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心配性すぎる公爵様
しおりを挟む結婚から一週間が過ぎた頃、クラリスは軽い風邪をひいてしまった。朝起きると頭が重く、少し熱っぽかった。
「大丈夫です。少し休めば治ります」
エマに心配されながらも、クラリスは朝食を取ろうとした。しかし、食堂に向かう途中で足がふらつき, 壁に手をついてしまった。
「奥様!」
エマが慌てて駆け寄ってくる。その時、廊下の向こうからアルベルトが現れた。
「どうした?」
いつもの無表情な顔が、心配そうに歪んでいる。
「少し体調が悪いだけです。大したことでは」
「大したことではない?」
アルベルトは大股でクラリスに近づくと、その手を額に当てた。
「熱がある。すぐに医者を呼べ」
「そんな、大げさな」
「君が無理をしている間に、私は何をしていたのだろう」
アルベルトの声には、自分を責めるような響きがあった。クラリスは彼の手が震えていることに気づいた。
「本当に、軽い風邪ですから」
「軽い風邪でも、きちんと治療しなければ重篤になることもある」
アルベルトはクラリスの腕を支えながら、部屋まで送ってくれた。
「今日は絶対安静だ。何か必要なものがあれば、エマに頼むように」
「ありがとうございます」
クラリスがベッドに横になると、アルベルトは心配そうに見つめていた。
一時間後、医者が到着した。診察の結果、やはり軽い風邪だということが分かった。
「安静にしていれば、二、三日で治るでしょう」
医者が帰った後、アルベルトは部屋に戻ってきた。手には薬と、温かいスープを持っている。
「医者の薬だ。必ず飲むように」
「ありがとうございます。でも、お仕事は大丈夫ですか?」
「仕事よりも君の体調の方が大切だ」
さらりと言われた言葉に、クラリスは驚いた。
「互いに干渉しないという約束でしたが」
「約束は約束だが、病気の時は別だ」
アルベルトは椅子を持ってきて、ベッドの脇に座った。
「君が回復するまで、私はここにいる」
「そんな、お忙しいでしょうに」
「君が寒くないか心配で眠れなかった」
その言葉を聞いて、クラリスは胸が苦しくなった。
「昨夜、君の部屋の前を何度も通った。様子を見に行こうかと思ったが、迷惑をかけてしまうかもしれないと思い、躊躇していた」
アルベルトは俯きながら話した。
「でも、今思えば、もっと早く気づくべきだった」
「あなたが気づかなければならない理由はありません」
「ある。君は私の妻だ」
真剣な表情で言われ、クラリスは何も言えなくなった。
その日、アルベルトは本当に一日中クラリスの部屋にいた。書類を持ち込んで仕事をしながら、時折クラリスの様子を確認してくれた。
「水分は足りているか?」「スープは温かいか?」「薬は飲んだか?」
まるで心配性の母親のように、細かく気遣ってくれる。
「そんなに心配しなくても」
「心配するなと言われても、無理だ」
アルベルトは率直に答えた。
「君が苦しんでいるのを見ているのは、私にとって耐え難いことだ」
夕方になると、クラリスの熱は下がり始めた。
「良かった。顔色も良くなった」
アルベルトは安堵の表情を浮かべた。
「ありがとうございました。こんなに看病していただいて」
「当然のことだ」
「当然、ですか?」
「君は大切な人だから」
その言葉に、クラリスの心は大きく動いた。
「大切な人?」
「そうだ。君は私の妻であり、大切な人だ」
アルベルトは真っ直ぐにクラリスを見つめて言った。
「形だけの結婚だと思っていましたが」
「最初はそのつもりだった。でも、君と生活を共にするうちに、気持ちが変わった」
「変わった?」
「君のことを、本当の妻として大切に思うようになった」
その夜、クラリスは一人で考えた。アルベルトの優しさは、義務感からではなく、本当の感情から来ているのかもしれない。
そして、自分の心の中にも、何か変化が起きていることを感じていた。
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