【完結】冷徹公爵、婚約者の思い描く未来に自分がいないことに気づく

22時完結

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すれ違う想い

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婚約者としての役割

セシリア・ローゼンベルクは、婚約者であるアルトゥールと過ごす時間の中で、次第に「役割」に徹することを覚えていった。彼女は貴族の女性として、そしてエーゼンバッハ侯爵家の未来の夫人としての立場を全うしようと努力を続けていた。

彼女の朝は早い。まずは自室の鏡の前で、侍女たちとともに完璧な身だしなみを整える。エーゼンバッハ侯爵家にふさわしい優雅さを纏うことは、彼女の責務だった。

「セシリア様、今日はアルトゥール様とお茶会があるそうです。」
侍女が告げる。

「ええ、楽しみにしているわ。」

そう答えたものの、セシリアの胸中には複雑な思いがあった。彼とのお茶会は形式的なものであり、そこに心が通うことはないと分かっていたからだ。

お茶会での距離感

庭園に設けられたテーブルには、上質な紅茶と焼き菓子が用意されている。セシリアは微笑みを浮かべながらアルトゥールを待った。彼が現れると、軽く会釈をして席に着く。

「本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます、アルトゥール様。」

「構わない。」

アルトゥールの言葉はいつも短く、感情が感じられないものだった。彼が手にしたカップを口に運ぶ仕草はどこか機械的で、セシリアはその様子を見ながら微笑みを保つことに努める。

「この紅茶、とても香りが良いですね。庭園で摘まれたものかしら?」

「そうだ。使用人に聞いてみれば分かるだろう。」

会話は続かなかった。セシリアはいつものように、彼に愛情を伝えようと試みる。

「アルトゥール様、私はあなたのそばにいられることが本当に幸せです。」

彼は一瞬だけ視線を彼女に向けたが、すぐに目を逸らした。

「それは良いことだ。」

その言葉には、何の温かみも感じられなかった。

孤独の中で

その夜、セシリアは自室に戻り、一人きりで深いため息をついた。大きなベッドに腰を下ろし、膝の上で手を組む。

「私はこのままでいいのかしら……。」

彼女は何度も自分に問いかけた。愛していると伝えても、アルトゥールの心には届かない。それでも彼のそばにいることを選び続ける自分に、疑問を抱くことが増えていた。

「愛されない未来でも、私は耐えられるのかしら。」

だがその答えを見つけることはできなかった。ただ、彼の幸せを願う気持ちだけが彼女の中に残り続けていた。

周囲の目

社交界では、セシリアとアルトゥールの婚約は理想的な結びつきとして噂されていた。
「エーゼンバッハ侯爵家とローゼンベルク伯爵家の縁組は、王国にとっても大きな利益ね。」
「セシリア様も、アルトゥール様の婚約者にふさわしい方だわ。」

そんな声を耳にするたび、セシリアは心の中で苦笑していた。周囲が見ているのは、表面的な部分だけだった。二人の関係の冷たさや、すれ違いなど誰も知る由もない。

アルトゥールの視点

一方、アルトゥールもまた彼女との時間を振り返っていた。彼にとってセシリアは美しい女性であり、婚約者として非の打ち所がない存在だった。だが、それ以上の感情を抱くことはできなかった。

「愛など、結婚に必要ない。」

それが彼の信条だった。彼の両親もまた、政略結婚を通じて家門の繁栄を築いてきた。感情よりも義務と責務――それが貴族の在り方だと教えられてきた彼にとって、セシリアの愛情表現は理解しがたいものだった。

しかし、彼女の微笑みや献身的な態度に、時折胸を締め付けられるような感覚を覚えることがあった。その感情の正体が何なのか、アルトゥール自身も分かっていなかった。
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