悪役令嬢をプロデュースして、お礼に最高の玉の輿を紹介してもらいますわ

ちゅんりー

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約束の放課後、夜の帳が下りた学園の裏庭。

私は、昼間にセシリア様から手渡された金縁の封筒を握りしめ、噴水の前に立っていました。

「(落ち着くのです、ルミエル。相手はあのクロード閣下。この国の経済を牛耳り、金庫の鍵を星の数ほど持っている男。……でも、性格はあの通りですわ!)」

私は深呼吸を繰り返し、脳内の算盤を高速で弾きました。

もし、この縁談を断れば、これまでの私の苦労は水の泡。しかも、閣下を敵に回せば、私の男爵家なんて一晩で破産させられるかもしれません。

逆に、この縁談を受け入れれば——一生、金貨の山で溺れる生活が約束されます。

「……天国か地獄か。いいえ、どちらにせよ金色の絨毯が敷かれているのは間違いありませんわね」

私が独り言を呟いたその時、カツン、と硬い靴音が石畳に響きました。

現れたのは、夜の闇に溶け込むような黒の外套を羽織った、クロード様でした。

「待たせたな、ルミエル」

「……閣下。セシリア様からの紹介状の相手が閣下だと知って、正直、腰が抜けそうになりましたわ」

私は精一杯の虚勢を張り、扇子で顔を隠しました。

クロード様は噴水の縁に腰を下ろし、月明かりの下で私をじっと見つめました。

「あの紹介状の内容に、嘘はない。……私は、自分の伴侶となる女性には、家庭の切り盛りだけでなく、私の資産運用の相談役も任せたいと考えている」

「相談役、ですか? それはつまり……閣下の莫大な私産を、私が差配してもよろしいと?」

「ああ。君のあの徹底したコストカットの手腕、そして利益に対する異常なまでの嗅覚。……私の隣に置くには、これ以上の人材はいない」

クロード様が立ち上がり、私の一歩前まで詰め寄りました。

「ルミエル。これは取引ではない。……求婚だ」

「きゅう、こん……!」

「私の年収は、この国の国家予算の約一割に相当する。所有する領地は三州、金鉱山を二つ、商船団を五つ保有している」

クロード様が、流れるような動作で私の手を取りました。

「宝石のコレクションは、王室の宝物庫を凌ぐだろう。……これらすべての管理権を、君に譲渡しよう。君の好きなように、転がして増やして構わない」

「(……きょ、きょ、金鉱山が二つ! 商船団が五つ!?)」

私の金持ちセンサーが、ついに限界を超えて爆発しました。視界が真っ白になり、脳内に金貨の雨が降り注ぎます。

「いかがかな。君の夢見る『働かない生活』。……私の妻になれば、金貨を数える以外の労働は一切禁止してやろう」

「……そ、その言葉、本当ですわね!? 後で『やっぱり宰相補佐として書類仕事をしろ』なんて言わないでしょうね!?」

「約束しよう。君の仕事は、私の隣で贅沢を極め、私の資産を守り、そして……たまに、私にその毒舌を浴びせること。それだけでいい」

クロード様が、私の指先にそっと唇を寄せました。

「ルミエル。君の、その目が眩むような強欲さが……愛しくてたまらない」

「(……愛しい!? 強欲さが!?)」

私は顔が熱くなるのを感じました。今まで、私の金銭欲を蔑む人は大勢いましたが、それを「愛しい」と言ってくれたのは、彼が初めてでした。

「……わかりましたわ。その条件、受けて立ちます! ですが閣下、私は非常に高くつく女ですわよ? 途中で『やっぱり返品したい』なんて言っても、一切受け付けませんから!」

「返品だと? ……冗談を言うな。君を離すつもりなど、最初からない」

クロード様は私の腰を抱き寄せ、そのまま深く、独占欲の塊のような抱擁を交わしました。

「(……ああ。閣下の胸板、意外と厚いですわね。それに、この服の生地……一ヤードで私の家が一軒買える最高級品だわ……)」

私は抱きしめられながらも、ちゃっかりと彼の衣装の価値を査定していました。

「ルミエル。明日の朝、君の男爵家に私の使いをやる。……結納金として、とりあえず金貨三千枚を持たせよう」

「さ、三千枚!? 閣下、大好きですわ! 一生ついて行きます!」

私は、恋のときめきか、それとも金銭の魔力か分からない高揚感に包まれ、彼の腕の中で幸せを噛みしめるのでした。

遠くで、セシリア様とエドワード王子がニヤニヤしながら見守っていることにも気づかずに。
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