悪役令嬢をプロデュースして、お礼に最高の玉の輿を紹介してもらいますわ

ちゅんりー

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やってきましたわ、王宮!

学園の豪華さも相当なものでしたが、やはり本丸は違いますわね。

見上げれば、金箔が惜しげもなく貼られた天井。足元には、一歩踏み出すごとに私の男爵家の年収が削れていくような、フカフカの最高級絨毯。

「(ああ……鼻血が出そうですわ。この柱の金箔、爪で少し剥がして持ち帰ってもバレないかしら……)」

私はセシリア様の背後に控えながら、怪しく指を動かしていました。

「ルミエル、顔が怖いわよ。今日は王妃様との非公式な面談なのだから、粗相のないようにしてちょうだい」

セシリア様が、緊張で少し声を震わせながら私をたしなめました。

「お任せください。私の顔面は今、二十四時間体制で『慎ましやかな忠臣』を演じておりますわ。それよりセシリア様、背筋を伸ばして! 貴女のその鎖骨には、国家の品格が乗っているとお忘れなく!」

「国家の品格……。ええ、わかったわ!」

私の適当な激励に、セシリア様は力強く頷きました。

私たちが案内されたのは、王宮の中でも特に警備が厳重な「静寂の間」。

そこで待っていたのは、慈愛に満ちた微笑みを浮かべる王妃様……ではなく、漆黒の執務服を完璧に着こなした、あの男でした。

「ようこそ、ヴァルーア公爵令嬢。……それと、その腰巾着」

「……クロード閣下。なぜ、貴方がここに?」

セシリア様が目を丸くしました。私も、自分の金持ちセンサーが「警報」を鳴らしているのを感じて、一歩後ずさりました。

「王妃様は急な公務で席を外されている。代わりに私が、君たちの近況を伺うことになった。……セシリア嬢、殿下との仲は良好なようだな。学園の報告書が、君への称賛で埋め尽くされているぞ」

クロード様は、手元の書類をパサリと置きました。

「それは……すべて、ここにいるルミエルのおかげですわ」

セシリア様が誇らしげに私を紹介しました。やめてください、そんな「私が黒幕です」と言わんばかりの紹介は!

「ほう。やはりそうか。……セシリア嬢、君には王宮の庭園で、殿下が待っている。少し席を外してくれないか? 私はこの男爵令嬢と、少々『専門的な』話をしたい」

「エドワード様が!? わかりましたわ! ルミエル、後でね!」

セシリア様は、殿下という言葉に釣られて、あっという間に部屋を出て行ってしまいました。

残されたのは、私と、この国で最も危険で最も裕福な男。

「……さて。二人きりになったな、ルミエル・ダントン」

クロード様が立ち上がり、ゆっくりと私に近づいてきました。

私は壁際に追い詰められ、逃げ場を失いました。これがいわゆる「壁ドン」というやつでしょうか。いえ、彼の場合は「資産の暴力」による圧迫ですわ。

「か、閣下。専門的なお話とは、一体何のことでしょう? 私、難しい税金の計算などは、自分の裏帳簿以外ではやりたくありませんの」

「ふん。君の裏帳簿のことはもういい。……今日、君をここに呼んだのは、他でもない。君の『最終的な目的』を再確認するためだ」

クロード様の手が、私の頬の横の壁に置かれました。

「君は、セシリアを王妃に押し上げ、その礼として『最高の玉の輿』を狙っている。……違いないな?」

「ええ、そうですわ! それが私の生きる道! 汗水垂らして働くのは、金貨を数える時だけで十分ですの!」

私は震える声で、堂々と宣言しました。

クロード様は、私の目をじっと見つめました。その瞳は、冷徹な中にも、どこか熱を帯びているように見えます。

「なら、条件を変更しよう。ルミエル、君が探している『理想の旦那様』の条件を、もう一度言ってみろ」

「えっ? ですから、若くて、顔が良くて、性格は私を甘やかしてくれて、何より死ぬまで贅沢三昧させてくれる資産家ですわ!」

私が答えると、クロード様はフッと鼻で笑いました。

「若さ、美貌、資産、そして君を飼い慣らす包容力……。……すべて、私で足りるのではないか?」

「……はい?」

私は一瞬、耳を疑いました。

「閣下、今、何と仰いました? 扇風機の音でよく聞こえませんでしたわ(この部屋に扇風機はありませんが)」

「聞こえていただろう。……他人に紹介してもらう手間を省いてやると言っているんだ。君がセシリアを完璧にプロデュースし終えたら、その時は……君の身の振り方は、私が決めてやる」

クロード様の顔が、これまでにないほど近くに寄ってきました。

高そうな香水の香りと、圧倒的な支配者のオーラ。私の金持ちセンサーは、もはや計り知れない数値を叩き出し、オーバーヒート寸前です。

「(ちょ、ちょっと待ちなさいルミエル! これはチャンス? それとも、一生この仕事中毒の男にこき使われるという罠!?)」

「どうした、返事がないな。金貨の計算でもしているのか?」

「あ、当たり前ですわ! 閣下と結婚して、私が得られるメリットとデメリットを、今まさに天秤にかけているところですの!」

私が叫ぶと、クロード様は今度こそ、心底おかしそうに声を上げて笑いました。

「くははは! 素晴らしい! この状況で損得勘定をする女など、君くらいだ」

クロード様は私の髪を一房掬い、その先端に軽く唇を寄せました。

「いいだろう。じっくり計算するといい。……ただし、答えが出るまで、君を他の男に渡すつもりはない。……わかったな?」

彼はそれだけ言うと、満足げに部屋を出て行きました。

私はその場にへなへなと座り込み、激しく鼓動する胸を押さえました。

「(な、なんですの……あの男……。あんなの、反則ですわ……。あんなに顔が良くて金持ちで、その上あんな口説き文句まで……!)」

私の「働かない生活」へのロードマップに、巨大な「宰相」という名の山脈が立ち塞がりました。

これは、当初の予定よりもずっと、複雑で刺激的なゲームになりそうですわ!
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