【完結】断罪の日、私は“隣国の王子”に拾われた

22時完結

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私はただの拾われ令嬢……のはずが、溺愛が過ぎて困ります

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「アリア様、お食事はこちらでございます」

「お体に触れてもよろしいでしょうか?」

「アリア様のお召し物、上質なベルベットにお仕立ていたしました」

「…………」

私は今、王宮の一室——しかも“王太子直属の部屋”で、
日々入れ替わり立ち替わり世話役に囲まれている。

これは夢なのでは……と思ったのは初日だけ。
最近はもはや現実だと受け入れるしかなくなった。

でも。

なにかがおかしい。

おかしすぎる。

私はただ“拾われただけ”の令嬢だったはずなのに。

どうして私は、王妃候補のような扱いを受けているのだろう?



「……また、服か」

「今度のドレスはフェリシアでも屈指の宮廷仕立て屋によるものです。殿下より『アリアに似合うものをすべて用意しろ』とのご命令で」

「“すべて”……って、また10着単位じゃないでしょうね……?」

「12着でございます。あと靴が6足、アクセサリーが——」

「ひぃぃぃっ、贅沢すぎるっ!」

そんな私の悲鳴もむなしく、豪華な品々が次々と運び込まれてくる。
宮廷仕立てのドレスに、きらびやかなジュエリー。
バスソルトや香水までフルセット。

(え、王子様の愛人設定だったりする……?)

疑念が脳裏をよぎったが、すぐに否定した。

レオンハルト様は、私に指一本触れない。

一緒に過ごしていても、どこまでも節度を守ってくれている。
距離は近いのに、誠実すぎるほど誠実。

……だからこそ、私は戸惑っていた。

この甘やかされ方には、**理由があるのでは?**と。



ある日の午後、ついに私は、本人に問い詰める決心をした。

「レオンハルト様。どうして、こんなにもよくしてくださるのですか?」

王宮の庭園——静かなバラ園で、私は小さな声で尋ねた。

風が吹き抜け、赤と白の花が揺れる。
レオンハルト様は、読んでいた書類から顔を上げ、私を見つめた。

「それは……お前が、守られるべき者だからだ」

「私は、もう何も持っていません。ただの、断罪された令嬢です」

「……だからだ。誰も味方がいない者に、手を差し伸べるのが王の責務だ」

「……!」

まっすぐな言葉だった。
けれどその瞳には、どこか痛みが宿っていた。

——まるで、自分を見ているかのように。



それから、私は少しずつレオンハルト様について知るようになった。

彼は冷酷な王子として知られているが、実際には非常に誠実で、政治においても民を第一に考えている。

ただ、その厳しすぎる態度と有無を言わせぬ決断力ゆえに、
「情がない」と誤解されることも多かった。

そんな彼が、私を「守る」と言ってくれた。

私が過去を否定され、居場所を失ったときに——。

「レオンハルト様、少しずつ……元気になってきました」

「そうか。では、明日から外出の準備をする」

「えっ?」

「街へ出るぞ。お前に見せたいものがある」



翌日、私たちは身分を隠し、街へ出かけた。

「この街の人々は、私のような“悪役令嬢”でも受け入れてくれるのでしょうか」

「お前は“悪役”ではない。真実を知らぬ者の言葉など気にするな」

そう言って、レオンハルト様は私の手を取った。

その手は大きくて、温かかった。



街の人々は、にこやかに私たちに声をかけてくれた。

「お嬢さん、初めてかい? この辺はパンが美味しいんだよ」

「おや、旦那さん、美人を連れてるねぇ!」

「だ、旦那さん!?!?!?」

レオンハルト様はその言葉に苦笑して、

「悪くない」

とだけ言った。

……悪くないって何!?



その日、私はとても幸せだった。

けれど——

幸せな日々には、終わりが訪れるものなのかもしれない。

王宮に戻ると、レオンハルト様の側近・クラウスが厳しい顔で言った。

「殿下、アリア様の件で、第一王妃陛下よりお呼びがかかっております」

「……やはり、動いたか」

「な、なんの話ですか?」

「お前を、よく思わぬ者たちもいる。王族に関われば、どんなに身を清めても“過去”を引き合いにされる。覚悟しておけ」

その瞳は、また冷たくなっていた。

「だが、誰がなんと言おうと——俺の選択は変わらん」

「レオンハルト様……!」



その日の夜。

私は寝台で、眠れずにいた。

これまでと違うのは、自分の中に“希望”が生まれていること。

王太子に断罪され、すべてを失った私。

だけど今、レオンハルト様がそばにいてくれる。

私の手を取ってくれた。

——なら、私はもう逃げない。

誰が何と言おうと、私は「アリア=ルヴィエール」として、生きてみせる。

レオンハルト様の隣で。



翌日、第一王妃陛下の御前に立った私は、心を決めていた。

王妃は冷たい眼差しで私を見つめた。

「貴女のような令嬢を、王家の婚約候補として受け入れるわけにはまいりません」

「……そのお気持ち、ごもっともです」

「では、王太子にも伝え——」

「ですが、私は退きません」

「……!」

「私を信じてくれた方が、ここにいるからです。私は、もう誰のことも裏切りたくないのです」

一瞬、静まり返る空気。

そして、扉の奥から現れたのは、レオンハルト様だった。

「アリアに傷ひとつつけるなら、俺が全員を敵に回すまで」

冷酷王子の、静かな怒り。

王妃でさえ、言葉を失っていた。

そして私は確信した。

この人の隣にいる限り、私は絶対に負けない。

——たとえ、“悪役令嬢”と呼ばれ続けても。
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