【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています

22時完結

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冷酷な宰相の提案

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    エヴァンス領の穏やかな日常は、次第に新たな波紋を呼び始めていた。リディアは前夜の月明かりの中で、自らの選んだ自由な生き方に胸を躍らせながらも、ふとした瞬間に心の奥底でかすかな不安を感じていた。王太子エドワードとの再会を経て、彼への想いが再びかすかな灯火のように揺らいでいることを、彼女自身も認めずにはいられなかったのだ。

そんなある日の朝、館内に普段とは異なる重々しい空気が漂い始めた。朝陽が窓から柔らかく差し込む中、リディアは書斎で静かに読書に耽っていた。ふと、重い足音とともに、館の長い廊下を歩く足音が耳に届く。いつもは穏やかな朝の風景に、どこか緊張感すら感じられた。

「お嬢様、少々お時間をいただけますでしょうか」

玄関先に現れたのは、厳格な佇まいと冷静な眼差しを漂わせる一人の使者であった。彼は深い黒の制服に身を包み、かすかな敬意を込めた一礼とともに、手にした封書を差し出した。その封には、王国を代表する権威が刻まれた印章が押され、見るからに重要な文書であることを物語っていた。

リディアは、すでに心のどこかで感じ取っていた。今日、館に訪れるのは、ただの使者ではなく、王国の中枢にいる冷徹なる権力者――王国宰相アルベルトであることを。彼の評判は、遠く離れた領地の隅々にまで知られており、冷静沈着かつ計算高いその言動は、誰もが一目置く存在となっていた。

書斎に戻りながら、リディアは静かに封を切った。そこには、短い文面とともに「本日午後、一度お会いしたく存じます」という一文が記されており、送り主の名は「王国宰相アルベルト」――と。胸中に不意の高鳴りを覚えながらも、彼女はすぐに自らの決意を取り戻す。自分が守り抜いてきた自由な日々に、誰かが踏み込むことを許すわけにはいかない。しかし、同時にその名の重みは、ただの命令ではなく、何か深い意味が込められているようにも感じられた。

館内の応接間は、朝の柔らかな光に包まれ、普段は穏やかな談話が交わされる場所であった。しかし、今日のその空間には、微妙な緊張感と期待が交錯していた。リディアは、すでに用意されていた上品な茶席に腰を下ろし、心の準備を整えた。しばらくすると、重厚な扉がゆっくりと開かれ、そこに颯爽と現れたのは、誰もが畏敬の念を抱く存在――冷徹な風格を漂わせる宰相アルベルトであった。

アルベルトは、整え抜かれた漆黒の服装に、鋭い眼差しを隠すことなく、堂々とした態度で部屋に足を踏み入れた。彼の顔には、感情の起伏をほとんど感じさせない冷静な表情が浮かび、その視線はリディアを一瞬にして捉えた。無言のまま、彼は丁寧に一礼をし、静かに茶席の向かいに腰を下ろす。

――「リディア嬢。ご多忙のところお時間をいただき、感謝申し上げる」

低く、抑制された声で話し始めるアルベルト。その声は、まるで氷のような冷たさと同時に、どこか計算された温もりが含まれているように感じられた。リディアは、表情を崩すことなくその言葉を受け止めるが、内心では、なぜ自分にこのような重要な呼び出しがあったのかと疑問を抱いていた。

――「宰相様、いったい何の御用でしょうか? 私のような者に、そんな重いお言葉をいただくとは…」

リディアは、わずかに声を震わせながらも、毅然と問い返す。だが、アルベルトの瞳はその問いに動じることなく、まるで過ぎ去った日々の記憶を静かに辿るかのような冷静さで、リディアの内面を見透かすかのようだった。

――「実は、リディア嬢。私は長らく、あなたの生き様、そしてあなたが内に秘める潜在力に注目してまいりました」

彼は一瞬、静寂の中で意味深い間を置くと、低く重みのある口調で続けた。

――「あなたは、これまで誰かに操られる運命に抗い、己の意志で未来を切り拓いてきた。その生き方こそ、我が国にとって大いなる可能性を秘めた宝であると考えております」

リディアは、その言葉に耳を傾けながらも、胸中に複雑な感情が渦巻くのを感じた。自分がただの「逃亡者」として過ごしていると思っていた矢先に、こんなにも重い期待を背負わされるとは、思いもよりなかった。彼女は、過去に囚われず自由を謳歌するために、あえて孤高の道を選んだはずだった。だが、その自由な生き方が、国全体にとっても意味を持つと誰かが言うのなら――

――「では、宰相様。私に、いったい何を…」

リディアは、問いかけるように口を開く。彼女の瞳の奥には、恐れと好奇心が混在し、決して単なる驚きだけでは収まらない複雑な思いが浮かんでいた。

アルベルトは、しばらくの間、何も言わずにリディアの瞳を見つめた。その鋭い視線は、彼女の内面に隠された不安や希望を、まるで一枚の絵のように映し出していた。そして、やがて口を開いた。

――「リディア嬢。私からの提案を申し上げます。あなたは、王国の未来にふさわしい女王、いや、真の王妃となるべき存在だと信じております」

その言葉に、リディアは思わず身を引く。王妃――それは、これまで彼女が夢見た自由な生活とは真逆の、重い義務と縛りが伴う存在であった。だが、アルベルトの冷静でありながらも情熱を秘めた語り口には、単なる権力闘争や野望ではなく、どこか純粋な信念が感じられた。

――「しかし、宰相様。私が望んでいるのは、束縛のない静かな暮らしです。いかに国のためといえども、私は自らの自由を手放すことはできません」

リディアは、毅然とした口調で答える。彼女自身、過去の経験から、誰かに決められた運命に従うことの重さと苦しみを知っていたからである。しかし、アルベルトは静かに微笑むと、ゆっくりと前に身を乗り出し、さらに語りかけた。

――「確かに、あなたはこれまで、自由を愛し、己の意思で歩んできた。しかし、その自由は、国全体の未来とも深く結びついております。あなたが真に輝く存在となることで、民衆は希望を取り戻し、王国は新たな光を得るのです」

アルベルトの言葉は、冷たく計算されたものではなく、どこか真摯な情熱が込められているように響いた。リディアは、胸中で葛藤を覚えながらも、彼の提案の意味を探ろうとする。彼女が選んだ自由な生活は、今や自らの存在意義を問い直す契機となったのかもしれない。館内の静寂の中、二人の間に漂う空気は、次第に熱を帯び、過去の影と未来への希望が交錯する不思議な感覚を呼び覚ました。

――「もし、私がその道を選んだなら……」
リディアは、つぶやくように問いかけた。
「あなたは、私にどんな未来を約束してくれるのですか? それは、私の自由を奪うものではなく、私自身が輝くための真の支えとなるものであるべきです」

アルベルトは、リディアの真剣な眼差しに応えるように、静かに言葉を紡いだ。

――「私は、あなたが抱く夢と希望、そして苦悩すらも包み込む覚悟があります。あなたが歩む道に、常に寄り添い、時に力となり、そして何よりもあなた自身が誇りに思える未来を共に創り上げたい。それが、私からの誠実な提案なのです」

その言葉は、まるで冷たい氷が溶け出し、内側から温かな光を放つような、不思議な力を持っていた。リディアは、内心で激しく揺れる感情を必死に抑えながらも、アルベルトの真摯な態度に次第に心を開かれていく自分を感じずにはいられなかった。彼女にとって、これまでの孤独で静かな日々は、確かに自らの自由を守るためのものであった。しかし、同時に、誰かに本気で愛され、共に未来を歩むという可能性が、心の奥底で密かに灯り始めていたのだ。

館内の大きな窓からは、青空が広がり、柔らかな陽光が二人を包み込む。時折、遠くから聞こえる鳥のさえずりが、平穏な時間の流れを告げるように響く中、リディアは自らの選択について深く考え始めた。もし、今までの自分が選んできた道を捨て、新たな未来を受け入れるとしたら――それは、ただの権力の象徴や重い義務ではなく、真に自分自身が生きる意味を見出すための、一つの可能性に他ならなかった。

アルベルトは、そんな彼女の心の動きを敏感に感じ取りながら、さらに言葉を続ける。

――「あなたは、ただの逃避者でもなければ、単なる美しい存在でもありません。あなたの中には、国民の希望となり、未来を切り拓く力が秘められているのです。王妃としての責務は、決して重圧に耐えるためのものではなく、あなた自身が輝くための舞台でもあります」

その言葉とともに、部屋の中には、かつての決別の痛みと、今ここにある新たな可能性が混じり合った、複雑な空気が漂い始めた。リディアは、深い息をつき、目の前に広がる未来のビジョンに思いを馳せる。自らの自由を守るために選んだ孤独な道と、国の未来のために新たな責務を担う道。そのどちらにも、確固たる信念が存在することは明らかであった。

――「宰相様……」
リディアは、やっとの思いで口を開いた。
「私の心は、かつてないほど複雑に揺れている。あなたのお言葉は、私に新たな可能性を感じさせると同時に、私が守ってきた自由への思いをも刺激します。どうか、私自身が本当に納得できる未来を、共に模索していただけないでしょうか」

アルベルトは、リディアの真摯な訴えに、わずかな微笑みを浮かべながら頷いた。その眼差しは、冷徹さの中にも柔らかな光を宿し、彼自身が抱く深い想いと責任感を物語っていた。

――「もちろんです。私の提案は、あなたの自由を奪うものではなく、むしろあなたが自らの意思で選んだ未来を、より豊かに輝かせるためのものです。急ぐ必要はありません。あなたが心から納得できる時、その答えを私に示していただければ、私は常にここであなたを支え続ける覚悟があります」

その瞬間、館内に漂う時間が一瞬静止したかのように感じられた。リディアは、アルベルトの言葉の一つ一つに、自分がこれまで見落としていた真実の輝きを感じ取り始める。自由と責務、逃避と向き合い、そして自らの未来を切り拓く――そのすべてが、今ここで交錯する一大転換点となっていた。

窓の外では、雲一つない青空が広がり、遠くの山々が黄金色に輝く。自然の偉大さと、そこに秘められた静かな力が、リディアの内面に新たな決意を芽生えさせる。彼女は、これまで一人で戦ってきた孤高の自由だけではなく、誰かと共に歩む未来の可能性に心が動かされていることを、初めてはっきりと実感したのだ。

――「アルベルト様……私には、まだ迷いがあります。ですが、あなたのお言葉が、私の心の奥深くにある何かを呼び覚ましているのを感じます。どうか、これからも私の傍で、時に厳しく、時に温かく、共に歩んでいただけますでしょうか」

アルベルトは、ゆっくりとリディアの手に触れ、その温もりを確かめるように微笑んだ。彼の瞳は、今までの冷徹な印象を一変させ、深い情熱と真心が込められていることを示していた。

――「リディア嬢。あなたが選ぶ道がどのようなものであっても、私の心は変わりません。あなたが本当に望む未来が、どんな形であれ、共に探し求めることに、私は全身全霊を捧げる覚悟です」

こうして、宰相アルベルトの提案は、ただの政治的な策略や権力闘争ではなく、真摯な愛情と国の未来への希望を込めた、ひとつの大きな転換点として、リディアの心に深い印象を刻むこととなった。館内の静寂と温かな陽光の中で、二人は互いの眼差しを交わしながら、未来への可能性を静かに模索し始めたのだった。

その後、しばらくの間、応接間には言葉少なに流れる時の中で、リディアは自らの心の内を見つめ直し、自由を守るためにこれまで歩んできた孤高の道と、国民の未来に貢献するという新たな選択肢との間で葛藤と希望を抱きながら、じっくりと自分自身と対話を続けた。外の世界で囁かれる風の音や、遠くで聞こえる小川のせせらぎが、彼女に自然の摂理と、すべての命がつながる大いなる真実を感じさせるかのようであった。

夜が更け、館内の灯りが柔らかくともる中、リディアは一人、書斎の窓際に座っていた。窓の外には満天の星々が瞬き、遥か彼方の未来を暗示するように静かに輝いている。彼女は、今日宰相アルベルトから受けた言葉の数々を心に刻みながら、これまで守り抜いてきた自由と、これから迎えるかもしれない新たな責務の狭間で揺れる自分自身を、静かに見つめた。

――「私の未来は、一体どのように輝くのだろう……」
リディアは、独り言のように呟きながら、胸中に湧き上がる複雑な感情に向き合った。今までの決別の日々、追いかけ続けた王太子との再会、そして今日、冷徹なる宰相アルベルトからの提案。それらはすべて、彼女にとって新たな転換点となり、これからの物語の大きな分岐点を予感させるものだった。

その夜、リディアは深い眠りにつく前に、心の奥底で新たな決意を育んでいた。彼女は、これまでの孤高な自由だけではなく、誰かと共に歩む未来にも、真実の輝きがあると信じ始めていた。たとえその道が厳しく、時に苦渋を伴うものであったとしても、彼女は自らの内面に宿る希望の光に導かれ、いつか自分にふさわしい未来を見出すことを誓った。
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