにして、眩暈を感じていた。 何を言っても、この男は「機能」だと思い込む。何をしても、「最新技術」だと思い込む。自分の存在そのものを「機械」として消費しようとするこの徹底した無機質な視線が、逆に彼女の防衛本能を麻痺させていく。

「お姉さん、今のセリフ、もう一回言ってよ。ゾクゾクするわ。……あ、もしかして特定の部位を突っつくと、また罵倒してくれるのかな?」

 健一は「実験」と称して、再び腰を動かし始めた。

「……ッ、……ああッ、もうっ!!」

 貞子は激しく首を振り、健一の肩にガブリと噛み付いた。痛みが走り、健一は「おわっ!」と声を上げる。

「噛みつき機能まであんのかよ! 痛えな、もう……最高だわ(笑)」

 健一の、もはや「無敵」とさえ言えるポジティブな勘違いが、貞子の最後の矜持をじわじわと、しかし確実に溶かしていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...