【完結】冷徹公爵、婚約者の思い描く未来に自分がいないことに気づく

22時完結

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贈り物の行方

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アルトゥールの準備

アルトゥールは、庭師たちにセシリアのための特別な花壇を用意させる計画を立てていた。それは彼にとって、初めて自ら進んで行う個人的な贈り物だった。これまでの彼にとって、人間関係とは合理性や義務の延長に過ぎなかったが、今回は違う。彼はセシリアの喜ぶ顔を見たいと心から思っていた。

「この花壇には、彼女が好きな花々を集めてくれ。だが、それだけでは物足りない。彼女にとって特別な何かを感じられるものにしてほしい。」

アルトゥールの指示に庭師たちは驚いた。冷徹と名高い侯爵が、誰かのためにこんなにも情熱を注ぐ姿は、見慣れないものだったからだ。

「アルトゥール様、セシリア様の好きな花については、すでにリストを作っております。ですが、それ以上の“特別な何か”とは……?」

「それは……。」

アルトゥールは少し考えた後、答えた。

「彼女が見た瞬間に、心が温かくなるような場所だ。例えば、休めるベンチを置くのもいいだろう。周囲を囲む木々には、花と調和する色合いを意識してくれ。」

その言葉に庭師たちは感嘆し、早速準備を始めた。

セシリアの違和感

一方で、セシリアはアルトゥールの態度の変化に戸惑いを覚えていた。これまで彼は、自分にほとんど関心を持たないように見えていたのに、最近では彼女に話しかけたり、一緒に時間を過ごそうとしたりする素振りを見せていたからだ。

「どうして急に……?」

セシリアは、自室の窓から庭を見下ろしながら考え込んでいた。彼女はアルトゥールの心の中を理解したいと思っていたが、それを直接尋ねる勇気は持てなかった。

「私のことを気遣ってくれるのは嬉しい。でも、それが彼の本心なのか、それとも……。」

彼女は無意識のうちに、自分の胸を押さえていた。そこにはまだ、彼に対する愛情が燻っているのだと、彼女自身も気づいていた。

予期せぬ出会い

ある日、セシリアが庭園を散歩していると、遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「これは……新しい花壇の設計図ですか?」

セシリアが声の方を振り向くと、そこにはアルトゥールが庭師たちと話し込んでいる姿があった。彼の表情は真剣そのもので、まるで執務中のような厳格さを保っていたが、その目にはどこか優しさが宿っているようにも見えた。

彼女は思わず声をかけようとしたが、踏み出す勇気が出ず、物陰に隠れてその様子を見守ることにした。

「セシリア様のために、この庭園をより美しくしたいと考えています。」

アルトゥールの言葉に、セシリアは思わず息を呑んだ。

「私のために……?」

彼の冷たい態度が薄れるような瞬間を目撃し、彼女の胸には小さな希望が芽生えた。

完成した贈り物

数日後、ついに花壇が完成した。アルトゥールはセシリアを誘い、その場所へと案内した。

「アルトゥール様、一体どこへ……?」

彼女は不思議そうに彼を見つめたが、彼は何も言わず、ただ静かに歩き続けた。そして庭園の奥にある新しい花壇の前で立ち止まった。

「ここだ。」

セシリアが目を向けると、そこには彼女が好きな花々が鮮やかに咲き誇る美しい花壇が広がっていた。中央には木陰に囲まれたベンチがあり、そこに座れば、目の前の景色を一望できるようになっている。

「これ……アルトゥール様が?」

彼女は驚きと喜びの入り混じった表情で彼を見上げた。

「お前がこの庭園を愛していることは知っていた。だから、ここを少しでもお前にとって特別な場所にしたかった。」

その言葉に、セシリアの目には涙が浮かんでいた。

「ありがとうございます……本当に、ありがとうございます。」

心の距離

セシリアがベンチに座り、花々を見つめている間、アルトゥールは彼女の隣に立っていた。

「気に入ったか?」

「はい……これほど素敵な場所を作っていただけるなんて、思ってもみませんでした。」

彼女の感謝の言葉に、アルトゥールは少しだけ頬を緩めた。

「これが……私の気持ちの一部だ。」

その言葉を聞いたセシリアは、驚いたように彼を見上げた。

「アルトゥール様の……気持ち?」

「お前が私の未来にいないと考えるのは、間違いだ。」

その一言は、セシリアの心を強く揺さぶった。彼女はずっと、彼が自分をどう思っているのか分からなかった。しかし、今初めて、彼の本心に触れた気がした。

次の課題

その日以降、セシリアとアルトゥールの間には、少しだけ心の距離が縮まったように感じられた。だが、アルトゥールはまだ自分の気持ちを完全には理解していなかった。

「私は、彼女を失いたくないと思っている。それが愛情なのか、それとも……。」

彼は自問自答を繰り返していた。一方のセシリアも、彼の言葉に隠された意味を探ろうとしていた。

「アルトゥール様の未来に私はいる……。でも、それはどういう形で?」

二人の想いは、まだ完全には交差していなかった。だが、それでも彼らは一歩ずつ前へ進んでいた。
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