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「……完璧ですわ。今日の私は、誰がどう見ても『世界を支配する、美しき悪の女王』ですわね」
鏡の中に映る自分を見つめ、私は満足げに頷いた。
今日は、私とキース様の正式な婚約発表パーティー。
私はあえて、かつてセドリック様に「毒婦」と呼ばれた時よりも、さらに数段派手で、さらに数段攻撃的な漆黒と金糸のドレスを選んだ。
首元には、キース様から贈られた、血のように真っ赤な大粒のルビー。
それは「貴女の毒すら、私の愛で塗りつぶしてみせる」という、彼の傲慢で甘い独占欲の証だ。
「お嬢様、本当によろしいのですか? 今日は婚約発表の場でございます。少しは『幸せな花嫁』らしく、お淑やかに振る舞われても……」
セバスチャンが、仕上げのベールを整えながら、わざとらしく溜息をつく。
「セバスチャン、貴方こそ何を言っているの? 幸せな花嫁が、全員お淑やかだなんて誰が決めたのかしら? 私は、世界で一番傲慢に、世界で一番激しく、幸せを掴み取ってやるのですわ!」
私は扇子を勢いよく開き、鏡の中の自分に向けてウィンクをした。
悪役令嬢としての物語は終わった。
けれど、ベルベット・ローズウッドとしての私の「舞台」は、これからが本番なのだ。
会場となる王宮の大広間に足を踏み入れた瞬間。
かつては冷ややかな視線と陰口に満ちていたその場所は、今や圧倒的な「敬意」と「期待」で満たされていた。
「ベルベット様だ……。なんて美しいんだ」
「あの方が、あの汚職事件を裏で解決した本物の賢女だなんて……。まさに、美貌と知略を兼ね備えた、我が国の誇りだわ」
聞こえてくる噂話の内容が、以前とは正反対になっていることに苦笑する。
人は現金なものですわね。私が「悪役」として振る舞っていた時と同じ顔をしていても、真実が一つ明らかになるだけで、その評価は百八十度変わるのだから。
「……お待たせいたしました、マイ・クイーン」
広間の中心で私を待っていたのは、軍服に身を包んだキース様だった。
彼は私の手を取ると、周囲に聞こえるような堂々とした声で言った。
「本日は、皆様にご報告があります。私、キース・ナイトレイは、ここにいるベルベット・ローズウッド嬢と、生涯を共にする契約を結びました。……彼女がどれほど『悪』を演じようとも、私はその全ての罪を背負い、彼女の隣で笑い続けることを誓いましょう」
会場から、割れんばかりの拍手が巻き起こる。
私はその熱気の中で、キース様の肩に寄り添い、最高に不敵な笑みを浮かべた。
「皆様、お聞きになりまして? この騎士様、私の悪癖を全て受け入れると仰いましたわ。……覚悟はよろしくて? これからの私は、今までの百倍はワガママに、千倍は騒がしく生きていくつもりですわよ!」
私は扇子を高く掲げ、本日一番の、そして人生で一番輝かしい高笑いを上げた。
「オホ、オホホホホホホ!!」
その声は、王宮の壁を突き抜け、夜空の星々まで届きそうなほど晴れやかだった。
ふと見ると、ホールの隅では、セドリック様がカトレア様の「悪役特訓」から逃げ出し、柱にしがみついて震えていた。
カトレア様はそれを巨大な扇子で追い回しながら、「殿下! 愛の逃避行は、スクワットを終えてからになさいまし!」と叫んでいる。
その隣では、ジュリアン様が面白そうにその光景をスケッチし、時折カトレア様に「今の罵倒、語彙の選択が素晴らしいです」と拍手を送っていた。
父とお兄様たちは、「ベルベット、おめでとう!」と泣きながらシャンパンを浴びるように飲んでいる。
誰もが騒がしく、誰もがハチャメチャで、そして誰もが幸せそうだった。
「……ねえ、キース様」
ダンスの調べが始まり、私は彼の胸の中で静かに囁いた。
「なんですか、ベルベット」
「私、気づいてしまいましたの。悪役令嬢って、実は世界で一番『愛される役柄』だったのかもしれませんわね」
「……今更ですか? 私は三年前から、その事実に気づいていましたよ」
キース様が、愛おしそうに私の髪を撫でる。
もう、仮面を被る必要はない。
けれど、私はこれからも「悪役令嬢」としての所作を捨てるつもりはない。
だって、これが私の選んだ、私だけの「自由」の形なのだから。
「さあ、キース様。夜明けまで踊り明かしますわよ! 足腰を鍛えておかないと、私の幸せの重みに耐えきれなくなりますわよ?」
「……望むところです」
私たちは、煌びやかな光の中でステップを踏んだ。
婚約破棄から始まった私の物語は、これ以上ないほどの「大団円」を迎え……。
そして、新しい幕が、今まさに力強く上がったのである。
カーテンコールは、まだ終わらない。
私の人生という名の喜劇は、これからも続いていくのだから。
「ごきげんよう、皆様! さようなら、私の孤独な悪役時代! ……そして、いらっしゃい、最高に騒がしい私の未来!」
私は最後に、誰にも負けない特大の高笑いを、もう一度だけ夜空へと放った。
鏡の中に映る自分を見つめ、私は満足げに頷いた。
今日は、私とキース様の正式な婚約発表パーティー。
私はあえて、かつてセドリック様に「毒婦」と呼ばれた時よりも、さらに数段派手で、さらに数段攻撃的な漆黒と金糸のドレスを選んだ。
首元には、キース様から贈られた、血のように真っ赤な大粒のルビー。
それは「貴女の毒すら、私の愛で塗りつぶしてみせる」という、彼の傲慢で甘い独占欲の証だ。
「お嬢様、本当によろしいのですか? 今日は婚約発表の場でございます。少しは『幸せな花嫁』らしく、お淑やかに振る舞われても……」
セバスチャンが、仕上げのベールを整えながら、わざとらしく溜息をつく。
「セバスチャン、貴方こそ何を言っているの? 幸せな花嫁が、全員お淑やかだなんて誰が決めたのかしら? 私は、世界で一番傲慢に、世界で一番激しく、幸せを掴み取ってやるのですわ!」
私は扇子を勢いよく開き、鏡の中の自分に向けてウィンクをした。
悪役令嬢としての物語は終わった。
けれど、ベルベット・ローズウッドとしての私の「舞台」は、これからが本番なのだ。
会場となる王宮の大広間に足を踏み入れた瞬間。
かつては冷ややかな視線と陰口に満ちていたその場所は、今や圧倒的な「敬意」と「期待」で満たされていた。
「ベルベット様だ……。なんて美しいんだ」
「あの方が、あの汚職事件を裏で解決した本物の賢女だなんて……。まさに、美貌と知略を兼ね備えた、我が国の誇りだわ」
聞こえてくる噂話の内容が、以前とは正反対になっていることに苦笑する。
人は現金なものですわね。私が「悪役」として振る舞っていた時と同じ顔をしていても、真実が一つ明らかになるだけで、その評価は百八十度変わるのだから。
「……お待たせいたしました、マイ・クイーン」
広間の中心で私を待っていたのは、軍服に身を包んだキース様だった。
彼は私の手を取ると、周囲に聞こえるような堂々とした声で言った。
「本日は、皆様にご報告があります。私、キース・ナイトレイは、ここにいるベルベット・ローズウッド嬢と、生涯を共にする契約を結びました。……彼女がどれほど『悪』を演じようとも、私はその全ての罪を背負い、彼女の隣で笑い続けることを誓いましょう」
会場から、割れんばかりの拍手が巻き起こる。
私はその熱気の中で、キース様の肩に寄り添い、最高に不敵な笑みを浮かべた。
「皆様、お聞きになりまして? この騎士様、私の悪癖を全て受け入れると仰いましたわ。……覚悟はよろしくて? これからの私は、今までの百倍はワガママに、千倍は騒がしく生きていくつもりですわよ!」
私は扇子を高く掲げ、本日一番の、そして人生で一番輝かしい高笑いを上げた。
「オホ、オホホホホホホ!!」
その声は、王宮の壁を突き抜け、夜空の星々まで届きそうなほど晴れやかだった。
ふと見ると、ホールの隅では、セドリック様がカトレア様の「悪役特訓」から逃げ出し、柱にしがみついて震えていた。
カトレア様はそれを巨大な扇子で追い回しながら、「殿下! 愛の逃避行は、スクワットを終えてからになさいまし!」と叫んでいる。
その隣では、ジュリアン様が面白そうにその光景をスケッチし、時折カトレア様に「今の罵倒、語彙の選択が素晴らしいです」と拍手を送っていた。
父とお兄様たちは、「ベルベット、おめでとう!」と泣きながらシャンパンを浴びるように飲んでいる。
誰もが騒がしく、誰もがハチャメチャで、そして誰もが幸せそうだった。
「……ねえ、キース様」
ダンスの調べが始まり、私は彼の胸の中で静かに囁いた。
「なんですか、ベルベット」
「私、気づいてしまいましたの。悪役令嬢って、実は世界で一番『愛される役柄』だったのかもしれませんわね」
「……今更ですか? 私は三年前から、その事実に気づいていましたよ」
キース様が、愛おしそうに私の髪を撫でる。
もう、仮面を被る必要はない。
けれど、私はこれからも「悪役令嬢」としての所作を捨てるつもりはない。
だって、これが私の選んだ、私だけの「自由」の形なのだから。
「さあ、キース様。夜明けまで踊り明かしますわよ! 足腰を鍛えておかないと、私の幸せの重みに耐えきれなくなりますわよ?」
「……望むところです」
私たちは、煌びやかな光の中でステップを踏んだ。
婚約破棄から始まった私の物語は、これ以上ないほどの「大団円」を迎え……。
そして、新しい幕が、今まさに力強く上がったのである。
カーテンコールは、まだ終わらない。
私の人生という名の喜劇は、これからも続いていくのだから。
「ごきげんよう、皆様! さようなら、私の孤独な悪役時代! ……そして、いらっしゃい、最高に騒がしい私の未来!」
私は最後に、誰にも負けない特大の高笑いを、もう一度だけ夜空へと放った。
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