8 / 8
この手を、ずっと離さない
しおりを挟む
王宮の鐘が、高らかに鳴り響いた朝。
それは、私たち——レオンハルト王子とアリア・フィンレイの、
新たな人生の“はじまり”の日だった。
戴冠式と結婚式が重なる前代未聞の一日。
それを祝福するかのように、王都の空は雲ひとつない晴天だった。
「アリア。準備は、できているか?」
控室に現れたレオンハルト様は、真紅の正装に身を包み、
今までで一番凛々しく、そして優しい笑みを浮かべていた。
「……はい。ずっと、今日を夢見ていました」
私は、王妃の証である純白のドレスを纏っていた。
胸元には、前夜贈られたばかりの瑠璃の指輪。
そして腰には、王家の紋章が縫い込まれた金の刺繍。
それは、過去の痛みや誤解、陰りをすべて乗り越えた——“新しい私”を象徴していた。
⸻
戴冠式は、王城の中央大聖堂で行われた。
長いバージンロードの先に立つのは、王であり、レオンハルト様の父。
「王子レオンハルト・ヴァルトライヒよ、ここに誓うか。国を導く王となり、正義と愛をもって人々を守ることを」
「——はい。誓います」
堂内に響き渡る誓いの言葉。
次に王冠が差し出され、それを戴いた瞬間、
レオンハルト様は、正式に“国の王”となった。
その視線が、真っ直ぐ私を捉える。
「……次は、私の番ですね」
⸻
結婚式は、王都の人々も見守る中で行われた。
民衆に開かれた“祝福の式典”——
それは、ただの政略結婚でも、格式ばった儀式でもなかった。
王と王妃が、“心から愛し合っている”ことを示す、唯一無二の舞台だった。
「アリア・フィンレイ。そなたは、王の伴侶となることを誓うか?」
「はい。どんな時も、愛と敬意をもって共に歩むことを誓います」
「レオンハルト・ヴァルトライヒ。そなたは、この者を生涯愛し抜くと誓うか?」
「誓う。彼女以外、誰も愛さぬと」
その言葉に、私は思わず涙をこぼしてしまった。
(こんな日が、本当に来るなんて——)
⸻
指輪の交換、そして誓いの口づけを交わした瞬間、
場内に溢れる歓声と拍手が、まるで祝福の鐘のように響き渡った。
——私はもう、誰にも奪われない。
——この人と、ずっと共にある。
その実感が、静かに胸に広がっていく。
⸻
披露宴の席。
私は緊張から解放され、ようやくレオンハルト様と肩を並べて座っていた。
「……まだ、夢を見ているみたいです」
「これからは、その夢が“現実”になる。目を覚ましても、隣にはずっと俺がいるから」
「……それ、とても甘い言葉ですね」
「今日だけじゃない。これから毎朝、お前にそう言うよ」
そうささやかれ、私は思わず頬を赤らめる。
「……まったく、冷酷な王子という噂はどこへやら」
「冷酷なのは、他人に対してだけだ。お前には……甘すぎるくらいでちょうどいい」
周囲の視線など気にせず、レオンハルト様は私の指に優しく触れた。
(私は、こんなにも愛されている)
その事実が、胸の奥をじんわりと温めてくれる。
⸻
夜になり、王城のバルコニーから夜空を見上げると、
満天の星が、私たちを見守るように瞬いていた。
「アリア。願いごとはあるか?」
「……いいえ。もう、すべて叶ったから」
「なら、次は俺が願う番だな。——この幸せが、永遠に続きますように」
「……それ、叶えてくれるんですか?」
「もちろん。何があっても、俺が守る。お前が笑っていられる限り、俺は……王として、夫として、生きていける」
彼の言葉に、私は微笑みながら手を伸ばす。
その手は、大きくて、温かくて。
まるで私のすべてを包み込んでくれるようだった。
「ずっと、隣にいてくださいね」
「もちろん。これから先、千の春が巡っても、ずっと——」
「レオンハルト様」
「……うん?」
「愛しています。心の底から、あなたを」
彼はふわりと笑い、そっと私の額に唇を落とした。
「俺もだ。アリア。愛してる」
夜風が、静かに私たちの間を通り抜ける。
けれど、心はまったく寒くない。
だって、もう私は——
この人と、生きていくと決めたのだから。
それは、私たち——レオンハルト王子とアリア・フィンレイの、
新たな人生の“はじまり”の日だった。
戴冠式と結婚式が重なる前代未聞の一日。
それを祝福するかのように、王都の空は雲ひとつない晴天だった。
「アリア。準備は、できているか?」
控室に現れたレオンハルト様は、真紅の正装に身を包み、
今までで一番凛々しく、そして優しい笑みを浮かべていた。
「……はい。ずっと、今日を夢見ていました」
私は、王妃の証である純白のドレスを纏っていた。
胸元には、前夜贈られたばかりの瑠璃の指輪。
そして腰には、王家の紋章が縫い込まれた金の刺繍。
それは、過去の痛みや誤解、陰りをすべて乗り越えた——“新しい私”を象徴していた。
⸻
戴冠式は、王城の中央大聖堂で行われた。
長いバージンロードの先に立つのは、王であり、レオンハルト様の父。
「王子レオンハルト・ヴァルトライヒよ、ここに誓うか。国を導く王となり、正義と愛をもって人々を守ることを」
「——はい。誓います」
堂内に響き渡る誓いの言葉。
次に王冠が差し出され、それを戴いた瞬間、
レオンハルト様は、正式に“国の王”となった。
その視線が、真っ直ぐ私を捉える。
「……次は、私の番ですね」
⸻
結婚式は、王都の人々も見守る中で行われた。
民衆に開かれた“祝福の式典”——
それは、ただの政略結婚でも、格式ばった儀式でもなかった。
王と王妃が、“心から愛し合っている”ことを示す、唯一無二の舞台だった。
「アリア・フィンレイ。そなたは、王の伴侶となることを誓うか?」
「はい。どんな時も、愛と敬意をもって共に歩むことを誓います」
「レオンハルト・ヴァルトライヒ。そなたは、この者を生涯愛し抜くと誓うか?」
「誓う。彼女以外、誰も愛さぬと」
その言葉に、私は思わず涙をこぼしてしまった。
(こんな日が、本当に来るなんて——)
⸻
指輪の交換、そして誓いの口づけを交わした瞬間、
場内に溢れる歓声と拍手が、まるで祝福の鐘のように響き渡った。
——私はもう、誰にも奪われない。
——この人と、ずっと共にある。
その実感が、静かに胸に広がっていく。
⸻
披露宴の席。
私は緊張から解放され、ようやくレオンハルト様と肩を並べて座っていた。
「……まだ、夢を見ているみたいです」
「これからは、その夢が“現実”になる。目を覚ましても、隣にはずっと俺がいるから」
「……それ、とても甘い言葉ですね」
「今日だけじゃない。これから毎朝、お前にそう言うよ」
そうささやかれ、私は思わず頬を赤らめる。
「……まったく、冷酷な王子という噂はどこへやら」
「冷酷なのは、他人に対してだけだ。お前には……甘すぎるくらいでちょうどいい」
周囲の視線など気にせず、レオンハルト様は私の指に優しく触れた。
(私は、こんなにも愛されている)
その事実が、胸の奥をじんわりと温めてくれる。
⸻
夜になり、王城のバルコニーから夜空を見上げると、
満天の星が、私たちを見守るように瞬いていた。
「アリア。願いごとはあるか?」
「……いいえ。もう、すべて叶ったから」
「なら、次は俺が願う番だな。——この幸せが、永遠に続きますように」
「……それ、叶えてくれるんですか?」
「もちろん。何があっても、俺が守る。お前が笑っていられる限り、俺は……王として、夫として、生きていける」
彼の言葉に、私は微笑みながら手を伸ばす。
その手は、大きくて、温かくて。
まるで私のすべてを包み込んでくれるようだった。
「ずっと、隣にいてくださいね」
「もちろん。これから先、千の春が巡っても、ずっと——」
「レオンハルト様」
「……うん?」
「愛しています。心の底から、あなたを」
彼はふわりと笑い、そっと私の額に唇を落とした。
「俺もだ。アリア。愛してる」
夜風が、静かに私たちの間を通り抜ける。
けれど、心はまったく寒くない。
だって、もう私は——
この人と、生きていくと決めたのだから。
39
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~
季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」
建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。
しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった!
(激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!)
理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造!
隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。
辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。
さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。
「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」
冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!?
現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる!
爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
十年間虐げられたお針子令嬢、冷徹侯爵に狂おしいほど愛される。
er
恋愛
十年前に両親を亡くしたセレスティーナは、後見人の叔父に財産を奪われ、物置部屋で使用人同然の扱いを受けていた。義妹ミレイユのために毎日ドレスを縫わされる日々——でも彼女には『星霜の記憶』という、物の過去と未来を視る特別な力があった。隠されていた舞踏会の招待状を見つけて決死の潜入を果たすと、冷徹で美しいヴィルフォール侯爵と運命の再会! 義妹のドレスが破れて大恥、叔父も悪事を暴かれて追放されるはめに。失われた伝説の刺繍技術を復活させたセレスティーナは宮廷筆頭職人に抜擢され、「ずっと君を探していた」と侯爵に溺愛される——
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる