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「……お嬢様。一応、確認のためにお聞きしますが。ここが本当に、お嬢様の仰る『約束の地』なのですか?」
護衛騎士のバルトが、絶望を絵に描いたような顔で呟いた。
視界に広がるのは、見渡す限りの赤茶けた岩石。木の一本も生えておらず、風が吹くたびに乾いた砂埃が舞い上がる。お世辞にも「居住に適した場所」とは言えない、死の荒野だ。
隣国の豪商ゼスト様も、愛馬の手綱を握ったまま、眉間に深い皺を刻んで固まっている。
「カタール……。僕は君の先見の明を信じて投資を決めたつもりだったが、流石にこれは『無』だ。商売の種どころか、石ころしかないじゃないか。ここにある一番価値のあるものが、僕が履いている高級なブーツだなんて冗談にもならないよ」
私は二人の言葉を無視して、馬車から降り立つなり、地面に膝をついた。
そして、深々と鼻から空気を吸い込む。
「……すぅ、はぁ……。ああ、素晴らしい。嗅げば嗅ぐほど、利益の匂いがしますわ!」
「利益!? この砂埃の匂いがかい?」
ゼスト様が顔を引きつらせる。私はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、近くにある尖った岩を指差した。
「ゼスト様、鼻を近づけてよく嗅いでみてください。この僅かな焦げたような、そして卵が腐ったような独特の芳香……。これは硫黄、つまり地熱活動が活発である証拠ですわ!」
「硫黄……? それがどうして利益になるんだ。火薬の原料にはなるが、それだけだろう?」
「お甘いですわね、商会長。これは『温泉』が出る予兆なのです。この断層のズレと岩の色調の変化を見るに、地下数百メートルには巨大な熱水の貯留層があります。ここに穴を開ければ、黄金にも等しいお湯が噴き出す……。私の計算が正しければ、あと三日以内にここは『不毛の地』から『大陸一の保養地』へとクラスチェンジいたしますわ!」
私は立ち上がり、ドレスの裾についた土を叩き落とした。
その瞳には、すでに完成した豪華な旅館や、湯煙に包まれる観光客の姿が映っている。
「バルト、ガンツ親方を呼んできて。一番地盤が脆くなっているポイントを特定しました。そこにゼスト様から調達した爆薬を仕掛けます。……あ、ゼスト様。爆薬の使用量は最小限に抑えますから、安心してください。余った分は後で、岩石の破砕作業に再利用して、建築資材としてリサイクルしますので」
「……君は本当に、塵一つ無駄にしないつもりなんだね」
ゼスト様は呆れたように肩をすくめたが、その口角は微かに上がっていた。
「いいだろう。僕の鼻にはまだ、君が言う『利益の匂い』は届いていないが……。君がそこまで確信を持って断言するなら、僕はその『卵の腐った匂い』に全財産を賭けてみるよ」
「賢明な判断ですわ、ゼスト様。契約書に『温泉が出た場合のマージン上乗せ』という項目を追加しておきますから、今のうちにサインしてくださいね?」
「……お嬢様、この状況でまだ追い討ちをかけるように契約を結ぼうとするのは、流石に悪魔の所業ですよ」
バルトのツッコミを華麗にスルーし、私は不毛の岩場で高らかに笑った。
(見ていなさい、エリック殿下。あなたが『何もない』と蔑んだこの場所から、私は世界で一番熱い富を掘り当ててみせますわ!)
私の野望は、今まさに、この乾いた大地の下で激しく沸騰し始めていた。
護衛騎士のバルトが、絶望を絵に描いたような顔で呟いた。
視界に広がるのは、見渡す限りの赤茶けた岩石。木の一本も生えておらず、風が吹くたびに乾いた砂埃が舞い上がる。お世辞にも「居住に適した場所」とは言えない、死の荒野だ。
隣国の豪商ゼスト様も、愛馬の手綱を握ったまま、眉間に深い皺を刻んで固まっている。
「カタール……。僕は君の先見の明を信じて投資を決めたつもりだったが、流石にこれは『無』だ。商売の種どころか、石ころしかないじゃないか。ここにある一番価値のあるものが、僕が履いている高級なブーツだなんて冗談にもならないよ」
私は二人の言葉を無視して、馬車から降り立つなり、地面に膝をついた。
そして、深々と鼻から空気を吸い込む。
「……すぅ、はぁ……。ああ、素晴らしい。嗅げば嗅ぐほど、利益の匂いがしますわ!」
「利益!? この砂埃の匂いがかい?」
ゼスト様が顔を引きつらせる。私はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、近くにある尖った岩を指差した。
「ゼスト様、鼻を近づけてよく嗅いでみてください。この僅かな焦げたような、そして卵が腐ったような独特の芳香……。これは硫黄、つまり地熱活動が活発である証拠ですわ!」
「硫黄……? それがどうして利益になるんだ。火薬の原料にはなるが、それだけだろう?」
「お甘いですわね、商会長。これは『温泉』が出る予兆なのです。この断層のズレと岩の色調の変化を見るに、地下数百メートルには巨大な熱水の貯留層があります。ここに穴を開ければ、黄金にも等しいお湯が噴き出す……。私の計算が正しければ、あと三日以内にここは『不毛の地』から『大陸一の保養地』へとクラスチェンジいたしますわ!」
私は立ち上がり、ドレスの裾についた土を叩き落とした。
その瞳には、すでに完成した豪華な旅館や、湯煙に包まれる観光客の姿が映っている。
「バルト、ガンツ親方を呼んできて。一番地盤が脆くなっているポイントを特定しました。そこにゼスト様から調達した爆薬を仕掛けます。……あ、ゼスト様。爆薬の使用量は最小限に抑えますから、安心してください。余った分は後で、岩石の破砕作業に再利用して、建築資材としてリサイクルしますので」
「……君は本当に、塵一つ無駄にしないつもりなんだね」
ゼスト様は呆れたように肩をすくめたが、その口角は微かに上がっていた。
「いいだろう。僕の鼻にはまだ、君が言う『利益の匂い』は届いていないが……。君がそこまで確信を持って断言するなら、僕はその『卵の腐った匂い』に全財産を賭けてみるよ」
「賢明な判断ですわ、ゼスト様。契約書に『温泉が出た場合のマージン上乗せ』という項目を追加しておきますから、今のうちにサインしてくださいね?」
「……お嬢様、この状況でまだ追い討ちをかけるように契約を結ぼうとするのは、流石に悪魔の所業ですよ」
バルトのツッコミを華麗にスルーし、私は不毛の岩場で高らかに笑った。
(見ていなさい、エリック殿下。あなたが『何もない』と蔑んだこの場所から、私は世界で一番熱い富を掘り当ててみせますわ!)
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