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「……はぁ、はぁ。ようやく……ようやく辿り着いたぞ。我が、王都に……」
ボロボロの靴を脱ぎ捨て、裸足同然で王宮の正門へと辿り着いたエリック殿下は、地面に這いつくばりながら門番を見上げた。
かつての第一王子の威厳は微塵もなく、そこにあるのは「一ヶ月間、一度も風呂に入らず野宿し続けた不審者」の姿である。
「お、おい! 私だ、エリックだ! 早く開けろ! カタールがあのような……あのような暴挙に……っ!」
「……不審者だ、捕らえろ」
「ひっ!? 違う、私だと言っているだろう!」
数分間の押し問答の末、ようやく身元が確認された殿下が王宮の廊下を突き進むと、そこにはさらなる絶望的な光景が広がっていた。
「……何だ。これは、一体どういうことだ!?」
王宮を象徴する豪華な金銀の装飾品、名画、果てには玉座のすぐ側にあったクリスタルの花瓶に至るまで、全てに「赤色の札」が貼られている。
そこには、流麗な文字でこう記されていた。
『本物件は、未払い債務の担保としてガラガラ・コーポレーションが差し押さえました。無断での移動・損壊は損害賠償の対象となります。 CEOカタール』
「……え、エリック様ぁ! 助けてくださいまし! あの中年女性(アンナ)が、ミルフイユの宝石箱を勝手に持って行ってしまいましたの!」
奥から泣き喚きながら走ってきたのは、これまたやつれた様子のミルフイユ様だった。
その後ろから、凛とした足取りで現れたのは、かつて私が王都に残した有能なメイド、アンナである。
「お帰りなさいませ、エリック元(・)殿下。……あ、失礼。現在は『未払い債務者A』とお呼びすべきでしたか」
アンナは、冷徹な手つきで手帳にチェックを入れながら、殿下をゴミを見るような目で見つめた。
「ア、アンナ! 貴様、公爵家の使用人の分際で、王宮で何を勝手な真似を……!」
「勝手な真似ではございませんわ。これは正当な『債権回収業務』です」
アンナが指差した先。
広間の中心に、いつの間にか最新式の魔石通信機が設置されており、そこから等身大の立体映像(ホログラム)が投影された。
映し出されたのは、最高級のシルクドレスに身を包み、優雅にシャンパンを傾ける私、カタール・ド・オシエルである。
「あら。予想より三日ほど帰還が遅れましたわね、エリック殿下。やはり徒歩での移動は、ロジスティクス的に非常に非効率だったようですわ」
「カ、カタール! 貴様、王宮に何をした!」
「何をした、ではありませんわ。あなたが私に叩きつけられた『請求書』。その支払期限は昨日の十七時をもって終了いたしました。当然、一銭の入金も確認できませんでしたので、法的措置に移行したまでです」
私はホログラム越しに、不敵な笑みを浮かべて見せた。
「現在、王宮内の可動資産……つまり、売れるものはすべて『差し押さえ』の対象です。ついでに、この王宮自体の所有権も、ゼスト様を通じて買い叩かせていただきましたわ。明日からは、賃貸料を支払って居住していただきますので、よろしくて?」
「賃貸……!? 自分の家に、家賃を払えというのか!」
「当然ですわ。所有権は我が社に移りましたもの。あ、ミルフイユ様が召し上がっているそのお菓子。その原材料費も我が社の立て替えですので、一口ごとに金貨一舞の延滞利息が発生しておりますわよ?」
「ひえっ!?」
ミルフイユ様が、食べていたマカロンを慌てて吐き出した。
「カタール……貴様、正気か! こんなことをして、タダで済むと思っているのか!」
「正気ですよ。私は常に『数字』に対して真摯ですわ。……殿下、いいことを教えて差し上げます。現在、アルフレッド王国の国債は、市場で『紙屑』以下の評価です。私はそれを全て買い占めました」
私は、空になったグラスをバルトに預け、真剣な眼差しでエリック殿下を見据えた。
「つまり、あなたが今座っているその椅子も、吸っている空気の清浄コストも、すべて私の所有物。……実質的に、この国は今日から私の『子会社』になりましたの。……ようこそ、ガラガラ・ホールディングスへ。新入社員(という名の奴隷)として、精一杯働いていただきますわよ?」
「な、……なんだと……っ!」
エリック殿下は、差し押さえの赤札が貼られた柱にしがみつき、そのまま絶望のあまり気絶した。
「あら。気絶するのは勝手ですが、その間の床の使用料も別途請求いたしますわ。……アンナ、次の工程へ進みなさい」
「承知いたしました、CEO。……これより、王宮内の『無能な職員』のリストラ、および適正な再配置を開始いたします!」
私の号令とともに、王都の心臓部は、効率化という名の「ざまぁ」の嵐に飲み込まれていった。
(見ていなさい、エリック殿下。あなたが守りたかった『愛』と『権力』、すべて数字に換算して、私の事業の肥やしにして差し上げますわ!)
王都買収、第一段階完了。
次なる一手は、完全に経営権を掌握した王宮を舞台にした「大掃除」ですわね。
ボロボロの靴を脱ぎ捨て、裸足同然で王宮の正門へと辿り着いたエリック殿下は、地面に這いつくばりながら門番を見上げた。
かつての第一王子の威厳は微塵もなく、そこにあるのは「一ヶ月間、一度も風呂に入らず野宿し続けた不審者」の姿である。
「お、おい! 私だ、エリックだ! 早く開けろ! カタールがあのような……あのような暴挙に……っ!」
「……不審者だ、捕らえろ」
「ひっ!? 違う、私だと言っているだろう!」
数分間の押し問答の末、ようやく身元が確認された殿下が王宮の廊下を突き進むと、そこにはさらなる絶望的な光景が広がっていた。
「……何だ。これは、一体どういうことだ!?」
王宮を象徴する豪華な金銀の装飾品、名画、果てには玉座のすぐ側にあったクリスタルの花瓶に至るまで、全てに「赤色の札」が貼られている。
そこには、流麗な文字でこう記されていた。
『本物件は、未払い債務の担保としてガラガラ・コーポレーションが差し押さえました。無断での移動・損壊は損害賠償の対象となります。 CEOカタール』
「……え、エリック様ぁ! 助けてくださいまし! あの中年女性(アンナ)が、ミルフイユの宝石箱を勝手に持って行ってしまいましたの!」
奥から泣き喚きながら走ってきたのは、これまたやつれた様子のミルフイユ様だった。
その後ろから、凛とした足取りで現れたのは、かつて私が王都に残した有能なメイド、アンナである。
「お帰りなさいませ、エリック元(・)殿下。……あ、失礼。現在は『未払い債務者A』とお呼びすべきでしたか」
アンナは、冷徹な手つきで手帳にチェックを入れながら、殿下をゴミを見るような目で見つめた。
「ア、アンナ! 貴様、公爵家の使用人の分際で、王宮で何を勝手な真似を……!」
「勝手な真似ではございませんわ。これは正当な『債権回収業務』です」
アンナが指差した先。
広間の中心に、いつの間にか最新式の魔石通信機が設置されており、そこから等身大の立体映像(ホログラム)が投影された。
映し出されたのは、最高級のシルクドレスに身を包み、優雅にシャンパンを傾ける私、カタール・ド・オシエルである。
「あら。予想より三日ほど帰還が遅れましたわね、エリック殿下。やはり徒歩での移動は、ロジスティクス的に非常に非効率だったようですわ」
「カ、カタール! 貴様、王宮に何をした!」
「何をした、ではありませんわ。あなたが私に叩きつけられた『請求書』。その支払期限は昨日の十七時をもって終了いたしました。当然、一銭の入金も確認できませんでしたので、法的措置に移行したまでです」
私はホログラム越しに、不敵な笑みを浮かべて見せた。
「現在、王宮内の可動資産……つまり、売れるものはすべて『差し押さえ』の対象です。ついでに、この王宮自体の所有権も、ゼスト様を通じて買い叩かせていただきましたわ。明日からは、賃貸料を支払って居住していただきますので、よろしくて?」
「賃貸……!? 自分の家に、家賃を払えというのか!」
「当然ですわ。所有権は我が社に移りましたもの。あ、ミルフイユ様が召し上がっているそのお菓子。その原材料費も我が社の立て替えですので、一口ごとに金貨一舞の延滞利息が発生しておりますわよ?」
「ひえっ!?」
ミルフイユ様が、食べていたマカロンを慌てて吐き出した。
「カタール……貴様、正気か! こんなことをして、タダで済むと思っているのか!」
「正気ですよ。私は常に『数字』に対して真摯ですわ。……殿下、いいことを教えて差し上げます。現在、アルフレッド王国の国債は、市場で『紙屑』以下の評価です。私はそれを全て買い占めました」
私は、空になったグラスをバルトに預け、真剣な眼差しでエリック殿下を見据えた。
「つまり、あなたが今座っているその椅子も、吸っている空気の清浄コストも、すべて私の所有物。……実質的に、この国は今日から私の『子会社』になりましたの。……ようこそ、ガラガラ・ホールディングスへ。新入社員(という名の奴隷)として、精一杯働いていただきますわよ?」
「な、……なんだと……っ!」
エリック殿下は、差し押さえの赤札が貼られた柱にしがみつき、そのまま絶望のあまり気絶した。
「あら。気絶するのは勝手ですが、その間の床の使用料も別途請求いたしますわ。……アンナ、次の工程へ進みなさい」
「承知いたしました、CEO。……これより、王宮内の『無能な職員』のリストラ、および適正な再配置を開始いたします!」
私の号令とともに、王都の心臓部は、効率化という名の「ざまぁ」の嵐に飲み込まれていった。
(見ていなさい、エリック殿下。あなたが守りたかった『愛』と『権力』、すべて数字に換算して、私の事業の肥やしにして差し上げますわ!)
王都買収、第一段階完了。
次なる一手は、完全に経営権を掌握した王宮を舞台にした「大掃除」ですわね。
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