【完結】悪役令嬢の私、婚約破棄されたはずが隣国の冷酷王太子に溺愛されています

22時完結

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仮初めの婚約者、王子の過保護が止まりません

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   「今日の午後、お茶会があるそうですね」

朝食の席で、いつも通りの優雅な所作で紅茶を口に含みながら、レオニス殿下がそう言った。

「え、ええ。クラナさんにお聞きしました。政務の合間に、王宮の奥方方が開かれるとのことでした」

「行くのか?」

「仮初めとはいえ、王子殿下の婚約者として顔を出した方が良いかと……」

「……そうか。ならば俺も同行しよう」

「えっ?」

紅茶をこぼしそうになった。

「い、いえ、あの、お忙しいのでは……?」

「問題ない。護衛も兼ねている」

「……お、お茶会ですよ? 女性ばかりの、和やかな集いなのでは……?」

「そういう場にこそ、無礼な者は湧く」

「…………」

(この人……やっぱり、仮の婚約者扱いしてない気がする)

「それに、お前が浮いては困る。俺の婚約者として、堂々と紹介しよう」

「そ、それはありがたいのですが……」

レオニス殿下の過保護がすぎる。
けれどその言葉の一つ一つが、私の心に少しずつ沁みていく。

(ほんの少し前まで、あんなにも否定されていた私が……今はこうして、“守られている”)

「わかりました。……ご一緒に参ります」

「うむ。それでいい」

そうして、私の“初お茶会”は、まさかの王子殿下同行という破格の形で幕を開けたのだった。



王宮・東の庭園

王妃や王女、貴族令嬢たちが集まる、王宮の格式高い社交の場。
その中央に、レオニス殿下が姿を現すと、一斉に視線が集まった。

「レ、レオニス殿下……! 本日は珍しくお顔を……」

「殿下が庭園のお茶会においでとは……」

「本日は、俺の婚約者を紹介するために来た。リリエル・ヴァン・クローデルだ」

「っ……!」

皆の視線が、私に注がれる。

中には、明らかに驚きと――疑念の混じった目もあった。

「ご挨拶申し上げます。ラウディス王国より参りましたリリエル・ヴァン・クローデルと申します。未熟者ですが、何卒よろしくお願いいたします」

ぎこちないながらも深く頭を下げると、周囲からさざめきが起きた。

「まぁ……噂の悪役令嬢と聞いていたけれど……本当にお綺麗」

「殿下があの場で引き取られたと聞いていたけれど、まさか本当に連れてこられていたなんて……」

「でも、礼儀も態度も完璧じゃない? あれで悪役令嬢なんて信じられないわ」

そう、囁き声は否定的なものばかりではなかった。

「ほら、言った通りだろう」

隣で小さく笑うレオニス殿下の声に、思わず振り向いた。

「……え?」

「お前が堂々と立っていれば、周囲は勝手に正す。それだけのことだ」

その言葉が嬉しくて、私は思わず微笑んでいた。



お茶会の最中

「リリエル様、こちらのケーキ、お気に召されるかしら?」

「はい、とても美味しいです。ガルディアでは蜂蜜の香りが豊かで素敵ですね」

「まぁ、お上手」

「ご実家は貿易の要と聞きますわ。さぞかし教育も厳しかったでしょう?」

「ええ……小さい頃から、かなり鍛えられました。特に礼儀作法は……」

周囲の令嬢たちと会話を交わすうちに、私は少しずつ場に溶け込んでいった。

皆、最初は警戒していたようだが、話してみれば意外にも打ち解けやすかった。

「ラウディスでは誤解を受けていたそうですけれど、私にはリリエル様が“悪役”には見えませんわ」

「むしろ、気品にあふれていて素敵です。あの断罪劇、あちらの王族の方がどうかしていたのでは?」

そう言ってもらえたことが、どれほど嬉しかったか。

(……ああ、私はここで、もう一度生きていけるかもしれない)



そして夜――

「……殿下」

「何だ?」

「今日は……ありがとうございました」

「ふむ?」

「同行してくださったおかげで、あの場で拒絶されずに済みました」

「当然のことをしただけだ」

「でも、私は“仮初めの婚約者”なのに……」

「仮初めでも、俺が選んだ以上、それは“俺の誇り”だ」

言葉を失った。
それは、誰よりも優しく、強い肯定だった。

「……私は、このご恩にどうお返しすればよいのでしょうか」

「簡単だ。俺の傍に、逃げずにいてくれればそれでいい」

「…………」

それは、“仮”の関係ではないような言葉だった。

そして私はその言葉に、うなずいてしまった。
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