【完結】断罪の日、私は“隣国の王子”に拾われた

22時完結

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断罪の日、私は“隣国の王子”に拾われた

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「侯爵令嬢アリア=ルヴィエール! 王太子殿下の婚約者としてふさわしくない振る舞いの数々、今ここに断罪する!」

大広間に響き渡った王太子の声に、会場がどよめいた。

「……え?」

声が震えたのは、私自身だった。

正装に身を包んだ貴族たちが一斉にこちらを見ている。豪奢なシャンデリアが揺れ、足元が崩れていくような感覚。

今日は、王太子殿下・カイル様と私の婚約記念舞踏会のはずだった。

それが、突然の「断罪劇」になるなんて——誰が予想できたというの?

「アリア、おまえは、侯爵令嬢でありながら他の貴族令嬢を見下し、陰湿な嫌がらせを繰り返していたと証言が出ている。しかも、私の気を引くために他人を陥れたそうだな?」

「そ、そんなこと……していません……!」

「おまえのような女と、未来を共にできるはずがない。ここで正式に、婚約を破棄させてもらう!」

声を荒げたカイル様の隣には、可憐な金髪の少女——男爵令嬢リリアーナが立っていた。

潤んだ瞳で私を見上げ、震えるような声で言う。

「……わたくしは、ただ、アリア様と仲良くしたかっただけなのに。怖かったんです……ずっと……」

一斉に向けられる冷たい視線。

「あれが、噂の悪役令嬢よ……」

「裏でそんなことしてたなんて……こわ……」

「前から思ってたのよ。笑ってても、目が冷たかったわよね」

誰か、助けて。私は、そんなことしていないのに——。

だが、誰ひとりとして私の弁明を聞こうとはしなかった。



婚約破棄と同時に、侯爵家の跡取りの地位も剥奪された私は、屋敷を出ることを余儀なくされた。

父も母も、見て見ぬふりだった。
「お前のせいで、家の名誉が地に落ちた」と父は言い放ち、母はただ目を伏せていた。

この国にいても、私は“悪役令嬢”という烙印を押されたままだ。

身を隠すように馬車に乗り、私が向かったのは隣国フェリシア王国。

知り合いも縁もないその地へ逃げるしか、私にはもう道がなかった。



「はあ……」

雪が降り始めた街路で、私はひとりベンチに腰掛け、凍えそうな指先をさすっていた。

昼間、宿を探していたら所持金をスリにすられてしまったのだ。

もう、どうしてこんなに不幸続きなの……?

「こんな寒空の下で、女がひとり……馬鹿か」

低く鋭い声に、私は顔を上げた。

そこに立っていたのは、黒いローブに身を包んだ銀髪の青年だった。

整った顔立ち。冷たい氷のような灰色の瞳。整いすぎていて、どこか現実味がない。

「……え?」

「お前、何者だ。怪我もしているな。スリに遭ったか」

「な、なんでわかるんですか……?」

「歩き方、顔色、右の腰に薄く泥。足元の雪に足跡が重なっていない。つまり、誰かに突き飛ばされた後、引きずられて金を抜かれた」

「…………」

「……俺の城に来い。放っておけん」

「は、はぁぁ!?」

誰? というより、どうしてそんな話に?

「知らない人について行くのはよくないって言われてるんです!」

「だが、お前には行く宛がない。金も、護衛も、味方もいない。違うか?」

「っ……!」

図星だった。

悔しいけど、確かに私は何も持っていない。

「お前のような女が、ここで凍え死ぬのを見過ごせるほど、俺は冷血ではない」

いや、十分冷血に見えるんですけど。

……でも。

でも。

この人の手は、暖かかった。



「王太子様!? この令嬢を城にお連れになると!?」

「騒ぐな。医師を呼べ。入浴の準備も。湯に浸けてやれ。凍傷になる」

「は、はいっ!」

……え?

王太子様って、今、この人……?

「あなた、まさか——」

「フェリシア王国の第一王子、レオンハルト・ヴァレンティア。名前くらいは知っているだろう」

「…………は?」

私の頭の中で、再び世界がぐるぐると回り出した。

今、私、“隣国の冷酷王子”に拾われました?



「もっと食え。体重が落ちすぎている」

「うぅ……もう食べられません……」

「無理にでも食え。次に熱を出したら、王宮の医師が泣く」

私は今、王子の私室で、三度三度の食事に悩まされていた。

レオンハルト様は、見た目の通り寡黙で冷たくて近寄りがたい。けれど、なぜか私にはとてもよくしてくれる。

「私……あなたに、助けていただいた恩返しをしなければ……」

「恩返しなど不要だ」

「で、でも……!」

「ならば、俺のそばにいろ」

「……え?」

「お前を手放すつもりはない」

言葉の意味が、すぐには理解できなかった。

だけど、胸の奥が熱くなる。

この人は、私を“悪役”としてではなく、“アリア”として見てくれているのだろうか。



数日後、レオンハルト様は、フェリシア王宮で正式にこう宣言した。

「このアリア=ルヴィエールを、我が王配候補として迎える」

「なっ……!?」

「反対があるなら、我が剣で黙らせるまで」

隣国の冷酷王子が、全世界に向けて宣言した——

「これは、王命だ」

私は唖然としながらも、その日、確かに思ったのだった。

“悪役令嬢”として追放された私の物語は、今ここから始まったのだと。
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